鶴ヶ城を後にして呑み屋街に移動してきました。
順調に北上している桜前線を追って、今季はこちらも粛々と北上として行く必要があり、特に前半でどれだけ駒を進められるかが一つの鍵になる状況です。その状況において悩ましかったのが、二泊目にどこを選ぶかという問題でした。会津、米沢、仙台と北上するのが理想的とは分かっていても、二日目が日曜に重なり、米沢では呑み屋の選択肢がありません。その点会津なら、「麦とろ」が連休中は休みなしで開いています。休肝日をとって先に進むか、一日遅れるのを承知で「麦とろ」に行くかという選択において、ほぼ何の迷いもなく後者を選んだ次第です。
普段は「籠太」の後で軽く一杯ひっかける場所という位置づけに甘んじているこの店ですが、花見の時期はむしろこちらが主役になると前回申しました。というのも、店主が繰り出す品々に、会津の春の季節感に満ちているのです。会津に二泊できる状況ならば、そのうち一泊をこの店に注ぎ込むという選択には迷いがありませんでした。
何度も通った店だけに、店主もこちらも慣れたもので、カウンターにつくやいなや、頼みもしないうちに会津娘が出てきました。それを受けるお通しは菜の花のおひたしで、瑞々しさがそこらのものとは違います。これに身欠き鰊を続け、次は何にするかというところ、こちらの魂胆はお見通しとばかりに、今度は店主がコシアブラを揚げ出しました。今朝西会津で採ってきたというコシアブラの、さりげない苦味と軽い食感は、まさに会津の春の真骨頂。自分はこれを一年間待ちわびていました。
菜の花も身欠き鰊も天ぷらも、一人には十分すぎるほど多いのがこの店の特徴です。胡瓜の浅漬けをいただいたところであらかた腹が満ち、今回もいただこうと思っていた馬刺しの出番は結局ありませんでした。最後は店名の由来でもあるとろろご飯と味噌汁で締めくくります。
今回驚いたのは、カウンターに何と七人組の先客がいたことです。小上がりにも四人組の先客がおり、日曜晩の静まり返った呑み屋街で、この店内だけが別世界のような賑わいでした。普段は遅い時間に訪ねるからでもあるのか、他にお客がいないという場面も多く、これで商売が成り立つのかと勝手に心配していただけに、繁盛ぶりを確かめられたのはよいことでした。
店を続けて四十年という年配の店主と、さらに年配の婆さんが細々と営む店で、跡取りがいるという話も聞かないだけに、いつまでここに通えるのかと考えてしまうことはあります。しかし、この店は「籠太」と並んで愛用してきた、会津の中でもとりわけ思い入れの深い店です。来年もこの店でコシアブラの天ぷらがいただけるのを楽しみにしています。
★麦とろ
会津若松市栄町4-9
0242-24-9886
1100AM-1400PM/1700PM-100AM(日曜定休)
順調に北上している桜前線を追って、今季はこちらも粛々と北上として行く必要があり、特に前半でどれだけ駒を進められるかが一つの鍵になる状況です。その状況において悩ましかったのが、二泊目にどこを選ぶかという問題でした。会津、米沢、仙台と北上するのが理想的とは分かっていても、二日目が日曜に重なり、米沢では呑み屋の選択肢がありません。その点会津なら、「麦とろ」が連休中は休みなしで開いています。休肝日をとって先に進むか、一日遅れるのを承知で「麦とろ」に行くかという選択において、ほぼ何の迷いもなく後者を選んだ次第です。
普段は「籠太」の後で軽く一杯ひっかける場所という位置づけに甘んじているこの店ですが、花見の時期はむしろこちらが主役になると前回申しました。というのも、店主が繰り出す品々に、会津の春の季節感に満ちているのです。会津に二泊できる状況ならば、そのうち一泊をこの店に注ぎ込むという選択には迷いがありませんでした。
何度も通った店だけに、店主もこちらも慣れたもので、カウンターにつくやいなや、頼みもしないうちに会津娘が出てきました。それを受けるお通しは菜の花のおひたしで、瑞々しさがそこらのものとは違います。これに身欠き鰊を続け、次は何にするかというところ、こちらの魂胆はお見通しとばかりに、今度は店主がコシアブラを揚げ出しました。今朝西会津で採ってきたというコシアブラの、さりげない苦味と軽い食感は、まさに会津の春の真骨頂。自分はこれを一年間待ちわびていました。
菜の花も身欠き鰊も天ぷらも、一人には十分すぎるほど多いのがこの店の特徴です。胡瓜の浅漬けをいただいたところであらかた腹が満ち、今回もいただこうと思っていた馬刺しの出番は結局ありませんでした。最後は店名の由来でもあるとろろご飯と味噌汁で締めくくります。
今回驚いたのは、カウンターに何と七人組の先客がいたことです。小上がりにも四人組の先客がおり、日曜晩の静まり返った呑み屋街で、この店内だけが別世界のような賑わいでした。普段は遅い時間に訪ねるからでもあるのか、他にお客がいないという場面も多く、これで商売が成り立つのかと勝手に心配していただけに、繁盛ぶりを確かめられたのはよいことでした。
店を続けて四十年という年配の店主と、さらに年配の婆さんが細々と営む店で、跡取りがいるという話も聞かないだけに、いつまでここに通えるのかと考えてしまうことはあります。しかし、この店は「籠太」と並んで愛用してきた、会津の中でもとりわけ思い入れの深い店です。来年もこの店でコシアブラの天ぷらがいただけるのを楽しみにしています。
★麦とろ
会津若松市栄町4-9
0242-24-9886
1100AM-1400PM/1700PM-100AM(日曜定休)