森のテラス・番人日記

オープンガーデン

2009年01月27日 22時54分47秒 | 森のテラス/東京
つい先日、沖縄・宮古島に出張してきたオーナーが
「お土産に」と 持ち帰ってきたのは

「砂」ひと袋

でした。



「ひと袋」 と言っても、
スーパーによくある(魚とか肉とか豆腐とかナマモノを分けて入れる)小さなビニール袋
じゃなくて、
よく お米が入れられているような デカくて厚めのビニールのやつに、
ずっしりと、です。

それをおもむろに
テラスに どすん、と。

要するに、5~10キロくらい、です。これを、
多分(というか、まちがいなく)、小脇に抱えて帰って来たわけですよ、オーナーは。

大胆オーナーです。大胆不敵オーナーです。



それは、この前の日曜のことでした。

日曜にしては珍しく:ご予約のお客様も(昼すぎまでは)無いという、
いつもよりのんびりした日曜の、朝のこと。

焚き火の もくもくと焚かれるテラスにて、



当日の森番:“キキのキちゃん”(通称)が、
その砂をザルでふるう作業をして(させられて?)居りました。



焚き火の立ち上る煙は、人に寄って来ます。
そして、逃げても逐(お)って来るのです。
昔の人はきっと
「火の精霊に好かれてしまった」とか、考えたんでしょうね。


(↑こんなふうに。)

科学的に言えば、上昇気流、的なことらしいです。

だから、
煙は 逃げても逐って来る。

キキのキちゃんも、逃げては逐われ、
煙にまみれ、煤にもまみれ、



大変そうでした。
それをあははと笑って写真に撮ったりしていたのが私でした。
なんでそんなにのんびりしてたかというと、その日曜は、お休みの日だったから。





南の島の砂は、
サンゴの骨です。



ベージュよりも黄味がかった 砂つぶ。その正体は、

死んで、
白化して、
潮に揉まれて、ちいさく砕かれて、
やがて、
島と海との「境目」に打ち上げられ、
縷々と打ち寄せられた、サンゴの死骸。

その話を聴いた時の、
「なんだかわからないけどズキンと胸に感じた衝撃」と、
「なんだかわからないけどとても腑に落ちる気持ち」は、今でも覚えています。

生命力にあふれた美しい、美しい風景の裏には、
おびただしい死の積み重ねがある。

生は 死で成り立っている。

そのことに ハッとしたのではないかなと、想います。


袋の中に 鼻を近づければ、

南の海の
生き生きとした潮をたっぷり吸い込んだ
生温かい、
生臭い、
生々しい香りが、

むわっと、
そのまんま、そこにありました。

死骸から立ち上る、生々しい生の香り。



時々顔を出す、桃色を帯びた貝殻や、
まだ大きめのサンゴの骨たちは、
選り分けられて、洗い出されました。



洗われた骨たちは
日曜の 冬のまぶしい日ざしに晒されて

真っ白く



光りを滲ませていました。

その光の白の 白の強さのぶん
落ちる影の黒の 黒さが
深く重く見え、

そしたら

光と影のコントラストの強くて濃い
「沖縄」のあの空気感が
身体の内側に一瞬 立ちのぼり、

一瞬
意識が遠くに 飛びかけました。



脳より身体が、瞬間的に何かを憶い出す時の
何かが圧倒的な力で身体の裏側を突き上げるような、ぞわあっとする、あの感覚。

沖縄に行った時のあの風景、、とか、あのエピソード、、とかじゃなく、
「沖縄」に居た時の時間まるごとぜんぶ、そのものを、
それもいっぺんに、身体が憶い出す感じが、しました。



一度でも行かれたことのある方はきっとお解りになるでしょうが
「沖縄」という場所は、
自分にとって(そして多分、たくさんの人にとっても)
ひとかたならぬ、重たい、大事な場所です。

つと 想いを馳せるだけで
妙に切なくさせられる、
なんでだかとっても愛おしい、特別な場所。

生まれ故郷でもないのに
「帰りたいなあ。」と想ってしまう、不思議な場所。

秋田の山奥(=「秋田森テラ」)に居るときは、しょっちゅう想ってました。
「帰りたいなあ。」と。故郷でもないのに!


遠いからこそ、想うのでしょう。




そんな
ノスタルジックに勝手に想いを馳せたりしている私は さておいて:

砂ふるいに精を出す 働き者の森番:キキのキちゃん。



その日の番人日誌には
「うでがパンパンになりました;」
と、書き残してありました。お疲れ様でございました。

* * *

そんな のどかな 日曜の朝の風景。

たまに



「お焚き上げの炎が 高らかに燃えすぎちゃった」の図もはさみつつ

とてものどかな、日曜の朝の風景。



でした。



そんな風景をしばらくのんびり眺めてから、貴重なお休みの日なので、お出かけした私。

すぐそばの
小学校と 墓地の境目の細い道を 歩いていたら



水色の空に
白木蓮のつぼむ梢に
赤い凧が、ひっかかっていました。


ただそれだけの風景だけど

どういうわけだか

意識がまた どこかに飛びそうになった。



地下室、大公開

2009年01月22日 23時14分53秒 | 森のテラス/東京
入ってみると、
階層がなにやら入り組んでいて、
実際のところ、2階建てなんだか3階建てなんだか、
よくわからない。

と、
大変好評を博して居ります、ここ:
仙川・森のテラス。

この不思議な構造は、
「国分寺崖線(がいせん)」という斜面地上に立地しているためです。
豆知識。



そんな、
ただでさえ何階建てだかわからないこのカラクリ屋敷の中でも おそらく
一番低いエリア、

「地下室」。

元々は ただの暗黒物置でした。
が、
それが全面破壊&徹底自力改装されまして、

故・野沢清先生の「園学(そのがく)ギャラリー」として生まれ変わります。

ちなみに

これが破壊時の模様。この二人が誰かは、無意味に秘密にしときます。08年1月22日。(一年も前のことですね。)


お焚き上げの模様。灰燼に帰す。



さて、
野沢清先生とは、



造園家であり、
東京農大造園学科の先生であり、
ここ「森のテラス」のオーナー:山田の先輩でもあります。
(上の写真は昨年2月の、野沢先生を偲ぶ会の時のものです。)


野沢先生の著『園学のすすめ』。
森テラにてお買い求めになれます。



「地下室」の工事も、ほとんど終わり、
野沢先生の蔵書の分類作業&リスト作りも完了し、
完成、間近。



そんな今日は、
野沢先生の関係者の皆様が、様子を見にいらっしゃいました。
そして、「園学ギャラリー」オープン実現に向けて、色んな打合せ。


ギャラリーのオープンは、今年の8月と決まりました。



それではその、
「地下ギャラリー」の模様を ご覧頂きましょう。



おおまかな基礎プラン(イメージ)と「破壊」は、byオーナーです。

実施設計&施工、現場監督は、by若旦那です。
(大工じゃないのに、なぜここまで出来るのでしょう。)

作業補佐は、所員番人:A氏。
仕上げのヤスリ磨きなんかは、ほとんど全部、彼によるものです。

床から柱から梁から天井から、何から何まで



ヤスってました。
外より寒い絶望的な極寒&ダスト環境の中、毎日毎日。



ニスとか塗らない、「そのまんま仕上げ」です。
お越しの際にはどうぞ、そのつるつる感を、触って確かめてみて下さい。
そして、
A氏を見かけたら、「でかした。」とか、ねぎらってやって下さい。



右手はマッハ。
左手は何かを指差した形のまま、かじかんで硬直しています。



さて、
一歩 中へ。



雰囲気が、ありますでしょう。。。


先日、ここを覗いたお客さまがぽろりとこぼした一言:

「独房みたい・・・」


。。。言い得て妙。

この通り↓



床下の通気穴がまだ ポッカリ 空いたまんまなので、
ヒンヤリ(というか極寒)だし、
薄暗いし、
せまい地下だし。

まさしく、「独房」です。


でも、



中まで入ってみると、
案外 落ち着く空間なのです。

この奥の壁一面が、「本棚」になります。
本が色々並ぶと、ずいぶん印象も変わるでしょうね。



蔵書の保管してある室。一見三階と思しき二階にあります。
こここそ、
つい先日まで私が一人寂しく篭って文献リスト作り&整理に打ち込んでいた部屋。
ここも凄く寒いです。だって無暖房。
心なし暗いのは、夜と照明のせいです。

結局、
1220冊ありました。(重複を含めると、プラス・もうちょい。)
ギャラリーに全部は無理なので、常設モノや、定期的な企画展に合わせた企画モノなどが、ここからセレクトされます。



さて、地下に戻って:

細部をご覧下さい。



木部は、前述の通り、ヤスリがけでつるつる仕上げ。

白い壁の仕上げ塗りは、
「珪藻土」です。

その下は、
基礎コンクリートそのままの、荒々しい剥き出しコンクリート。

床は、
薄赤茶けたレンガ色の石っぽい石膏タイルが敷き詰められています。
by若旦那。


何から何まで、
素材感、満点です。そして、
余計な要素が 全く無い。

何となく落ち着くのは、そのせいかもしれません。






机と椅子は、アンティークものです。イギリス製ですって。
詳しい事はわかりませんが、100年は経ってるとか。
インテリアコーディネーターでもあるone of 森番sのナガイさんが あつらえてくれました。

 (ナガイさんのブログはこちら→LOTUS BLUE DIARY)
 (*今、すぐ近くのギャラリーカフェ「niwa-coya」さんで、展示をやっていますよ。森テラと馴染みのアトリエ・キキも!)



奥から振り返ると



こんな感じです。
階段下の物置だった名残がうかがえますね。



小粋な飾り棚には



小粋に花を。

ちなみに、白梅です。
梅が咲けば、春が一気に近しく感じられます。
だから、私は梅が大好きです。香りの上品さったら、ない。


辛い長い忍耐の冬も、もう少しの辛抱ですね。





おまけ。
先日訪れた超近くの「神代植物園」で出逢った
梅の早咲き。




今回は、盛り沢山でお届けしました。


音に気づくと

2009年01月21日 21時07分19秒 | 森のテラス/東京
寒い日が続いて居りますが、皆様如何お過ごしでしょうか。




本日の森テラでは、レコーディングが行われておりました。
ピアノと、ヴァイオリンと、ボンゴのトリオ。
奄美(か沖縄)の民謡の唄いも聴こえます。

この音楽家さんたちには、以前こちらでコンサートを催された時に、
森番としてお立ち会いしておりました。
確か、昨年の三月下旬だったはずです。

なんで覚えているかと云うと、
私:番人長nの「秋田森テラ写真展」の最中だったからです。
秋田森テラのプレオープンイベントとして、
一年ほど常駐している間に撮りだめた秋田の写真たちを、
全部、
仙川の森テラに 張り巡らし、バラまき散らしたのでした。ここぞとばかりに。

昨年の三月。。。
今と全然、状況が違う。。。


思い起こせば、
もはやはるか遠く、懐かしすぎて我が事なのかもよく解らない、
変な気持ちがします。



それはさておきまして。
本日の自分は、外仕事。
静かに、努めましょう。

せっかくだから、小鳥のさえずりとか、そんな素敵な音たちに、紛れ込んで欲しい。

努めて静かに、静かに。



努めて静かに構えていたら
自然と、耳を澄ませることになり
自然と、色んな「音」に、気づくことになりました。

小鳥は、今日は少ないな、とか。風はあんまり無いな、とか。
「無料で廃品回収致します」の車は、どうやらここら界隈を本日のターゲットにしたのだな、とか。

そして、

  そうか、
  今日とか
  ここ最近は
  ここに居ると
  こんな音が聴こえるのか

と、いうことにも、気づきました。


普段から同じ場所に居るうちに
気づかないうちに
気づけなくなってしまっている
いろんな「音」がある

ということに、
今日、気づきました。





近くで、ずうううっっと、

ずうううっっっと、

ずうううううっっと、

チェーンソーの、キリキリと硬い音が 響いていました。



すぐそばの森の樹が、伐られているのでした。




硬質な音がずっと延々と響いていて、
それが、レコーディングの邪魔になってしまっているに違いないから
こちらとしても残念だし
演奏する方も、残念だろうな

という懸念もあり、


「樹が伐られている」

その事実に対する感傷的な痛みも、おそらく、あって。

なんだか妙に
安まらない心地がしていたのでした。



「この音が止んで欲しい。」
と、

今日は ずっと、思っていたのでした。



御目出度う御座居坐す

2009年01月12日 14時20分03秒 | 森のテラス/東京
あけましておめでとうございます。



森のテラス宛て、そして私番人n宛てにも
年賀状下さった皆様、、、有り難うございます。
お返事滞っておりまして、申し訳ありません。



今朝は、

ことさら寒かった。

庭の水盆が氷結しておりました。



お昼近くになって、ようやっと、溶け出したところです。


冬の寒さが、いよいよ厳しくなって来ました。

東京は、ここのところ、ほとんど 晴れっぱなし。

おかげで日中はほかほか暖かいのですが
やはり、夜は。。。

でも、

「こんなもの、秋田に比べれば!」

この“殺し文句”で、ついつい「さむーー」とこぼしてしまいそうな自分を
なんとか奮い立たせている そんな毎日です。

実際問題、

雪の秋田に比べれば、こんなもの!
なのです。

秋田の雪に日々耐え忍んでいる皆様、、ご苦労なことでございます。



さて。
本年も明けて早速、お客さまに賑々しくご利用頂いております。
やっぱり新年会が多いですね。
初めてのご見学希望の方も、けっこういらっしゃいます。
見学は自由(無料)ですので、お気軽にお越し下さい。
(ただし、お客さま主催イベント開催中は、お客さまの都合により、室内を十全に見学できない場合も想定されますので、
事前の見学予約または事前のご一報頂けると、助かります。)

また
お忘れ物、お無くし物も ちょくちょくございます。
これは この季節に限った事ではありませんで、通年、ちょくちょく、ございます。
秋田の森のテラスでも、そうでした。
秋田の方だと、一旦帰っちゃうともう、ほとんど絶望的に取りに行けない。という点で、まったくもって、
大変な事態です。


森に来ると なんとなく 気が緩んでしまうのでしょうか。


帰り際はどうぞ、お気をつけ下さいませ。


というわけで:

<業務連絡>です。

1月10日(土)のイベントで、
外のテラスにて 「メガネ」を紛失なさったお客さまがいらっしゃいます。
縁なしの細身、ツルは茶色 だそうです。

引き揚げの片付けの際に、どなたかの荷物に紛れ込んでしまった可能性もございます。
お心当たりのある方は どうぞ、こちらまでご一報下さい。



<業務連絡 その2>
御蔭様で、1月中の土日はすべて埋まって居ります。

室内ご利用のご予約は、
ご希望日の「3ヶ月前」から お受けして居ります。

(例えば:1月12日今日現在ですと、4月12日までの予約が可能、ということです。)

やはり 週末は人気ですね。

2月の土日もじわじわ埋まって参りました。

日の迫ったご利用のご検討は、どうぞお早めに。
料金設定などにつきましては、ご遠慮なくお問い合せ下さい。

ご予約の際は
「希望日時・利用人数・催しの内容(どんなことをやるのか)」をお伝え頂けると
助かります。



<業務連絡 その3>

明日=13日(火曜)は 平日ですが、
お客さま主催のイベント

「朗読ライブ 赤毛のアン」

が 催されますよ。

「森のテラスに一度行ってみたいんだけど、きっかけが、、、」
という方。ご都合が宜しければ、如何でしょうか?

「明日、超ひま。どうしよう。」
という方も、是非。


以下、詳細です。

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「朗読ライブ  赤毛のアン」

日程  1月13日(火) 12:30オープン/13:00スタート

出演  ギター:向井友宏
    歌  :湖上芽映
    朗読 :上村美弥子

料金  1000円

場所  森のテラス(仙川)

注意  ・オープンガーデンなので、暖かい服装でお越し下さい。
    ・お茶とお菓子を用意していますので出来ましたらマイカップ持参でお越し下さいませ。


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とのことですよ。(マイカップが無くても、こちらから湯呑み等お貸し出来ますのでご安心下さい。)




それでは:
2009年。本年も、
何卒宜しくお願い致します。




3時の休憩に、



陽だまりのご褒美。