球形ダイスの目

90%の空想と10%の事実

信頼性設計の実態(マジメ話)

2011-08-14 | マジメな話

本日22:00~23:30までNHK教育にて"アメリカから見た福島原発事故"なる番組がやっていた。
非常に濃密で見所ある番組だったのだが、番組が示した現状は
現在技術者の端くれである自分に深い失望感を感じさせるものでもあった。

逐一分かりやすく書く技術はないため、今回の事故で自分が目をつけている
"設計上の不備"と"責任逃れの構図"の視点から書いてみたい。

[まとめ(設計要因の観点)]
問題1 炉自体のフェールセーフ不備
 福島第一で使用された原子炉、格納容器は元は米国GE社が設計したマーク1という型のもので、
 コストダウンのため格納容器が小さすぎる問題があった。
 そのため実用のリスクをきちんと検討する必要性についてGE設計担当より提言はあったが、
 (時既に遅く)聞き入れられず。日本での採用にあたってもこの懸念は闇に葬られた。
問題2 非常用システムの不備
 国内メーカの東芝、日立はノウハウを学習しながらGEの技術を継承(まねっこ)し炉を製造する。
 しかし、リスク分散のための非常電源が敷地内の殆ど同じ位置、階層に配置され
 共通の要因で共倒れしてしまうものであった。

[まとめ(責任逃れの構図)]
米国側…炉に設計上のリスクがあったのは間違いない。
    しかし非常用電源を一つの自然災害で全滅するような配置にしたのは当方の責任ではない。
米国側2…殆ど確率が0とも言える事態は想定しなくても良い
国内メーカ…担当の縦割り構造が進んでおり、他部門のことには口出しできない。
電力会社側(偉)…(設計ミスは)聞いておらず、メーカや電力会社担当が気付かないのはおかしい。

[これらから考えられること]
 上記(なんだかんだで日本で採用している事実)より米国は責任を取らない。
 問題2は間違いなく担当者レベルでは分かっていたことのはずだが、
 例えば(津波対策として)ディーゼル電源を高台に配置するような措置はコスト上昇等の
 何らかの理由で経営上不利なため握りつぶされたプロセスを辿っているはずだ。
  
 設計上に欠陥があるという指摘が握りつぶされ、非常時に問題があるという指摘が握りつぶされる現状。
 技術者の蔑ろにされっぷりは酷い。この体質が続く限り信頼性設計なんて言葉は夢のまた夢であり、
 リスクが指摘されるたびに"欠陥製品を使用しても問題がない理由"を捏造することを上司に命ぜられた
 一担当が捏造の幇助をすることになり、あまつさえ問題の責任まで取らされるはずだ。

 一方で、社益を考えると非現実的な提言を受け入れるわけにいかず
 "問題がある、ではなくて現行の設計を変えず今のまま問題を解決する方法を提示しろ"
 という行動規範で動いていた営業立場の人がいるはずで、その人はその人で
 設計から出たスケジュール遅延の種を握りつぶしオンスケジュールをキープすることに必死だったと思う。

 会社の構造がこんなもの(利益追求が絶対のミッション)だから、
 この手の不祥事はこれからも同じ理由で起こり続ける。

 本来はもっと時間と費用をかけてこれらのリスクにも真剣に取り組める土壌があればよいが
 納期は厳しく、筐体(?)からの再設計などという莫大なコストが許されるはずがない。
 また、(一担当的には訳の分からない)役員報酬みたいなものもあるため無駄に費用も高くなっている。
 今の僕にはここくらいしかテコ入れできる場所がないように思う。
 
 ものづくりが崩壊したら日本は終わりです。頑張らないと。
コメント
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