荷(はちす)・菱(ひし)、多(さは)に生(お)ふ。
(肥前国風土記~日本古典文学大系2)
豊前(とよのみちのくち)の国の白水郎(あま)の歌一首
豊国の企救の池なる菱の末を摘むとや妹がみ袖濡れけむ
(とよくにの きくのいけなる ひしのうれを つむとやいもが みそでぬれけむ)
(万葉集~伊藤博「萬葉集釋注」集英社文庫ヘリテージシリーズ)
御前の池に網下ろし、鵜下ろして、鯉、鮒取らせ、よき菱、大きなる水蕗取り出でさせ、(略)
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)
あるじのおとど、白き綾の御衣脱ぎて、侍従に賜ふとて、
深き池の底に生ひつる菱摘むと今日来る人の衣にぞする
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)
すすしとや-うきぬのいけに-そてぬれて-ひしとりすさひ-くらすころかな
(正治初度百首_俊成~日文研HPより)
ふなはたを-たたくもさひし-よひのまに-ひしとるふねや-えにかへるらむ
(夫木和歌抄_為相~日文研HPより)
(たいしらす 源俊頼)
あさりせし水のみさひにとちられてひしの浮はに蛙なくなり
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
いけのうへの-ひしのうきはも-わかぬまて-ひとつにしける-にはのよもきふ
みさひえの-ひしのうきはに-かくろへて-かはつなくなり-ゆふたちのそら
(秋篠月清集~日文研HPより)
したみつの-あささはぬまは-なのみして-ひしのはしつむ-あめそかかれる
(為尹千首~日文研HPより)
みしまえの-ひしのうきはに-ゐるたまを-みかくかなつの-つきもさやけき
(後鳥羽院御集~日文研HPより)
夏沼菱
夏ふかき沼水あつく照す日にみくり菱の葉色そつれなき
(草根集~日文研HPより)
あすへては-こころほそみの-いけにおふる-ひしのしたねの-なかれこそすれ
(古今和歌六帖~日文研HPより)
みくさゐる-いりえのひしの-つるたえす-このよをふかく-おもふはかなさ 家良
いかかして-いけのひしつる-うきことは-はしめもはても-おもひわくへき 為家
いかにせむ-ひとしれぬまの-みこもりに-ひしのしたねの-たえぬなけきを 知家
(新撰和歌六帖~日文研HPより)
七日、市腋をたちて津島のわたりといふ處、舟にて下れば、蘆の若葉、青みわたりて、つながぬ駒も立ちはなれず。菱の浮葉に浪はかくれども、つれなき蛙はさわぐけもなし。
(海道記~バージニア大学HPより)
東平春溜通。 幽明録曰。春氷とけて後菱始て生出る也。昔東平郡のうちに氷の上にひしとる女あり。身にはちすの葉をきたり。呂求是を見て。人にあらす鬼の類也といへり。女曰。子不聞荷衣■茅。来て忽に不見。化して為獺而去。
くみてしる人も有けりひしとりし妹かすかたの池の心を
(百詠和歌~続群書類従15上)
潭花発鏡中。 ふちの色鏡に似たり。裏にひしの花を移す事あり。此故にひしの花鏡中に開くと云り。
ひしうつる鏡やみしと人とはゝうきぬの池のかけをこたへん
(百詠和歌~続群書類従15上)