凡(すべ)て、諸(もろもろ)の山野(やまの)に在るところの草木は、(略)、五味子(さねかづら)、(略)。
(出雲国風土記~「日本古典文学大系2」)
佐那犖の根を舂き、其の汁の滑を取りて、其の焙の中の簀橋に塗り、踏みて仆るべく設けて、(略)
(古事記-応神天皇~丸山林平「定本古事記」)
内大臣藤原卿、鏡王女に報(こた)へ贈る歌一首
玉櫛笥みもろの山のさな葛さ寝ずはつひに有りかつましじ
(たまくしげ みもろのやまの さなかづら さねずはつひに ありかつましじ)
〈或本の歌には「玉櫛笥三室外山の」といふ〉
(万葉集~伊藤博「萬葉集釋注」集英社文庫ヘリテージシリーズ)
百首歌奉し時 権中納言公雄
余所にのみ/人を見山の/さねかつら/さねすはいける/かひやなからん
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
よそにのみみ山か裾のさねかすらさねすて過んことそ苦しき
(久安六年御百首-実清~群書類従11)
ゆふたたみ-たなかみやまの-さなかつら-ありさりてしも-いまならすとも
(万葉集~日文研HPより)
おとにのみ-ならしのをかの-さねかつら-ひとしれすこそ-くらまほしけれ
(素性集-異本独自歌~日文研HPより)
女のもとにつかはしける 三条右大臣
なにしおはゝ/あふさか山の/さねかつら/人にしられて/くるよしもかな
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
顕絶恋といふ事を 源兼康朝臣
たえぬるか/相坂山の/さねかつら/しられぬほとを/何なけきけん
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
恋の心を 中務卿宗尊親王
逢坂の/関路におふる/さねかつら/かれにし後は/くる人もなし
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
あふさか山のさねかつらは、人しれす御心にはたえせす、ありしやうに、ひたすらに、いかにせましとなけかれ給ふに、(略)
(狭衣物語~諸本集成第二巻伝為家筆本)
つれなきを-おもひしらねの-さねかつら-はてはくるをも-いとふへらなり
(古今和歌六帖~日文研HPより)
あしひきの-やまさねかつら-くるくるも-あひみてあはぬ-いもにもあるかな
(新撰和歌六帖-家良~日文研HPより)
いとはしや-やましたしけき-さねかつら-はひまつはれて-たえぬこころは
(新撰和歌六帖-為家~日文研HPより)
さねかつら-いまはたゆとや-あふさかの-ゆふつけとりの-くりかへしなく
(壬二集~日文研HPより)
本院の北方のまた帥の大納言のめにていますかりけるおりに平中かよみて聞えける
はるの野にみとりにはへるさねかつらわかきみさねとたのむいかにそといへりけるかくいひいひてあひちきる事ありけり(略)
(大和物語~国文学研究資料館HPより)
ほとときす-なかなくやまの-さねかつら-くりかへしても-あかぬこゑかな
(万代和歌集~日文研HPより)
あきのくる-やまさなかつら-うちなひき-あさつゆかけて-かせやふくらむ
(明日香井集~日文研HPより)
あられふる-みやまかくれの-さねかつら-くるひとみえて-おひにけるかな
(順集~日文研HPより)
地太鼓頭「荊棘をいたゞく髪筋は。/\。
シテ「主を離れて空に立ち。地「元結更にたまらねば。
シテ「さね葛にて結びさげ。
地「耳には鎖を下げたれば。
シテ「鬼神と見給ふ。
地「姿も恥かし。
(謡曲「昭君」~半魚文庫「謡曲三百五十番」より)