秋くれば霧のまがきにたちかくれほのかに見ゆる朝顔の花(堀河百首)
たちまよふ霧のまがきにむすぼほれまだ露ほさぬあさがほの花(現存和歌六帖)
きみ来(こ)ずはたれにか見せむ我がやどのかきねに咲けるあさがほの花(拾遺和歌集)
あだにのみ見つつぞ過ぐる軒ちかきまがきに咲ける朝顔の花(堀河百首)
おきて見むと思ひしほどに枯れにけり露よりけなる朝顔の花(新古今和歌集)
朝がほの日かげ待つまに咲きたちて風に散りぬるつゆのはかなさ(御室五十首)
世の中をなににたとへむ夕露も待たで消えぬるあさがほの花(順集)
世の中のはかなきうちにはかなきは暮れをも待たぬあさがほの花(堀河百首)
ありとてもたのむべきかは世の中を知らするものはあさがほの花(後拾遺和歌集)
消えぬまの身をも知る知るあさがほの露とあらそふ世をなげくかな(玉葉和歌集)
朝がほのあしたの花の露よりもあはれはかなき世にもふるかな(続古今和歌集)
朝顔をなにはかなしと思ひけむ人をも花はさこそ見るらめ(拾遺和歌集)
朝顔をはかなきものといひおきてそれに先だつ人はなになる(拾玉集)
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春日野の野べのあさがほおもかげに見えつつ妹(いも)は忘れかねつも(古今和歌六帖)
垣ほなる君が朝顔見てしがなかへりてのちはものや思ふと(大和物語)
人しれずこひはしぬともいちしろく色にはいでじ朝顔の花(古今和歌六帖)
しののめを契りて咲ける朝顔にたがかへるさのなみだ置くらむ(続古今和歌集)