牛込日乘

日々の雜記と備忘録

中島岳志著 中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義(白水社、2005年)

2006-07-15 23:16:19 | Book Review

 丁度一年前の今頃に読んだ同書についてのメモがあったので残しておく(昨夜の中村屋でも売られていた)。

 ラース・ビーハリー・ボース(Rash Behari Bose, 1886―1945年)は、日本に亡命してインド独立運動に人生を賭した革命家。インド国内での革命運動の失敗から亡命を余儀なくされ、1915年来日したものの、英国政府の差金により国外退去命令を受ける。日本から出ることは英国政府に逮捕されること=死を意味していたが、頭山満、大川周明らの尽力により間一髪追っ手を逃れ、新宿中村屋に匿われる。R.B.ボースが逼塞時に作った郷土料理をもとに、同店は現在でも有名な「インドカリー」をメニューに載せることになる。頭山らの斡旋もあり、のちに彼は中村屋の娘・相馬俊子と結婚。一男一女をもうける。日本の敗戦直前の1945年1月に病没するまで、R.B.ボースは日本を拠点にインド独立運動に邁進した。しかし、亡命以来祖国に帰ることも、独立を果たしたインドの姿を見ることもなく、58年の生涯を終えた。

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中島岳志 中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義(白水社、2005年)


夏の夜の送別会

2006-07-15 19:33:28 | Weblog
 会社の大先輩Iさんが今月いっぱいで退社されるとのことで、金曜の夜は新宿中村屋にて開かれた送別会に出席。今の会社に来てから二年余り、直接仕事で指示を受ける立場にはなかったとはいえ、ちょっとしたトラブルの際に的確なアドバイスをくれたり、さり気なく声をかけて気遣ってくれたりと、特に付き合いの深いわけでもなかった私にとっても、頼りになる存在の人だった。

 会は立食形式で、歴代の部下だった面々が一人ずつスピーチ。過去はずいぶん厳しい上司でもあったようだが、皆それを懐かしむように話し、Iさんのコメントともども和やかに進んでいったのが印象的。最後の挨拶の中で、Iさんは「以前から、五〇になる前に辞めるという考えを持っていた」「今までは組織の肩書で仕事ができたが、これからは全くの一個人。一人の人間としての力を試したい」と語っていた。

 僭越ではあるが、退職を決意するに至るまでには奇麗事だけでは済まない様々な葛藤があったことと想像する。入社したばかりの頃にはよくも悪くも見えなかった、会社としての盛衰の経緯や微妙な人間関係などを少しずつ知るにつけ、それなりに大きくなってしまった組織が動いていくことの難しさを感じる。カリスマか理念か利益か、人々を結び付けているものも状況によって変わらざるを得ない。

 Iさんは、二十六年前の新卒のとき、「誰も知らないような、いつ倒産するかも知れない小さな出版社で、営業も編集も経理もやる、というような仕事をしたい」と思って入社したのだそうである。