牛込日乘

日々の雜記と備忘録

ヘンリー・ミラー『マルーシの巨像』より

2007-10-31 23:59:50 | Translations
 僕は、いちばん成功したアメリカの製造業の社長なんかよりも、むしろボロを着てうろつき回りながら来年のトウモロコシの収穫を待っている、明確な良心を持った殺人者になりたい。……
――そのギリシャ人はただ一人を殺したに過ぎなかった。そして、それは正当な怒りに基づいたものだったのである。しかるに、その成功者たるアメリカの経営者は、彼の人生の毎日の中で、罪なき何千人もの男たち、女たち、そして子供たちを眠りながら殺しているのだ。ここでは誰も明確な良心など持つことができない――我々はみな連結された巨大な殺人機械の一部なのだ。そこでは、殺人者は高貴で聖なる存在として見なされ得るのである。たとえ彼が犬のような生活を送っているのだとしても。


散漫な休日

2007-10-27 23:59:35 | Weblog

 昼前に起きると、左あごが腫れている。鏡を見ると、なんだか宍戸錠のようだ。どうやら左奥歯が炎症を起こしているらしい。久し振りの完全OFF日だったのだが、大雨の中かかりつけの歯科医に行くために会社の近くへ。このところの多忙で抵抗力が落ちており、以前治療したところに細菌が入って膿が溜まっているとの診断。とりあえず応急処置をしてもらい、薬をもらって辞去。またしばらく通う必要がありそう。

 神楽坂に戻り、筑土八幡神社近くの床屋で二箇月ぶりに散髪。ラジオでレッドソックス対ロッキーズのレポートをしていたのを聞くともなしに聞いていると、現地からの女性リポーターの声と名前に聞き覚えが。どうやら大学時代の同級生らしい。結局大学は中退してアメリカで音楽や執筆活動をしていると風の便りに聞いていたが、意外なところでの再会(といっても一方的にだけど)に微笑。頑張ってるんだね。

 娘は日に日に言葉を覚えつつあり、最近はときどき名詞だけでなく動詞や形容詞を組み合わせてしゃべることがある。「アンパンマン、いた」「これ、おいし」など。こちらの言うことはかなり分かっているようで、「牛乳飲む?」と訊くと首を横に振り、「ヨーグルト食べる?」と訊くとニコニコしながら何度も頷いたりしていた。久し振りにSkypeで実家に連絡し、じじばばと対面。「アッパンマ、アッパンマ」を連発していた。ちなみにTVでアンパンマンを見せたことは一度もないのだが……。


Days on the Road

2007-10-17 00:54:18 | Weblog

 先週から今週初めに掛けての断続的な出張がようやく一段落。

 九日から十一日は名古屋方面に向かい、営業所との打合せ、クライアント訪問、名古屋在住のフリー編集者Aさんとの打合せなどを済ませる。


(「スパイラルタワー」というらしい。モード学園のビルとの由。モード学園に進学します、なんて人は聞いたことがないが、そんなに儲かってるのかねえ?)

 好景気といわれる名古屋は、高層ビル建築ラッシュらしい。しかし、この写真を撮った場所のすぐ右手にある公園では、群集した百人以上のホームレスが行列し、ボランティアによる炊き出しの弁当を受け取っていた。あまりに露骨なギャップに呆れる。

 十五、十六日は福岡へ。飛行機があまり好きではないこともあって、今回は新幹線で行ってみた。東京―博多間は五時間あまりかかるので流石にちょっと疲れるが、これだけ一人で本を読みながら過ごす時間も久し振りなので、全然退屈はしない。

 昔いた会社で福岡に行ったときに使ったことのある、博多駅前の温泉つきホテルへチェックイン。数日前に友人のT子女史から教わった中洲の屋台の天ぷら屋を目指してタクシーに乗る。

 地図を書いてもらっていたので場所はすぐに見つかった。確かに屋台も出ている。しかし、天ぷら屋ではなくお好み焼き屋なのだ! 「博多の屋台は知らない店にうかつに入るとボラられるよ」とも聞いていたので、気の小さい私は店の前をうろうろするだけで結局入らずに、別の店を探すことにした(ごめんよ)。



(天神から中洲へとぶらぶら歩き)

 福岡は前にいた会社の仕事で何回か来たことがあるが、いずれも博多駅周辺ばかりで、名高い天神や中洲はほとんど未経験。散歩しながら適当な居酒屋を見つけ、可もなく不可もない魚料理を食す。かんぱちの刺身の胡麻ソースがけなどをつまみながら、一人でビール。ホークスのシーズンも終わった後の日曜の夜なので、巷もあまり騒がしくない。

 翌日は朝から二つの訪問先へ行って話を聞く。無事終了後、西新(にしじん) 駅から営業所へ向かおうとしたところ、「ロボスクエア」と書かれた案内板が目に入った。ここ二年ほど手がけている本でロボットを扱っていて、福岡にこういう施設があることは知っていたが、まさかこんなところにあるとは思わなかった。急遽営業所に電話し、「寄ってくるところができたから会議開始は一時間延ばしてください」と連絡する。

 
(博多名所といえばロボスクエアさ。係の人が親切でした)


(高齢者向けパートナーロボット、だそうです)

 タクシーに乗って「ロボスクエアまで」と言ったら、「???」という反応。「日赤の近く? あれかね、RKBのとこじゃろか?」などとと言われ、今度は土地勘のない私が「???」。まあ、何とか辿りついた。担当の人に断って、本に掲載するかもしれない写真も撮らせてもらう。

 博多駅に戻って鹿児島本線に乗って営業所へ。三時間ほど会議をした後、すぐに博多駅に引き返して新幹線に乗る(東京行きの最終は十八時五十四分!)。


(885系「白いつばめ」。九州の鉄道は楽しい(仕事に関係なければね…というのは極私的感慨))


(すぐに787系「有明」がホームに入ってきた)

 家に着いたのは十二時頃。車中は結構寝ていたとはいえ、やっぱり疲れます。今度行くときは、まあ、飛行機にしよう。


過剰適応は長い目で見れば却って身を損なう、という話

2007-10-04 08:14:10 | Weblog

 アタマがよくて体力があってバカな人というのは、本当にいやなものだ。しかし、どこでもいつの時代でも、世の中を支配するのはそういう人たちなのである。むしろ余計なことをしてくれない方が随分ましな世の中になるんじゃないか気もするが、こういう人種はそもそも「積極的に何もしない」「直接的な利益にならないものに意味を見いだす」という選択肢を持たないので(だからバカなのだが)、何を言っても馬耳東風というか、こちらがバカにされるだけである。

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asahi.comより

社会が求める人材とは 経産省と文科省が会議設置
2007年10月03日18時54分

 経済産業省と文部科学省は3日、産業界と大学の代表者が集まり、社会が求める人材の育成策について話し合う会議「産学人材育成パートナーシップ」を設置した。日本経団連や経済同友会など経済界の代表と、国立大学協会や私立大学連盟などの大学界の代表が委員に就任。日本経団連副会長の榊原定征・東レ社長と、国立大学協会副会長の梶山千里・九州大学長が共同議長に就いた。

 甘利経産相は「人材育成で重視する点が、教育界と産業界とで一致していない。両者の役割分担と協力について議論し、現状を変える場としたい」。渡海文科相は「社会の期待に応えられる人材を育成するには、いっそうの産学連携の推進が必要。会議の議論を踏まえ、産学が有機的に連携した大学教育の充実を図っていく」と述べた。


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 上記下線は引用者による。しかし、そもそも、どうして教育界と産業界で育成したい人物像がそこまで一致する必要があるのだろうか。どう考えても産業界が教育界を搾取している、あるいは教育界が産業界にすり寄っているとしか読めないが、こういう短絡的な思考が堂々と実行に移されることの恐ろしさには、もっと敏感になった方がいいだろう。

 結果として高等教育を受けた人間の大多数が産業界に身を投じているという現実はあっても(私自身もそうだ)、社会のすべてが産業界によって成り立っているわけではない。高等教育にはむしろこうした枠組みすらも疑うだけの知性を持った人間を育成するというより高度な役割が期待されると思うのだが(もちろん、本当にそれができるのはほんの一部のエリートだけでよい)、そして、長い目で見れば産業界自身にとってもその方がより大きなメリットがありそうなのだが、まあいずれにしてもこれ以上中途半端にアタマのいいバカが増えるのは勘弁してほしい。