牛込日乘

日々の雜記と備忘録

Machine Age Blues

2006-07-11 23:42:33 | Weblog

 午後は私の所属する業界の合同研修のため、市ヶ谷のホテルグランドヒルへ。出版という小産業の中にあってさらに小さな業界とはいえ、同業団体には数十社が加盟しており、今日の研修会も三〇〇人以上が出席したとのこと。研修内容は「ミスをなくすためにどうすればよいか」。ひと言で言えば品質管理なのだが、これは組織の問題であると同時に人間の心の問題でもある。

 この十年で本の作り方というのはすっかり変わってしまった。いわゆるDTPの発達で、とりあえず形を作るのは格段に簡単になったのだが、故山本夏彦翁の好んで引用する如く、「機械有る者は必ず機事有り。機事有る者は必ず機心有り」(荘子)。『三省堂中国故事成語辞典』(金岡照光編)には、訳文として

 巧妙な機械を作れば、その機械を使う仕事が必ず出てくる。機械を使う仕事があると、機械にとらわれる心が起き、機械に振り回される。(その結果、純真さが失われ、精神が安定しなくなる。)

 とある。しかし、これも故夏彦翁の言で、「一度できてしまえば、それがなかった昔には二度と帰れない」。自家用車然り、テレビ然り、以下コンピュータ、インターネット、携帯電話等々と続くが、その究極が核兵器であろう。ちなみに、市ヶ谷という土地柄もあってか、ホテルの隣の間ではアメリカの軍需産業が軍用機やスカッドミサイル(!)のプレゼンテーションをしており、ロビーは制服を着た米国軍人や日本の自衛官たちで賑わっていた。恐ろしいことに本当の話。