草思社が民事再生法申請との報道。特に好きな版元というわけではないが、こういう傍目から観ると堅実かと思われた出版社が立ちゆかなくなるというのは、あまりいいニュースではない。十年ほど前に神宮前に住んでいた頃、キラー通りを千駄ヶ谷に向かって河出書房新社、草思社のビルの脇を通りながらよく歩いた。草思社の小綺麗なビルはなかなか羽振りが良さそうに見えたものだが……。新聞記事では所在地は東京都文京区とあるが、すでに千駄ヶ谷(渋谷区)のビルは手放してしまっていたのだろうか。
今月の日経新聞「私の履歴書」は、前FRB議長のアラン・グリーンスパン。彼が元ミュージシャンだったとは聞いていたが、スタン・ゲッツと共演したことがあるとは知らなかった(若いゲッツのあまりの才能に圧倒されて音楽の道を断念したとか)。また、昨日掲載された連載記事によると、作家のアイン・ランドとも交流があったらしい。こういう事実を知ると、愛憎半ばするアメリカという国の、良くも悪くも懐の深いところに感心せずにはいられない。元プロミュージシャンが日銀総裁になるような時代が、いつかは日本にも来るのだろうか。
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草思社が民事再生法適用申請 負債総額22億5千万円
2008年01月10日21時43分
日本語ブームを巻き起こした「声に出して読みたい日本語」などで知られる中堅出版社の草思社(東京都文京区、木谷東男社長)が9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は22億4789万円。複数の企業が支援を表明しており、事業は継続する方針。出版市場は90年代半ばから縮小を続けており、多くのベストセラーを生み出してきた中堅出版社の民事再生法申請は、出版不況の象徴といえそうだ。
同社によると、長引く出版不況で売り上げが低迷し、有利子負債が経営を圧迫、支援企業の下で再建を目指すことにした。店頭で書籍は購入できるという。2月中をメドに再建計画を詰め、3~4月に再スタートを切りたいという。同社の出版事業は最盛期の97年には31億9000万円の売り上げがあったが、昨年は13億6000万円に落ち込んでいた。
草思社は68年創立。個性的なネーミングで知られ、「間違いだらけのクルマ選び」を始め、「清貧の思想」「平気でうそをつく人たち」「他人をほめる人、けなす人」などのベストセラーを生み出してきた。
堅実な経営で知られた出版社の再生法申請に、業界の衝撃は大きい。出版ニュース社によると、06年の書籍の実売金額は96年から900億円減の1兆円程度に落ち込み、返品率は40%程度で高止まりしている。業界関係者は「草思社はベストセラーを出す力がある出版社。出版不況もここまで来たかという思いだ」と衝撃を受けている。
(asahi.comより)