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司法修習生への給付が貸与制へ

2010-10-23 03:16:02 | 指定なし

 すったもんだした挙げ句,司法修習生への給付が,規定方針どおり,貸費制に切り替えられることになった。


 


 これは,司法制度改革で,法曹養成制度を改め,法曹の大増員を果たすことの反面として定められていたものである。


 


 そもそも,今の2000人の司法修習生から,裁判官や検察官になる者は,200人程度である。この200人だって,いつ,官を辞して弁護士になるやもしれないし,弁護士にすらならず,法曹資格を有しながら,ただのサラリーマンや,専業主婦となっている人達もいる。


 


 そういう意味で,法曹養成制度は,基本的に民間の専門家の養成制度であり,そういう意味では,いわゆる士業全般と同じことである。


 


 ただ,従来は,弁護士には,特別の扱いがなされてきた。それは,弁護士がその一部を担っている司法制度は,国家の存立の基礎をなす制度であって,それを担う人材の育成は,極端に言えば,国家の礎を築くものである,ということであろう。このような考えに立って,民間人の資格にすぎない法曹資格の取得に,国費が投入されることが正当化されてきたというところであろう。


 


 しかし,その養成数が,大昔の年300人から,ふた昔前の500人,一昔前の1000人のどれと比べても,比較にならないほど膨大な年2000人とか3000人となり,もっとも修習期間は1年で半分になったとはいえ,今度は,官側の人材育成という点では,従来よりもはるかに希薄になったという状況では,人材育成の重要性を強調しても,なかなか,国費投入の正当化は難しいということになったのであろう。


 


 ましてや,修習期間こそ1年になったが,その前に,法科大学院という制度を作り,ここにも国費が投入されているのであるから,その全体を考えると,国費の額が,アンバランスに高いという批判には,とても対抗出来なかったのではないかとも推測される。


 


 なんにせよ,制度をいじることは,そこからどのような派生的効果が生じるか分からないという不安を常に抱えている。


 


 大学から法科大学院までで,数百万円の負債を抱えて,司法試験に合格する受験生も少なくないという。晴れて,司法試験に合格しても,その先に就職難が待ち構えているという現状もある。もちろん,成績優秀者に就職難がないことは自明である。


 


 その中で,自分は成績優秀者となるとの自信をもって,上位の法科大学院を目指し,少々の借金返しなど何の障害にもならないというだけの自負をもって法曹を目指す少壮の者は,一体何人いるのだろうか。


 


 たいていの志願者は,当たり前のことだが,法律実務を知らないまま,法律の世界に飛び込んでくる。そこで,自分の能力に自信を持てと言うこと自体,ナンセンスでもある。


 


 そのような状況では,自らリスクを冒して法曹を目指すことにちゅうちょを覚えるのが,たいていの人間の心理であろう。これは,ある意味由々しき事態かもしれない。


 


 今後の展開を予想することは難しいが,貸費制に替わったとしても,少なくとも,法曹となることに魅力と希望を見い出している人達の心をつなぎ止めるために,貸費制による魅力の低下を補うような施策を考える必要があるのではないだろうか。


 



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