さて、お次の抜粋は、
『愛猫のための家庭の医学 エリザベス・ランドルフ監修 飛田野裕子訳 ㈱ソニー・マガジンズ』の88~90頁からです。
この本はとてもお役立ちで、以前は自分も持っていたのですが、後輩に譲り、今回、図書館から借りてきました。1の宮田先生の抜粋と同じ、2003年初版であり、一旦ワクチンが開発され、まだ発売停止ではないことを事をあらかじめ念頭においてください。
予防できる猫のウィルス感染症
■猫伝染性腹膜炎(fip):fipは猫コロナウイルスによって引き起こされるとても奇妙な病気です。felvやfivと同じく、fipウイルスの猫から猫への感染力はさほど高くありませんが、生後間もない子猫はきわめてこれに感染しやすいのです。fipの猫のほとんどは子猫のときに感染し、長い年月(数ヶ月から数年)を経たのちに、ウイルスが活性化すると言うのが、一般的な見方です。なにがこのウイルス活性化させるかということは、現在ではまだ明らかにされていません。生まれて間もない子猫に対する感染力が強いことから、ブリーダーにとっては繁殖用の雌猫がこの病気に感染すると大問題です。
コロナウイルスは猫の臓器を直接攻撃するわけではないようです。むしろ、ウイルスと猫自身の体内でつくられたウイルスに対する抗体が組み合わさって複合体をつくり、それが血流に乗って、ついには血管や組織に居座るようになるのです。そしてこの免疫複合体が、組織の損傷を与える、または破壊する炎症性の反応を引き起こすのです。実質的には、猫の免疫システムそのものが病気の原因となるのだと言えます。コロナウイルスには攻撃性が穏やかで、腸に軽度の不調をもたらす物もあります(腸コロナウイルス)。これらが違う種類のコロナウイルスなのか、あるいは感染力の差にちがいがあるだけの同一コロナウイルスなのかは、はっきりしていません。
fipもfelvと同様に、猫に様々な症状をもたらします。猫の年齢、ウイルスの感染力、免疫複合体に犯される臓器、そしておそらくは猫の抵抗力によって、症状は違ってきます。子猫と若い猫に共通した症状は”湿性”または滲出性fipと呼ばれています。これは胸腔または腹胸腔またはそのどちらかに炎症を起こすものです。胸腔または腹腔内にドロドロとした高タンパクの液体が溜まり、呼吸困難や腹部の膨張を招きます。これにともなって、発熱、嘔吐、下痢、食欲不振、急速な衰弱といった症状が見られます。この症状が出ると、たいていの場合すぐさま死に至ります。
中年または高齢猫のfipは、ほとんどの場合”乾性”または非滲出型です。これは化膿性肉芽腫炎を起こして臓器を破壊します。この状態に陥った猫は、黄疸、腎臓肥大、不全、脳の腫れ、痙攣、嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、発熱など、ありとあらゆる症状を起こします。また、”子猫死亡症候群”、関節炎による歩行困難、慢性呼吸困難といった症状を見せる猫もいます。
fipに関しては、血液検査でコロナウイルスの抗体があるかどうかを調べることはできますが、ウイルス感染の有無を調べることは困難です。抗体検査では、感染した動物と免疫を持っている動物の区別をはっきりとつけることはできないからです。抗体の値が高いということは、感染している可能性が高いという理論を一概には適用できるとはかぎりません。fipウイルスと交差反応する腸コロナウイルスが存在することもあって、混乱はいっそう大きくないます。本書の著者たちとしては、コロナウイルス抗体の値が高いからといって、すぐにその猫を安楽死させるべきではないと考えます。抗体検査の結果は、その他の血液検査、体液分析、組織検査の結果および症状と合わせて、総合判断の材料としてのみ有効なのです。
fipには有効な治療法がないことから、この病気の予後はよくありません。”乾性”型のfipには抗炎症剤がある程度効果を発揮し、その他の対症療法も一時的には効果があります。”湿性”型には、ほとんど治療による効果は期待出来ません。
最近、新しいfipワクチンが開発されましたが、その有効性に関してはいささか問題があります。このワクチンはウイルスが侵入する入り口に当たる鼻の内部で免疫を活性化させるため、点鼻薬になっています。fipはある意味では固体の免疫反応によって生じる疾患なので、全身の免疫システムを活性化する為には、注射よりもこの方法で投与するほうが適していると言えます。このワクチンは生後16週間になるまで投与出来ません。そこがこのワクチンの問題点なのです。なぜなら猫がこの病気に感染するのは、ほとんどは新生児のころなのですから、16週まで待たなければならないとなれば、予防効果はきわめて低くなります。しかしながら、このワクチンの複雑な組成を考慮すると、16週以内での投与はやはり認められません。
以上の抜粋から、一度はワクチンは開発されたようですが、現段階でワクチンが使えない、無いわけですし、すでに発症した猫を看取った経験を次の3で書きたいと思います。
3につづく
『愛猫のための家庭の医学 エリザベス・ランドルフ監修 飛田野裕子訳 ㈱ソニー・マガジンズ』の88~90頁からです。
この本はとてもお役立ちで、以前は自分も持っていたのですが、後輩に譲り、今回、図書館から借りてきました。1の宮田先生の抜粋と同じ、2003年初版であり、一旦ワクチンが開発され、まだ発売停止ではないことを事をあらかじめ念頭においてください。
予防できる猫のウィルス感染症
■猫伝染性腹膜炎(fip):fipは猫コロナウイルスによって引き起こされるとても奇妙な病気です。felvやfivと同じく、fipウイルスの猫から猫への感染力はさほど高くありませんが、生後間もない子猫はきわめてこれに感染しやすいのです。fipの猫のほとんどは子猫のときに感染し、長い年月(数ヶ月から数年)を経たのちに、ウイルスが活性化すると言うのが、一般的な見方です。なにがこのウイルス活性化させるかということは、現在ではまだ明らかにされていません。生まれて間もない子猫に対する感染力が強いことから、ブリーダーにとっては繁殖用の雌猫がこの病気に感染すると大問題です。
コロナウイルスは猫の臓器を直接攻撃するわけではないようです。むしろ、ウイルスと猫自身の体内でつくられたウイルスに対する抗体が組み合わさって複合体をつくり、それが血流に乗って、ついには血管や組織に居座るようになるのです。そしてこの免疫複合体が、組織の損傷を与える、または破壊する炎症性の反応を引き起こすのです。実質的には、猫の免疫システムそのものが病気の原因となるのだと言えます。コロナウイルスには攻撃性が穏やかで、腸に軽度の不調をもたらす物もあります(腸コロナウイルス)。これらが違う種類のコロナウイルスなのか、あるいは感染力の差にちがいがあるだけの同一コロナウイルスなのかは、はっきりしていません。
fipもfelvと同様に、猫に様々な症状をもたらします。猫の年齢、ウイルスの感染力、免疫複合体に犯される臓器、そしておそらくは猫の抵抗力によって、症状は違ってきます。子猫と若い猫に共通した症状は”湿性”または滲出性fipと呼ばれています。これは胸腔または腹胸腔またはそのどちらかに炎症を起こすものです。胸腔または腹腔内にドロドロとした高タンパクの液体が溜まり、呼吸困難や腹部の膨張を招きます。これにともなって、発熱、嘔吐、下痢、食欲不振、急速な衰弱といった症状が見られます。この症状が出ると、たいていの場合すぐさま死に至ります。
中年または高齢猫のfipは、ほとんどの場合”乾性”または非滲出型です。これは化膿性肉芽腫炎を起こして臓器を破壊します。この状態に陥った猫は、黄疸、腎臓肥大、不全、脳の腫れ、痙攣、嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、発熱など、ありとあらゆる症状を起こします。また、”子猫死亡症候群”、関節炎による歩行困難、慢性呼吸困難といった症状を見せる猫もいます。
fipに関しては、血液検査でコロナウイルスの抗体があるかどうかを調べることはできますが、ウイルス感染の有無を調べることは困難です。抗体検査では、感染した動物と免疫を持っている動物の区別をはっきりとつけることはできないからです。抗体の値が高いということは、感染している可能性が高いという理論を一概には適用できるとはかぎりません。fipウイルスと交差反応する腸コロナウイルスが存在することもあって、混乱はいっそう大きくないます。本書の著者たちとしては、コロナウイルス抗体の値が高いからといって、すぐにその猫を安楽死させるべきではないと考えます。抗体検査の結果は、その他の血液検査、体液分析、組織検査の結果および症状と合わせて、総合判断の材料としてのみ有効なのです。
fipには有効な治療法がないことから、この病気の予後はよくありません。”乾性”型のfipには抗炎症剤がある程度効果を発揮し、その他の対症療法も一時的には効果があります。”湿性”型には、ほとんど治療による効果は期待出来ません。
最近、新しいfipワクチンが開発されましたが、その有効性に関してはいささか問題があります。このワクチンはウイルスが侵入する入り口に当たる鼻の内部で免疫を活性化させるため、点鼻薬になっています。fipはある意味では固体の免疫反応によって生じる疾患なので、全身の免疫システムを活性化する為には、注射よりもこの方法で投与するほうが適していると言えます。このワクチンは生後16週間になるまで投与出来ません。そこがこのワクチンの問題点なのです。なぜなら猫がこの病気に感染するのは、ほとんどは新生児のころなのですから、16週まで待たなければならないとなれば、予防効果はきわめて低くなります。しかしながら、このワクチンの複雑な組成を考慮すると、16週以内での投与はやはり認められません。
以上の抜粋から、一度はワクチンは開発されたようですが、現段階でワクチンが使えない、無いわけですし、すでに発症した猫を看取った経験を次の3で書きたいと思います。
3につづく