麗しの枕草子物語
耳なし草
正月七日には、七種粥を頂きます。
前日に、近郷の人たちが、さまざまな草などを摘んで持ってきてくれました。その中に、見たこともない草を子供が持ってきていたのです。
「これ、この草は、何という名前なの」
と尋ねましたが、
「さあ、知らないわ」
などと言うだけで、互いに顔を見合わせたり、知らんぷりをしています。
そのうちに、
「『耳無草』といいます」
と言う者がいましたので、
「なるほどねぇ。道理で話が通じないような顔をしているわけね」
と、笑っていると、また別の人が、とても可愛らしい菊の、新芽が伸びたばかりのを持ってきたので、
つめどなほ耳無草こそあはれなれ
あまたしあればきくもありけり
なんて歌が、即座に浮かんできましたが、まあ、声に出して詠んだとて、誰も聞いてはくれないことでしょう。
(第百二十五段・七日の日の若菜を、より)
耳なし草
正月七日には、七種粥を頂きます。
前日に、近郷の人たちが、さまざまな草などを摘んで持ってきてくれました。その中に、見たこともない草を子供が持ってきていたのです。
「これ、この草は、何という名前なの」
と尋ねましたが、
「さあ、知らないわ」
などと言うだけで、互いに顔を見合わせたり、知らんぷりをしています。
そのうちに、
「『耳無草』といいます」
と言う者がいましたので、
「なるほどねぇ。道理で話が通じないような顔をしているわけね」
と、笑っていると、また別の人が、とても可愛らしい菊の、新芽が伸びたばかりのを持ってきたので、
つめどなほ耳無草こそあはれなれ
あまたしあればきくもありけり
なんて歌が、即座に浮かんできましたが、まあ、声に出して詠んだとて、誰も聞いてはくれないことでしょう。
(第百二十五段・七日の日の若菜を、より)
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