雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

宮仕へ人のもとに

2014-08-07 11:00:46 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百八十六段  宮仕へ人のもとに

宮仕へ人のもとに来などする男の、そこにて物食ふこそ、いとわろけれ。食はする人も、いと憎し。
想はむ人の、「なほ」など、心ざしありていはむを、忌みたらむやうに、口を塞ぎ、顔をもて退くべきことにもあらねば、食ひをるにこそはあらめ。

いみじう酔いて、わりなく夜更けて泊りたりとも、さらに湯漬をだに食はせじ。「心もなかりけり」とて、来ずば、さてありなむ。
里などにて、北面(キタオモテ)より出だしては、いかがはせむ。それだに、なほぞある。


宮仕えしている女房の局を訪ねて来たりする男が、女の部屋で食事をするなんてのは、全くみっともない。食べさせる女房も、実に腹立たしい。
愛する女が、「ぜひに」などと、心をこめてすすめるのを、忌み嫌うかのように、口をふさぎ、顔をそむけるわけにもゆかないので、やむを得ず食べているのでしょうがねぇ。

男がひどく酔って、どうしようもなく夜が更けてしまって泊まったとしても、私は、決して湯漬さえ食べさせません。「気の利かない女だ」と思って、来なくなるなら、それはそれでいいんです。
女の実家などで、母親が食事を準備して出した場合には、仕方がありません。そんな場合でも、やっぱりみっともないものですよ。



前の段は、下品な言葉についてだったので、その下品なものの連想で、女のもとを訪れた男が食事をすることを挙げています。
このあたりの感覚は、現代人と少し違うような気がしますが、恋愛感情で訪れた男が食事をするのが少納言さまは相当お気に召さないようです。この感覚は、当時の常識だったのでしょうか、それとも、少納言さま独自の感覚だったのでしょうか。

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