雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

歴史散策  神武登場 ( 1 )

2015-09-01 09:30:13 | 歴史散策
          神武登場 ( 1 )

芦原中国の統治

天上の神々の意志によって、芦原中国は天照大御神の子孫が統治することになり、やがて、神武天皇の登場につながって行くのであるが、そのあたりについて「古事記」に従って辿ってみよう。

天照大御神は、天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)に、
「豊芦原千秋長五百秋水穂国(トヨアシハラノチアキノナガイホアキノミズホノクニ)は、我が御子、正勝吾勝々速日天忍穂耳命(マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミノミコト)の統治する国である」 
と命じられて、天降りさせた。
ふつうは芦原中国(アシハラノナカツクニ)と呼ばれているが、この大げさな呼び名は、「いつまでも豊かな収穫の続く、みずみずしい稲穂が出来る国」だと強調したものである。同様に、天忍穂耳命の名前についても、天照大御神と須佐之男命が争った際に、須佐之男命が天照大御神の髪飾りの玉を噛み砕いて吐き出した息の霧から生まれた時に付けられた名前を使っているのは、由緒ある天上の神であることを示すためと思われる。

さて、命令を受けた天忍穂耳命が天の浮橋(アメノウキハシ・天空に浮かんだ橋で、天降って行く通路ではない)に立って、芦原中国の様子を窺うと、たいへん騒がしい状況であることが感じられた。そのため、再び天上に戻り、天照大御神にその旨を申し上げた。
そこで、高御産巣日神(タカミムスヒノカミ・天地の初めに高天原に最初に成った三神のうちの一人)と天照大御神の命により、天の安の河の河原に八百万の神々を集め、思金神(オモイカネノカミ・予見の神)に、
「芦原中国は、我が御子に統治させる国である。だが、この国には勢い激しい荒ぶる国つ神が大勢いるという。どの神を遣わして服属させるのが良いだろうか」
と思案させた。
思金神と数多の神々は相談し、「天菩比神(アメノホヒノカミ・稲穂を神格化した名前)を行かせましょう」ということになった。

それにより、天菩比神が芦原中国に派遣されたが、たちまちのうちに大国主神になびいてしまって、三年経っても何の報告もしてこなかったのである。

     ☆   ☆   ☆

二人目の神

このため、高御産巣日神と天照大御神は神々を集めて、
「芦原中国に遣わした天菩比神は、長い間報告をしてこない。今度は、どの神を派遣すればよいだろうか」
と尋ねた。
それに対して、思金神は、「天津国玉神(アマツクニタマノカミ・高天原という世界の国魂の神)の子である天若日子(アメワカヒコ・天上界の若者という意味)を遣わすのがよろしいでしょう」と答えた。

そこで、天のまかこ弓・天のはは矢(意味が今一つ分からないが、霊力のある弓矢であろう)を天若日子に授け、芦原中国に遣わした。
ところが、天若日子は、芦原中国に降り着くと、たちまちのうちに大国主神の娘である下照比売(シタテルヒメ)の虜となり娶ると、その国を手に入れようとの野望もあって、八年経っても天上に復命しようとしなかったのである。

     ☆   ☆   ☆


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