枕草子 第百十六段 心づきなきもの
いみじう心づきなきもの。
祭り・禊など、すべて男の物見るに、ただひとり乗りて、みるこそあれ。いかなる心にかあらむ。やむごとなからずとも、若き郎等などの、ゆかしかるをも、ひき乗せよかし。
透影に、ただ一人ただよひて、心一つにまぼり居たらむよ。「いかばかり心狭く、けにくきならむ」とぞ、おぼゆる。
物へいき、寺へも詣づる日の雨。
使ふ人などの、
「われをばおぼさず。なにがしこそ、ただ今の時の人」などいふを、ほののきたる。
「人よりは少しにくし」と思ふ人の、おしはかり言うちし、すずろなるもの怨みし、わがかしこなる。
全く気にいらないもの。
賀茂祭りや禊など、すべての男性が見物に行くのに、牛車にたった一人乗って見るなんてとんでもありません。いったいどういう料簡なのでしょう。身分の高い人でなくても、若い従者で、気のきいた者でも、一緒に乗せればいいのですよ。
牛車の御簾を通して見える人影が、たった一人でしょんぼりと、黙りこくって見つめている姿といったら。
「何て料簡の狭い、憎々しい男だろう」と、思うのです。
物見に行ったり、参詣したりする日の雨は、全く気にいらない。。
召し使っている者などが、
「ご主人は、私をちっともかまってくれない。だれそれさんが、きっと一番のお気に入りなんだ」などと言うのを、小耳にはさむのは、ほんとに気に入らない。
「他の人より少々ましだ」と好意を持っている人が、当て推量のうわさをしたり、根も葉もない逆恨みをしたりして、自分だけ良い子になっているのは、全く気に入りません。
最初の部分ですが、少々理解しにくいのですが、
「皆が賑やかに楽しむ行事に一人ぽつねんと見ていること」
「身分が高い人でなくても、誰かと一緒に乗って行くべき」
「気のきいた郎等を同乗させてもいいではないか」
この三点が、少納言さまはお気にいらないようです。
私自身よく理解できていないのですが、どうやら、「身分の低い者は、牛車に何人かで乗るのは差し障りがある」「郎等(従者)を同乗させるのは、本当はよくない」らしいと、理解しました。正しいのかどうか自信がありません。頼りなくて申し訳ありません。
「人よりは少しにくし」の意味ですが、「人より少し憎らしい」とする解説書もありますが、それでは『心づきなきもの』という主題に合致しませんので、「にくし」を「心憎し」のこととして現代訳しました。
いみじう心づきなきもの。
祭り・禊など、すべて男の物見るに、ただひとり乗りて、みるこそあれ。いかなる心にかあらむ。やむごとなからずとも、若き郎等などの、ゆかしかるをも、ひき乗せよかし。
透影に、ただ一人ただよひて、心一つにまぼり居たらむよ。「いかばかり心狭く、けにくきならむ」とぞ、おぼゆる。
物へいき、寺へも詣づる日の雨。
使ふ人などの、
「われをばおぼさず。なにがしこそ、ただ今の時の人」などいふを、ほののきたる。
「人よりは少しにくし」と思ふ人の、おしはかり言うちし、すずろなるもの怨みし、わがかしこなる。
全く気にいらないもの。
賀茂祭りや禊など、すべての男性が見物に行くのに、牛車にたった一人乗って見るなんてとんでもありません。いったいどういう料簡なのでしょう。身分の高い人でなくても、若い従者で、気のきいた者でも、一緒に乗せればいいのですよ。
牛車の御簾を通して見える人影が、たった一人でしょんぼりと、黙りこくって見つめている姿といったら。
「何て料簡の狭い、憎々しい男だろう」と、思うのです。
物見に行ったり、参詣したりする日の雨は、全く気にいらない。。
召し使っている者などが、
「ご主人は、私をちっともかまってくれない。だれそれさんが、きっと一番のお気に入りなんだ」などと言うのを、小耳にはさむのは、ほんとに気に入らない。
「他の人より少々ましだ」と好意を持っている人が、当て推量のうわさをしたり、根も葉もない逆恨みをしたりして、自分だけ良い子になっているのは、全く気に入りません。
最初の部分ですが、少々理解しにくいのですが、
「皆が賑やかに楽しむ行事に一人ぽつねんと見ていること」
「身分が高い人でなくても、誰かと一緒に乗って行くべき」
「気のきいた郎等を同乗させてもいいではないか」
この三点が、少納言さまはお気にいらないようです。
私自身よく理解できていないのですが、どうやら、「身分の低い者は、牛車に何人かで乗るのは差し障りがある」「郎等(従者)を同乗させるのは、本当はよくない」らしいと、理解しました。正しいのかどうか自信がありません。頼りなくて申し訳ありません。
「人よりは少しにくし」の意味ですが、「人より少し憎らしい」とする解説書もありますが、それでは『心づきなきもの』という主題に合致しませんので、「にくし」を「心憎し」のこととして現代訳しました。