著 : 新美 南吉
とあるお山の中に、
きつねの母子が
住んでいました。
寒い寒い日の朝、子ぎつねが外に出てみると…。
真っ白な雪景色
でした。
初めて見る雪に、子ぎつねは大喜びです。
「 わぁ~い!」
子ぎつねは、とっても嬉しくて 雪の中で一日中遊びました。
お手々が
冷たいよ…。」
お母さんぎつねは、子ぎつねにてぶくろを買ってあげることにしました。
でも お母さんぎつねは、以前 人間にとっても怖い目に合わされたので、どうしても町へ行くことが出来ません。
お母さんぎつねは、子ぎつねの右手を人間の手に変えました。
「 変なお手々!」
「 これはね、
人間の手よ。」
「 人間?」
「 町の帽子屋さんへ行って 扉の隙間からこの右手を出してね、「 この手にちょうどいいてぶくろをください。」 と言っててぶくろを買っておいで。」
「 うん。」
「 でもね、きつねの方の手を出してはいけませんよ。人間はとっても怖いから、きつねだと判ると捕まえられてしまいますからね。」
「 うん。」
「 行って来ます。」
子ぎつねは、町へ降りてゆきました。
「 帽子屋さんだ。」
帽子屋さんは、ほんの少しだけ扉を開けました。
子ぎつねは、扉の中から漏れる光が眩しくて、とってもビックリしてしまいまいした。
てぶくろを
ください。」
「 どんなてぶくろかな?」
子ぎつねは、扉の隙間から そ~っと手を差し出して言いました。
「 このお手々にちょうどいいてぶくろをください。」
子ぎつねは、お母さんぎつねが人間の手に変えてくれた手ではなく、キツネのままの手を差し出してしまいました。
( きつねが買い物に来たのだね。)
帽子屋さんはそう思うと、子ぎつねに こう言いました。
「 先にお金を下さい。」
子ぎつねは、お母さんからもらったお金を 帽子屋さんに渡しました。
木の葉かな?」
「 どうやら本物のお金だ。うんうん、山は寒かろう…。」
帽子屋さんは、子ぎつねの手に合いそうなてぶくろを選んで、子ぎつねに渡しました。
子ぎつねは、帽子屋さんにお礼を言うと、てぶくろを大事そうに抱えて お山に帰ってゆきました。
ただいま!」
「 おかえり。」
「 お母さん、人間って ちっとも怖くなかったよ。間違えて こっちのお手々を出しちゃったけど、帽子屋さんはてぶくろを売ってくれたし、捕まえようとしなかったもの。」
「 まぁ。」
喜ぶ子ぎつねを見て、お母さんぎつねは 呟きました。
「 人間て ほんとうに いいものかしら?」
「 いいものかしら?」
こんな感じのお話…。
私は、幼い頃から 『 てぶくろを買いに 』 が大好きなのです。
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