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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『シネマ歌舞伎 スーパー歌舞伎II ワンピース』

2016年10月26日 | 映画(わ行)
『シネマ歌舞伎 スーパー歌舞伎II ワンピース』
原作:尾田栄一郎
脚本・演出:横内謙介
演出:市川猿之助
スーパーバイザー:市川猿翁
出演:市川猿之助,市川右近,坂東巳之助,中村隼人,市川春猿,市川弘太郎,
   坂東竹三郎,市川笑三郎,市川猿弥,市川笑也,市川男女蔵,市川門之助,
   福士誠治,嘉島典俊,浅野和之他

土曜日、昼過ぎまで時間ができたので、映画を2本観ることに。
スーパー歌舞伎で『ワンピース』って、あのワンピース?
どうやらあのワンピースだと聞いて好奇心を抑えきれず。

シネマ歌舞伎は2度だけ観たことがあります。
いずれもなんばパークスシネマで、『大江戸りびんぐでっど』『野田版 鼠小僧』
今回は大阪ステーションシティシネマで鑑賞しました。

そもそも「スーパー歌舞伎」、しかも「II(セカンド)」って何?
スーパー歌舞伎は、1986(昭和61)年に三代目市川猿之助が始めた現代風歌舞伎。
いわゆる古典芸能の歌舞伎とは演出を異にしています。
スーパー歌舞伎IIは、その精神を受け継ぐ四代目市川猿之助を中心とする作品を上演。
『ワンピース』では四代目猿之助みずから演出を担当、
三代目猿之助(現・猿翁)がスーパーバイザーを務める、はっちゃけた作品。
現代の言葉遣いなので、子どもが聴いても理解できないということはありません。

1997(平成9)年に『週刊少年ジャンプ』で連載が開始されて以来、
ほぼ20年経っても不動の人気を誇りつづける『ワンピース』。
原作は発刊当時に小学生男子から無理やり貸されて(笑)、数冊読んだ程度なので、
どの部分がこのスーパー歌舞伎の舞台になっているのか定かではありませんが、
原作中でも最大の盛り上がりを見せたというウワサの「頂上戦争編」がモチーフだとか。

実際の舞台は3部構成。第1部「シャボンディ諸島&女ヶ島編」、
第2部「インペルダウン編」、第3部「マリンフォード決戦編」、〆て4時間の長丁場。
それを2時間を切るぐらいの長さに上手くまとめてスクリーンに。
市川猿之助は3つの役を1人で演じています。

シャボンディ諸島で海軍と戦っている途中、麦わらの一味は吹き飛ばされてちりぢりばらばらに。
そのうちルフィ(市川猿之助)は女ヶ島の女帝ハンコック(市川猿之助)に救われる。

そこでルフィが兄貴と慕うエース(福士誠治)が公開処刑されるという知らせを耳にする。
ルフィはエースを助けるため、海底監獄インペルダウンへと向かう。

なんとか海底監獄への侵入に成功したルフィは、ボン・クレー(坂東巳之助)と再会、
共にエース救出をしようと戦うが、監獄署長マゼラン(市川男女蔵)の攻撃を受ける。
その間にエースは処刑されるべく海軍本部へと移送されてしまう。

一方、白ひげ(市川右近)の一味もエース救出に向けて必死。
エースを巡り、海賊たちと海軍の頂上戦争が火蓋を切るのだが……。

はい、楽しかったです。
原作や歌舞伎役者の面々をもっと知っていたらもっと楽しかったはず。
舞台化粧のほどこされた顔ではイケメンかどうかの判断もつきにくいなか、
ひとり顔立ちも体つきもちがってカッコいいと思ったのがエースの人。
後からそれが福士誠治であったと知り、道理で。
しかし素顔を見たらタイプじゃない。この人は化粧顔のほうがイイかも(笑)。

とにかくド派手。
大量の水が滝のように流れるシーンにはビックリ。
急流すべり以上に合羽や傘が必要だと思われます。
ぬいぐるみが登場したり、影絵による演出があったり、宙乗りも。
映画館で観てもじゅうぶんに楽しく、生の舞台ならさらに凄いはず。

古典芸能にこんな「現代」を持ち込むことには、賛否両論あるでしょう。
でも、入るきっかけはどうあってもいい。
ますます歌舞伎が盛り上がるといいですね。

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『私が恋した泥棒』

2016年10月25日 | 映画(わ行)
『私が恋した泥棒』(原題:Monchora)
監督:サンディープ・レイ
出演:アビル・チャテルジー,シャーシュワト・チャテルジー,ライマ・セーン,
   ジューン・マリア,パラン・バネルジー他

シネ・リーブル梅田で3本ハシゴの3本目。
『クハナ!』『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』→本作。

「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン 2016」にて上映されたベンガル語の作品。
レディースデーでもこれは割引なしの1,800円也。
どうしても観たかったわけではないのですが、
このところ邦画つづきだったので、久々にインド映画に行ってみました。

それにしてもフェスティバル上映作品のデータのいい加減なこと。
本作の上映時間は95分なのに135分と表記されているし、
主人公の役名は演じた俳優の名前になっているし(ヒロインの役名は合っている)、超テキトー。(^^;

通常なら予告編が流れる時間帯は、Air Indiaとインド料理店のCMとインド観光案内。
じゅうぶんにフェスティバルっぽい。

さて本編。
主人公の役名がディなんたらだったのは覚えていたのですが、確信なく。
海外の映画データベースでちゃんと調べ直しましたからね(笑)。

インドの西ベンガル州コルカタの屋敷に暮らす女性ナンダ。
両親を早くに亡くし、家族は祖父パランと兄マヌー。
お手伝いさんは長く仕えてくれている気心の知れた老人。

ナンダは美貌の持ち主で、適齢期にさしかかっているがこれといった相手はいない。
一方のマヌーはどうしようもないボンクラで、
現在入れあげている女性リリーに手玉に取られていることに気づいていない。

この屋敷の家宝は大きなルビー。
玉座に載せて鍵のかかった部屋におさめ、パランが神を崇めるがごとく拝んでいる。
近ごろ近隣で泥棒事件が多発している模様で、
気が気でないパランは鍵を枕もとにしまい込んで毎晩就寝。

ある夜、屋敷に泥棒が入る。
門限を過ぎてこっそり帰宅したマヌーと、玄関の施錠を解いてやったお手伝いさんが、
泥棒の姿を目撃して悲鳴をあげる。パランとナンダも起こされて大騒ぎ。
ところがまだその辺にいるはずの泥棒がどこにもいない。
盗みは未遂に終わったらしく、なくなったのはキッチンにあったカツレツだけ。
一同はそれぞれ床に就く。

自室に引き上げたナンダは、クローゼットの中に隠れていた泥棒を発見。
後生だから警察には通報しないでくれというその男ディバコルの話を聞き、
ナンダは逃がしてやることに。
そればかりか、パランが求人中の秘書の職をディバコルに与えたいと思い、
翌朝まともな格好でパランに面会に来るようにと金を渡す。

命拾いしたディバコルは心を入れ替え、真面目にパランの仕事に当たる。
パランはまさか彼が泥棒だとは知るよしもなく、好青年ぶりにベタ惚れ。
ナンダもディバコルに惹かれていくのだが……。

ひと昔前のミステリー映画を観ているようで、
茶番といえば茶番なのですけれども、なんともいえない楽しさ。
ものすごいハッピーエンドなのも良いところ。

一時は、踊ってばかりのボリウッド、しばらく要らんと思っていましたが、
これは1シーンも踊るところなし。
そうなるとさびしい気がしてしまうのですから、人間って勝手です(笑)。
踊らないボリウッドが増えましたね。
次は多少なりとも踊るヤツを観てみたい。

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『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』

2016年10月24日 | 映画(た行)
『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』
監督:遠藤尚太郎

シネ・リーブル梅田で3本ハシゴの2本目。
前述の『クハナ!』の直後に。

築地市場の移転に合わせて公開時期を決めたであろうに、
まさかの盛り土問題などでこの先どうなるのか未知の築地市場。
予告編を観たときにはもうじき移転だという感慨もあったのに、
こんなドタバタのせいでちょっとシラけてしまったような。
映画の集客にも影響が出ていないかなぁと心配です。

かねてからの憧れの地ではありますが、私は行ったことがありません。

もとは日本橋魚河岸で食品流通を担ってきた市場群。
それが1923(大正12)年9月に起きた関東大震災により壊滅してしまいました。
その年末、旧外国人居留地を借り受けて臨時の東京市設魚市場をスタート。
これが築地市場の始まりなのだそうです。
本作は、そんな築地市場の舞台裏に迫るドキュメンタリーです。

漁師が釣ってきた魚をそのまま並べて売っているのではありません。
命がけで獲ってきた魚を並べるからには、売るのも手抜きなし。
良い魚を見極め、適正な価格で適切な客に売る。
築地市場で働く、魚の扱い方を熟知した職人たちの話に引き込まれます。
自らの仕事にプライドを持ち、高いプロ意識はゆらぎません。

彼らと信頼関係を築く一流の料理人とのやりとりが面白いし、
築地市場に魅せられたハーバード大学の教授の着眼点にもニヤリ。
毎日掲示される落とし物一覧。
落とした財布にお金が入ったままが出てくる国なんてと、教授は感心。

せりのシーンなども含め、築地市場を見学したような気分になれます。
仲買人のこんな言葉が印象に残りました。
「元気な人は、ちゃんと食べてる。ちゃんとしたものを、ちゃんとした気持ちで」。

移転の良い解決策が早くみつかるようにと願ってやみません。

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『クハナ!』

2016年10月23日 | 映画(か行)
『クハナ!』
監督:秦建日子
出演:松本来夢,久志本眞子,加藤清史郎,磯山さやか,山村美智,平松賢人,
   佐々木千惺,須藤理彩,多岐川裕美,風間トオル,平野貴大,湯浅浩史他

水曜日、休みを取ってシネ・リーブル梅田にて。
リーブルならばいつでもメンバー料金の1,300円で観られるから、
わざわざ水曜日に行くのは他劇場よりもお得感がないのですが、
そのほかの片づけたい用事の都合で。

この日ハシゴした3本のうち、本作以外の2本は自宅を出る前にオンライン予約済み。
1本目に観る作品を本作と『淵に立つ』のどちらにするかを到着まで決められず。
朝イチに観るにはあまりヘヴィーではないものをという理由と、
DVD化されることが確実な『淵に立つ』は観逃してもいいかという理由から、
もしかするとハズレの可能性もあるこちらに決定。
結果、これを観てよかったです。笑った、泣いた。

監督は小説家・劇作家・脚本家でもある秦建日子(たけひこ)。
“アンフェア”シリーズの原作者でもある彼の映画監督デビュー作。
三重県桑名市のご当地ムービーということで、
桑名市に縁のある人なのかと思ったら、そういうわけではなさそう。
伊勢志摩サミットの年に合わせて地方創生を目的に
オリジナル脚本を執筆することになった模様です。

私はそもそも三重県にほとんど縁がありません。
20年ほど前まではよく鈴鹿サーキットへ足を運んでいましたが、
桑名市ってどこよっちゅう感じです。
弟が何年か前まで仕事で桑名市に住んでいたことがあり、
そのせいもあって今回観てみようかという気になったのでした。

三重県桑名市にある小学校。
今年度いっぱいで廃校になることが決定している。
校長の栗山(多岐川裕美)は他の教員のとともに、
最後の年を盛り上げて行こうと児童たちに声をかける。

6年生の真珠(松本来夢)は、父親(宮本大誠)から掃除を言いつけられてゲンナリ。
部活にでも入れば放課後に掃除を命じられることもなくなるだろうと思うのだが、
なにぶん今は入りたいクラブもないし、廃校予定の学校に新設のクラブもない。
そこへ元ジャズプレイヤーの新任教師・大石(風間トオル)が赴任してきたものだから、
「とにかくなんでもいいからクラブを作ってくれ」と頼み込む。

真珠と同級生で従姉かつ親友の瑞希(久志本眞子)、
瑞希が片想い中の海斗(加藤清史郎)など11名が参加することになり、
借金清算のために仕方なくジャズの仕事に見切りをつけた大石も大張りきり。
県大会出場を目指してビッグバンドを結成するのだが……。

町は過疎化が進み、せっかく誘致した工場も本社の意向で閉鎖の危機に。
会社と組合の間に不穏な空気が流れ、まさに一触即発の状態。
大人の事情が子どもにも及び、楽しいことばかりではありません。
初恋までもが影響を受けるのですから。

そんななか、能天気な大石によって皆が引っ張られ、
音楽が町を活性化してゆく様子がとても良い。
町おこし的な低予算ムービーを想像していたら、監督の人脈なのか、
校長の出戻りの娘役に磯山さやか、真珠の母親に須藤理彩、祖母に山村美智、
市バスの運転手役にウド鈴木、各アナウンサーとして本人たちが。
須藤理彩サイコー。どれだけ笑わされたことか。

子どもたちがいかにも「演技しています」というふうなところも逆に清々しいし、
楽器に触れたこともない子どもたちが
短期間でこんな堂々のジャズ演奏をできるわけはないけれど、
そこはツッコミなしで(笑)。

一旦はじめたことをすぐやめるのはつまらんで。
音楽も人生も勝ち負けやない。
最後は泣き笑い。良かった。

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『何者』

2016年10月22日 | 映画(な行)
『何者』
監督:三浦大輔
出演:佐藤健,有村架純,二階堂ふみ,菅田将暉,岡田将生,山田孝之他

TOHOシネマズ西宮にて、前述の『永い言い訳』とハシゴ。
『永い言い訳』の原作は第153回直木賞の候補作でしたが、
こちらは第148回直木賞受賞作。
朝井リョウの原作を読んだときのレビューはこちらにUP済み。

今年引退した横浜DeNAの「ハマの番長」と同姓同名の三浦大輔監督。
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2009)、『愛の渦』(2014)、いずれも好きでした。
劇作家の監督ならではの楽しさが本作にもあります。

就職活動をせざるを得ない年齢となった大学生たち。
演劇サークルに情熱を注ぎつづけてきた二宮拓人(佐藤健)。
バンド活動をする天真爛漫な神谷光太郎(菅田将暉)。
このふたりはマンションでルームシェアしている。
光太郎の元カノで、素直で真面目な田名部瑞月(有村架純)。
瑞月の友人で拓人たちの部屋の上階に住む小早川理香(二階堂ふみ)。
理香と同棲する宮本隆良(岡田将生)。
そして拓人の良き相談相手である大学院生のサワ先輩(山田孝之)。

メジャーな人気若手俳優を揃えた作品ですが、
こうして書き出してみると、登場人物はほぼそれだけ。
この辺りも舞台っぽくないですか。

彼らは理香の部屋を“就活対策本部”と名付け、情報交換のため定期的に集まるように。
私がいちばん見たい山田孝之演じるサワ先輩はここには出入りしませんけど(笑)。
ひとり年上だというせいもあるけれど、仲良しごっこに参加しないところがまた○。

そう、情報交換とか言いながら、協力し合うふりをしているだけの仲良しごっこ。
嫌になるくらい妬みそねみがはびこっている。出し抜くことに必死。
もちろんそんな奴ばかりじゃないんですが、原作を読んだときと同じく、
嫉妬がうずまく様子は見ていて苦しい。

スマホの画面に映し出された文字が多く登場した原作。
そのまま映像化することは簡単に思えますが、それでは面白くない。
舞台を主とする劇作家の監督が、映画でなければできないこともそこに嵌め込んでいます。
原作を読んだときには理香の独壇場になると思えたシーンはそんなこともなく、
ちょっと拍子抜けした感はありますが、
その分、伏せられていた拓人の心情が露わになるシーンが面白い。

原作はそこそこ面白かったけれど、平成生まれとの感覚の違いも感じました。
その点、昭和生まれの三浦監督の映画版は、
原作よりもずっと温かみを感じるラストで、ホッ。
若者よ、がんばれ。

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