夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ハウルの動く城』

2005年01月09日 | 映画(は行)
『ハウルの動く城』
監督:宮崎駿
声の出演:倍賞千恵子,木村拓哉,美輪明宏,我修院達也,神木隆之介他

公開後50日足らずにして
すでに10人にひとりは観たという宮崎アニメの新作。
観にいった人に聞くと、ほぼ全員が「『千と千尋の神隠し』(2001)のほうがず~っといい」。
しかし、ある友人が「ぜひスクリーンで観て」と言うので、昨日ひとりで観てきました。

結論から言うと、個人的には『千と千尋』にも匹敵する大満足の一作。
対比させて観ると非常に興味深く、
やはり世間で流行っているものは観とかなあかんと再認識した作品でもあります。

18歳のソフィーが荒地の魔女に呪いをかけられ、90歳の老婆にされてしまう。
美貌の魔法使い、ハウルが暮らす城を訪れたソフィーは
住み込みの掃除婦として働くことに。

『千と千尋』で千尋が別世界に送り込まれたのに対し、
『ハウル』のソフィーはいきなり年寄りになったというだけで、
18歳のときと同じ世界にいます。
だけど、物事の見え方がまるでちがう。

冒頭、18歳のソフィーは父から受け継いだ帽子店を守る素朴な女性で、
着飾ることには興味がないかのようでした。
しかし、「私なんて今まで一度も美しかったことなんてないのに!」と
ハウルに向かって叫ぶシーンでは、
実は飲み屋で男性客にちやほやされる妹を羨ましく思っていたことがわかります。

90歳のソフィーはそんな表面的なものにとらわれることなく、
心に余裕が生まれ、多少のことには動じない。
肉体的にはすぐ疲れたり、眠くなったりするけれど、
今まで当たり前だったはずの景色に目を奪われ、美しいと感じる。
年をとったというだけで、すべての物の見え方が変わるって
スゴイことじゃないですか。

さらに、ソフィーとハウルをはじめとする、
あかの他人であった人々が、家族としての絆を築きあげていく過程がいい。
血のつながった家族を取り戻す千尋と対照的でおもしろいです。

キムタクは出色の出来で、お見それしました。
老犬、ヒンは「フ、フ、フン」と鳴いていただけなのに、
声の出演として、ちゃんと原田大二郎とクレジット。
ウケました。

「この馬鹿げた戦争を終わりにしましょう」というサリマンの言葉に、
「そ、そんなに簡単に終われるのかよ!」と心の中でツッコミましたが、
エライ人たちが「バカバカしいからやめましょ」と言えば、
戦争って簡単に終われるものなのかも、案外。

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『モナリザ・スマイル』

2005年01月06日 | 映画(ま行)
『モナリザ・スマイル』(原題:Mona Lisa Smile)
監督:マイク・ニューウェル
出演:ジュリア・ロバーツ,キルスティン・ダンスト,ジュリア・スタイルズ,
   マギー・ギレンホール,ジェニファー・グッドウィン他

1953年のアメリカ、ニューイングランド地方。
美術史を専攻するキャサリン・ワトソンは、
名門女子大のウェルズリー大学に新任助教授として迎えられる。

米国一保守的と言われるこの大学では、
卒業生とその親たちが絶対的な力を持ち、教師陣もそれには逆らえない状態。
学生たちは頭脳明晰でありながら、大学院への進学や就職は頭になく、
一刻も早く高学歴の相手を見つけて結婚することを目標にしている。

こんな大学で学生たちの自立心を育て、
教育の在り方を変えたいと長らく思っていたキャサリン。
彼女にとってウェルズリー大学で教鞭をとることは
何よりも待ち望んでいたことだった。

しかし、最初の授業の日、
テキストを完璧に予習してきた学生たちはキャサリンを舐めきっている様子。
彼女が映し出すスライドについて、学生の誰かがすべて勝手に解説し、
キャサリンは教えることすら見つけられない。
結局、教師の資格なしの烙印を押された彼女は
ボイコットの形でその日の授業終了を余儀なくされる。

うちのめされ、葛藤をくり返しながらも
なんとか自分の理想の授業を叶えていくキャサリン。
伝統を重んじる大学にとっては厄介者となった彼女に
学生たちは信頼をおくようになる。

ウェルズリー大学はヒラリー・クリントンの出身校。
彼女の自伝を基にした作品だそうです。

とっても凡庸な作品になっちゃったのですが、
注目すべき若手女優がぞろぞろ出演していて、
それだけでも見どころ十分なのではないかと。
『スパイダーマン』(2002)のヒロイン、キルスティン・ダンストや、
『セイブ・ザ・ラストダンス』(2001)でブレイクしたジュリア・スタイルズ。
ふたりとも米国では大人気の女優ですが、
オバハンぽい顔とオカメ顔で日本人ウケはイマイチな模様。
この作品ではマギー・ギレンホールが秀逸。
彼女も不思議な顔立ちで、この作品の出演若手女優はみんな、
一度見たら忘れない顔なのかもしれません。
似た顔ばっかりよりずっといいや。

コメディ作品のジュリア・ロバーツより、
こんなちょっと真面目な作品の彼女のほうが私は好き。
凡庸でも最後まで飽きずに観られるのは、やはり彼女の力なのかも。

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『ターミナル』

2005年01月03日 | 映画(た行)
『ターミナル』(原題:The Terminal)
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス,キャサリン・ゼタ=ジョーンズ,スタンリー・トゥッチ他

あけましておめでとうございます。
新年1本目は、ほんとは昨年最後にひとりで観た『ターミナル』。
あまりに話題になると拒絶反応が生じてしまう、あまのじゃく体質の私は、
『ラストサムライ』(2003)を観たのが去年12月に入ってから。
『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)はおそらく当分観ないでしょう。
この作品も「どうよ?」と思ってましたが、
役者陣に心を奪われ、観に行ってしまいました。
話題作なのであらすじもいらんでしょうが、とりあえず。

ニューヨーク、JFK空港。
東欧のクラコウジアからやってきたビクター・ナボルスキーは、
入国ゲートで取り押さえられる。
彼の渡航中にクラコウジアでクーデターが起こり、
事実上、彼の祖国は消滅したことに。
つまりはパスポートが無効になったため、アメリカに入国できないというのだ。
空港警備局の主任ディクソンは、ビクターに入国も帰国も許可せず、
しばらく国際線ターミナル内で待つようにと言い渡す。
祖国の通貨は使えず、警備員からもらった食券も紛失したビクターは、
途方に暮れたまま、改装中の67番ゲートで生活を始める。

トム・ハンクスをはじめ、役者陣がみんなピタリ。
もともと私が気になっていた役者は、ディクソン役のスタンリー・トゥッチ。
彼は『シェフとギャルソン、リストランテの夜』(1996)の監督でもあります。
意地悪だけれどどこか憎みきれない彼と、ビクターとの掛け合いは痛快。

これまで強い女性のイメージだったキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。
『シカゴ』(2002)の悪女役はまさに圧巻でした。
その彼女が演じるフライト・アテンダントがめちゃキュート。

金の稼ぎ方を覚え、英語を少しずつ覚え、生きるすべを身につけてゆくビクター。
最初は彼に構うつもりのなかったターミナル勤務の人々が
彼に力を貸し、彼から力をもらうようになってゆきます。

丸ごとセットの空港内に立ち並ぶショップには
ホントの店員さんもいるそうで、観ていて楽しい。
欲を言えば、噴水前のシーン、あのバックの音楽は大仰。
どうせあそこまでやるなら、そのあと噴水全開してほしかったかも。

ビクターがニューヨークを訪れた理由が明らかになる場面では
思わず涙。やるやん、スピルバーグ。
ジワ~ンと温まりたいとき、ぜひ観ましょう。

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