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『ウィ、シェフ!』

2023年05月13日 | 映画(あ行)
『ウィ、シェフ!』(原題:La Brigade)
監督:ルイ=ジュリアン・プティ
出演:オドレイ・ラミー,フランソワ・クリュゼ,シャンタル・ヌーヴィル他
 
料理に関わる映画はスルーできません。
仕事帰りにホイッと行ける劇場では上映していないため、どうしたものかと悩みましたが、
観逃すと後悔しそうだったから、なんばパークスシネマへ。
 
実在の女性シェフ、カトリーヌ・グロージャンをモデルにしたフランス作品。
監督は39歳の新鋭ルイ=ジュリアン・プティ、長編を撮るのはまだ2本目。
1本目の『社会の片隅で』(2018)でも主演に本作と同じオドレイ・ラミーを起用しています。
『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2018)でジルベールの妻を演じた女優ですね。
 
結論から言って、観に行って本当によかった。
原題の“La Brigade”はどういう意味かと思ったら「旅団」。
そのまま訳さなかったこの邦題は上手い。
 
メディアへの露出度が高くて超人気の美人シェフが仕切る一流フレンチレストラン
ここでスーシェフとして働くカティは、見栄えだけを気にするシェフにうんざり。
カティの料理のソースまでシェフに変えられてプッツン。
「三流の勘違いシェフのもとで働く気はない」と捨て台詞を吐いて辞める。
 
自分は引く手あまただと思いたかったが、どの店からも人手は足りていると断られてガックリ。
見かねた親友ファトゥが探してきた仕事の面接にとりあえず行くことに。
 
ところが行ってみてびっくり。そこは店ですらなかったのだ。
移民の少年たちが生活する自立支援施設で、厨房は荒れ放題、まともな機材もない。
施設長のロレンゾは、子どもたちに人気なのは缶詰のラビオリだと言い、
料理に質など求めておらず、とにかく食べられればいいという態度。
巨漢のスタッフ、サビーヌは、カティが大喧嘩したあのシェフの大ファンらしいし。
とはいうものの、他に職はないのだからここで耐えるしかなく……。
 
住み込みで子どもたちの食事を作ることになったカティは、
もともと人づきあいがいいとは言えず、ファトゥ以外には友人もいません。
しかし冒頭から決して嫌な人には思えなくて、彼女を応援したくなります。
 
少年たちはいずれも未成年で、成人するまでに就学できなければ国外へ強制退去させられます。
フランス語もまだまだ苦手な彼らと料理を通じて打ち解けてゆくカティは、
彼らがここから追い出されることがないように、なんとかしたいと思いはじめます。
 
まずはエシャロットの千切りをさせてみて、それぞれの資質を見る。
料理に興味を抱いた彼らを適材適所に配し、メインの肉を焼く人、ソースを作る人、
付け合わせを作る人、食堂のフロアでサービスする人、皿を洗う人まで決める。
それぞれの役目をサッカーに例えるところもすごくいい。
 
どこまでが事実に即した話なのか不明ですが、施設長が学校に掛け合っても、
移民が入学するようにはなかなか取り計らってもらえなかったところ、
少年たちの姿が映し出されたおかげであちこちで受け入れの提案があったようです。
メディアをあれだけ嫌っていたカティがそれを利用するのも面白い。
 
故郷で家族と暮らせるに越したことはないかもしれないけれど、
彼らの料理を食べてみたい。

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