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『ボイリング・ポイント/沸騰』

2022年07月20日 | 映画(は行)
『ボイリング・ポイント/沸騰』(原題:Boiling Point)
監督:フィリップ・バランティーニ
出演:スティーヴン・グレアム,ヴィネット・ロビンソン,ジェイソン・フレミング,アリス・フィーザム,
   ハンナ・ウォルターズ,マラカイ・カービー,ローリン・アジューフォ,レイ・パンサキ他
 
三連休の中日に観るつもりでいたのに、初日の土曜日の晩に飲み過ぎて起きられず。
最終日の月曜日に出かけるのはなんとなく面倒だなぁと思いつつ、
「映画×食べ物・飲み物」って外せないじゃないですか。
どうしても観たかったから、朝からシネ・リーブル梅田へ車で走る。
 
イギリス作品。90分ワンカットというのが話題になっています。
フィリップ・バランティーニ監督は同名の短編作品を2019年に撮っていて、その長編版が本作。
主演も短編版と同じスティーヴン・グレアム
彼のこと、ご存じですか。“ヴェノム”シリーズでちょっと気の毒で笑えるマリガン刑事役の俳優ですね。
 
ロンドンに実在する“Jones&Sons”でロケをおこなった模様。
高級レストランということなのですが、私が想像する高級店とはかなり違います。
一度に100人以上の予約を受けられるような大箱で、
店内はレストランとバーエリアに分かれ、スタッフもざっと見たところ20人はいそう。
客の服装はフォーマルなものではなく、いたってラフ。
静けさとは無縁の様相は、『ディナーラッシュ』(2001)を思い出させます。
 
そんな店のシェフを務めるのがスティーヴン・グレアム演じる主人公のアンディ。
妻とは別居中で事務所に寝泊まりする日々が続き、疲労困憊。
しかし今日はクリスマス直前の週末とあって、開店前から大忙しのレストラン。
なのにこんなときに限ってやってくる衛生管理検査官。
 
この間までは最高点の5点を獲得していたのに、
スタッフが食品用の流し台で手を洗ったとか、髭を撫でる癖があるとか、
いろんなところに駄目出しされて3点に減点されます。
でも、スタッフよりも何よりも、いちばん駄目なのはアンディ。
妻子のことで頭がいっぱいだから、日誌をつけるのをさぼっていたのが最大の減点理由。
 
フロアでは傲慢な態度を取る客、メニューにないものをSNS用に作れという自称インフルエンサー
ナッツアレルギーの彼女に今宵プロポーズしたい男性だとか、もうそりゃいろんな客で溢れかえっています。
一般客の相手で手一杯なのに、アンディの元同僚でTVで大人気のセレブシェフ、アリステアまで来店。
しかもアリステアが愛人のグルメ評論家を連れてきたものだから、厨房は大慌て。
 
てな感じで、90分ワンカット、緊迫感ありありの様子が描かれます。
 
非常に面白かったですが、愉快な作品ではありません。
なにしろ、アンディがアルコール依存症で、水を持ち歩いているのかと思いきやずっと飲酒。
スタッフを罵倒したところで、遅刻ばかりで発注も忘れるようなシェフに威厳なし。
支配人とスタッフの間のぎすぎすした空気をなんともできずにいます。
 
いけ好かない態度の支配人女性ですが、父親から継いだ店だというプレッシャーは相当なもの。
聖母のようなパティシエの助手を務める青年の袖を捲れば自傷の跡。このシーンは泣きそう。
 
客からラム肉が生焼けだと突き返されてきたサービススタッフを見て、
セコンドシェフが「ラム肉はピンクなの。生焼けじゃないと言って来い」。
客から料理を返されるのは料理人の責任だという支配人と、
料理のことをわかっちゃいない客にきちんと説明できないサービスの責任やろが、
サービスを教育できていないアンタが悪いねんと言い合うシーンはド迫力。
 
すごく素敵だと思ったのは、「千切り」をフランス語でなんと言うか。
「ジュリエンヌ」って、なんて上品な響きなんだ~。テンション上がりました。
 
ん〜、愉快ではなくともやっぱり面白かったなぁ。

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