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『メットガラ ドレスをまとった美術館』

2017年05月10日 | 映画(ま行)
『メットガラ ドレスをまとった美術館』(原題:The First Monday in May)
監督:アンドリュー・ロッシ

そろそろシネコンでは観るものがなくなってきたので、
この日はシネ・リーブル梅田へ。
ダンナが車を使わないと言うから、車で向かったけれど、さすがGW。
まだ朝9時すぎだというのに、いつも駐めるタイムズはすでに満車。
仕方なくそれよりも500円高いリパークへ。
500円高いと電車で来るべきだったかなぁと思う。でも車は楽ちん。
帰りの車内でプロ野球中継が聴けるのもいいところ。

予告編を観てとても気になっていたドキュメンタリーです。

ニューヨークのメトロポリタン美術館、略して“MET”。
1872年に開館された、由緒正しき世界最大級の美術館。

METに限らず、美術館の資料の中で衣装というものは軽視されてきました。
その一般的な見方に変革をもたらしたのが、METによるアレキサンダー・マックイーンの回顧展。
マックイーンは着る人をもアートに変えることのできる数少ない人。
METの回顧展は驚くほどの評判を呼び、衣装もアートだという考えを広げました。

そして、そんなMETで毎年5月に開催されるファッションイベント“メットガラ”。
本作では2015年のメットガラのための8カ月かけた準備に密着取材。

メットガラの模様を心ゆくまで見られることを期待していたらそうではなく。
どちらかといえばメットガラそのものよりも、
それに合わせて開幕する企画展“鏡の中の中国”の舞台裏が中心。
もっとファッションだけが見たかったと思わなくもありません。

それでも、METの理事を務めるアナ・ウィンターの一挙一動や
MET服飾部門の主任キュレーターのアンドリュー・ボルトンの奔走に目が釘付け。
メットガラのパーティーの出席者を絞る様子や席順を決める様子に苦笑い。
リアーナを招待して歌ってもらおうとしたら、
予想の倍額のギャラを要求されて、相談に応じてくれる気配なし。
アナ・ウィンターの部下がその旨をアナに説明し、
「リアーナにはとってもハイレベルのお願いが必要です。
つまり、あなたからの」と話すのが可笑しかった。
で、リアーナはもちろん出席して、「呼んでくれてありがとう」と言うてました。
いや、最初から来てって言うてるし。ギャラ安いから嫌や言うたのはアンタやし。(^^;

“鏡の中の中国”は、展示場のデザインをウォン・カーウァイも担当。
彼の『花様年華』(2000)が欧米のデザイナーたちに大人気らしい。
あれほど美しいチャイナドレスはないと、デザイナーたちが口を揃えて。

ウォン・カーウァイ監督の話はいろいろと説得力があります。
展示に資料を貸与する中国側の関係者は、
METが中国の古い資料ばかり展示しようとするのが気に入らない。
「なぜ今さら明の衣装を出すのか。現代のファッションを出さないのはなぜか」と
不満を口にする彼らに、カーウァイ監督はスッパリと、
「現代のファッションを通して何が語れるのよ。何もないやん」。
一歩前に進み出すためには、振り返らなければならない。
それは単なる郷愁などではないと言い切ります。

また、仏陀と人民服を同じ部屋に展示しようとするMET側に対しても、
カーウァイ監督は「それは駄目。中国政府に対して失礼なのではなくて
仏教徒に対して礼を失する」と言い、代替案を具体的に提示します。
政府に対して失礼なのはどうでもいいと言いたげでもあり(笑)、
駄目駄目というだけではなく、誰もが納得する案を出す監督、エライと思いました。

シェールジェニファー・ローレンスなど、
セレブの面々が企画展に沿ったファッションに身を包んで登場するのは本当に楽しい。
大御所デザイナーが伴うのは、ケイト・ハドソンアリシア・キーズ
バズ・ラーマン監督のシワの1本もないデコにも見惚れました(笑)。

素敵なドキュメンタリー。魅せられます。

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