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『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

2023年06月12日 | 映画(あ行)
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(原題:Woman Talking)
監督:サラ・ポーリー
出演:ルーニー・マーラ,クレア・フォイ,ジェシー・バックリー,ジュディス・アイヴィ,
   ベン・ウィショー,フランシス・マクドーマンド,シーラ・マッカーシー他
 
とても観たかったのにタイミングを逃していた作品。
最近とても遠く感じるTOHOシネマズ西宮へ、休日早起きした勢いで向かう。
 
原作はカナダ人作家のミリアム・トウズによる全米ベストセラー小説。
メガホンを取るのは、監督としても抜群の手腕を発揮する女優サラ・ポーリー
本作では脚本も自身が担当し、第95回アカデミー賞の脚色賞を受賞しています。
 
実話が基って、いつの時代の話かと思ったら2010年だというではないですか。
100年前の話と聞けば納得できるけど、21世紀にこんな村があるとは。
 
人々が自給自足の生活を送るあるコミュニティで、レイプ事件が発生。
今に限ったことではなく、ずいぶん前から起きていたこと。
女性が家畜用の鎮静剤を打たれて眠っている間に被害に遭い、
妊娠して誰の子だかわからぬまま出産という状況が日常化している。
 
女性の妄想だとか悪魔の所業だとして片付けられてきたが、
ある日ようやく現場から逃げ去ろうとする犯人を取り押さえ、
共犯者の名前も明らかになり、コミュニティの男たちが次々と連行される。
しかしじきに彼らは釈放されて戻ってくるだろう。
 
女性たちは選択を迫られる。
このまま何もしないか、徹底的に闘うか、ここから出て行くか。
投票の結果、何もしない派は少数で、残り2つから選ぶことに。
全員で話し合っても埒が明かないからと、選択は3家族の女性に任されるのだが……。
 
鑑賞後に調べたところによると、“メノナイト”というキリスト教の一派に属するコミュニティだそうですね。
こんな差別的な宗教があっていいのかと思うほど、男尊女卑がはっきりしています。
女性は読み書きを学ぶことも許されず、だから投票するのも大変。
自分たちが出て行くのではなくて、男性たちに「出て行って」とお願いする選択肢もあるはずだけど、
今まで男性に何か頼んだことなどないから、最初で最後のお願いがそれだなんてと自虐的に笑う。
 
そんなコミュニティでは男性に刃向かえば神が許さないと思う人も多い。
自分も、自分の娘までもレイプされているというのに何も言えないなんて、そんなことがありますか。
 
女性たちの話し合いの場で中心となるルーニー・マーラが落ち着いていて美しい。
彼女もまたレイプされて、出産の日も近い。だけどお腹の子は憎くない。大事に大事に想う。
彼女と違う意見を持つクレア・フォイジェシー・バックリーとのやりとりも見ものです。
また、この話し合いに男性で唯一、筆記係として参加するベン・ウィショーも素晴らしい。
彼を見ていて泣いてしまいました。
 
話して、話して、話して、彼女たちがたどり着いた結論。
「逃げる」ことと「出て行く」ことは違う。
世界のどこかで常に起きている戦争にサラ・ポーリーが物申しているようにも思えます。

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