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『ナチュラルウーマン』

2018年03月24日 | 映画(な行)
『ナチュラルウーマン』(原題:Una Mujer Fantastica)
監督:セバスティアン・レリオ
出演:ダニエラ・ベガ,フランシスコ・レジェス,ルイス・ニェッコ他

前述の『リメンバー・ミー』とハシゴ。
無理のないハシゴを心がけた結果、間がやけに空いてしまい、
お腹もすいたことだしと阪急百貨店地階へ。
軽く食事のはずがひとりで昼酒まで。
これでは体に優しいハシゴなのかどうかわかりません。(^^;
若干酔っぱらってテアトル梅田へ。

先日発表された第90回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したチリ作品。

トランスジェンダーのマリーナは、ウェイトレスとナイトクラブの歌手を掛け持ち。
初老の恋人オルランドと同棲し、幸せな日々を送っていたが、
ある晩、オルランドが突然体調不良を訴え、
マリーナが病院に運ぶもそのまま亡くなってしまう。

医師からは身内なのかと尋ねられ、恋人だと答えるが、奇異な顔を向けられる。
現れた女刑事は、いかに自分が「この手の人たち」に詳しいかを語る。
死亡直前に諍いはなかったか、暴力を振るわれて逆に殺したのではと疑われる始末。

オルランドの弟ガボに連絡を取ると、親族にはガボから知らせるとのこと。
やがてオルランドの妻から電話があり、車を返してほしいと言われる。
息子も押しかけてきて、早く家を出て行けと怒鳴られ……。

マリーナ役は自身もトランスジェンダーの歌手ダニエラ・ベガ。
『アバウト・レイ 16歳の決断』を観たとき、
トランスジェンダーの役をトランスジェンダーではないエル・ファニングが演じていることが非難されているのを知り、
別にそうじゃない人が演じたってええやんと思ったのですが、
本作を見ると、その非難も的を射ているのかもしれないと思い直しました。

男の身体に生まれついたけれど自分は女だ。
でも、味方となってくれる人はごくわずか。
街を歩けばオカマと嘲笑われ罵られ、手を差し伸べてくれる人はいない。
ガボだけが唯一理解を示してくれるけれども、
そんなガボからも親族の前に姿を見せないように諭されるだけ。
彼らの態度は本当にひどい。
だけど、自分の夫が、父親が、自分は女だという男性と一緒に暮らすために家を出て、
その相手に看取られて亡くなったのだと知ったら、どう気持ちの整理をつけるのか。

性別適合手術を受けても、声は変えられないのですよね。
声帯の手術も可能なようですが、ずいぶん過酷らしい。
いくら心が女性で見た目も女性になっても、
発せられるのが男の話し声だったら、私もやっぱり驚いてしまうかもしれません。
自分に偏見はないつもりでも、好奇の目を向けられたと思わせてしまうかも。

あるがままの自分を見せて、あるがままを受け入れてもらうこと。
まだまだ偏見は多すぎて生きづらい。
マリーナの歌声が切なく響きます。
最初と最後にかかるアラン・パーソンズ・プロジェクトの“Time”が凄くよかった。

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