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映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『味園ユニバース』

2015年02月25日 | 映画(ま行)
『味園ユニバース』
監督:山下敦弘
出演:渋谷すばる,二階堂ふみ,鈴木紗理奈,川原克己,松岡依都美,
   宇野祥平,松澤匠,野口貴史,康すおん,赤犬他

TOHOシネマズなんばへ行くときは、日本橋のコインパーキングに駐車します。
そこから劇場へ向かってテクテク歩くときに通る、大阪・千日前の味園ビル前。
だから、本作を観るならばなんばで、と固く心に誓っていましたが、
昼から休みを取った先週の月曜日、梅田でも上映してるんやから梅田でええがなと。
いとも簡単に崩れる決意。TOHOシネマズ梅田にて。

さて、『ばかのハコ船』(2002)と『リアリズムの宿』(2003)から気になりはじめ、
『松ヶ根乱射事件』(2006)で新井浩文に注目するとともに凄い監督だと思い、
『天然コケッコー』(2007)のDVDを購入して、
『苦役列車』(2012)でやっぱり好きだわと思った山下敦弘監督。
本作は大阪が舞台ということもありますが、山下監督の作品は外せません。

事件を起こして服役中だった茂雄(渋谷すばる)は、
刑期を終えて出所した日、何者かに殴打されて気を失う。
目覚めたときには記憶が飛び、自分の名前さえ思い出せなくなっていた。

公園で眠る茂雄の耳に聞こえてくる音楽。
それに引かれて歩いてゆくと、バンド“赤犬”のステージが繰り広げられていた。
茂雄は突然ボーカルのマイクを奪い取ると、和田アキ子の“古い日記”を熱唱。
度肝を抜く歌声に聴衆は大喜び、しかし歌い終わった茂雄はバタンと倒れる。

赤犬のマネージャーで小さなスタジオを営むカスミ(二階堂ふみ)は茂雄を連れ帰り、
医者のマキコ(鈴木紗理奈)に診せる。
マキコの紹介で病院へ行き、CT検査を受けさせると、脳に異常はなし、
一時的な記憶喪失に陥っている可能性があるらしい。

「ゆっくりやったらええがな」。カスミは名前のわからない茂雄をポチ雄と呼び、
居候させる代わりに仕事を手伝え、そして歌えと言う。
ポチ雄の歌に引っ張られ、赤犬の面々も練習に精を出すように。
ボケ気味のカスミの祖父・耕太郎(野口貴史)とも折り合いよく、
ポチ雄はかつての茂雄とは別人の生活に馴染んでゆくのだが……。

『エイトレンジャー2』(2014)は観ていたというものの、
アイドル系男子も女子もまったくわからん私は、
数週間前の『The Covers』を観るまで「シブヤスバル」だと思い込んでいました。
シブタニくんだったのですね。失礼しました。
ジャニーズ系はみんな歌下手だと思っていたのに、これも誤りですみません。

心に染み入る彼の歌『記憶』。アップテンポの『ココロオドレバ』と両方◎。
ステージに戻ってきた茂雄になんらかの台詞を言わせたり、
子どもを引き取ってやり直すところを盛り込んだりするほうが、
巷のレビューでは高い評価を得たかもしれません。
だけど私はこのラストが大好き。多くを見せずとも、希望を感じさせます。

小ネタですが、ひそひそ声で話す医師役がいまおかしんじで笑いました。
そう、私が観るのを途中で挫折した映画の監督です。
もうひとつ小ネタ。『The Covers』の埋もれ歌のコーナーで、
リリーさんがデーモン閣下が歌う“赤いスイートピー”を紹介していて、
本作ですばるくんが同曲を歌うシーンがあり、これは偶然かと笑い。

後日、渋谷くんが宣伝のために出た番組でほとんど無言状態になり、
放送事故かと問題になったというトピックが目に留まりました。
ものすごく人見知りなせいであんなことになったらしいですが、
私は本作と『The Covers』を観て一気に彼のファンになってしまいました。
もろ愛想のない、私の好きなタイプ(笑)。
彼は愛想がないといっても、決して感じが悪いわけではない。
実際、リリーさんや夏菜ちゃんの質問には、訥々と、
でも言葉を選びながら一所懸命、かつ楽しそうに応えていましたもの。

記憶を失っても、音楽の記憶は失われない。
『パーソナル・ソング』はやはり本当なのかも。
歌が魂を救う。

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