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『お隣さんはヒトラー?』

2024年10月02日 | 映画(あ行)
『お隣さんはヒトラー?』(原題:My Neighbor Adolf)
監督:レオン・プルドフスキー
出演:デヴィッド・ヘイマン,ウド・キア,オリヴィア・シルハヴィ,キネレト・ペレド他
 
塚口サンサン劇場はロードショー作品を公開するかたわら、
こうしてちょっとだけ遅れて「あれ観たかったのよ」という作品も上映してくれるのがありがたい。
数カ月前に大阪市内で見逃していたイスラエル/ポーランド作品を鑑賞することができました。
 
ポーランド系ユダヤ人のマレク・ポルスキーは、ホロコーストで家族全員を失う。
ひとり生き延びた彼は、1960年、南米コロンビアの町外れの一軒家で暮らしている。
チェスを除けば、妻が好きだった黒いバラの手入れにしか興味が持てない。
 
ある日、長らく空き家だった隣家にドイツ人のヘルマン・ハルツォーグが越してくる。
その飼い犬がマレク宅に勝手に侵入して粗相したことに腹を立て、ヘルマンに文句を言いに行って呆然。
ヘルマンは戦前のチェス大会で見かけたアドルフ・ヒトラーと瓜二つだったのだ。
 
隣家の事務諸手続きをおこなうカルテンブルナー夫人はまるでゲシュタポの弁護士のようだし、
最近ニュースでアドルフ・アイヒマンが捕縛されたと言っていた。
隣家の住人は実はヒトラーで、身を隠すためにここに来たに違いないとマレクは考える。
 
さっそくイスラエル大使館へ乗り込んだマレクは、隣人は絶対にヒトラーだから捕まえろと主張。
しかし担当の情報局責任者は、ヒトラーは死亡していると言って取り合ってくれない。
ヘルマンがヒトラーである証拠を掴むため、マレクは隣人をひそかに調査しはじめるのだが……。
 
冒頭に映し出されるのは、1930年代初めのポルスキー一家の幸せそうな様子。
大家族が集まって、慣れないカメラに戸惑いながら記念撮影。
次に映るのはすっかり偏屈になったマレクがオンボロ一軒家でひとり過ごすところ。
 
ヒトラーは1945年に死んだと聞いても受け入れられないマレクは、
家族全員を奪ったヒトラーをとっ捕まえて償わせたい。
隣人がヒトラーであると証明することが彼の生き甲斐となります。
そのために、ヘルマンに絵を描かせたり字を書かせたりしようとする。
ところが、ヒトラーは嫌煙家で酒も飲まないはずだったのに、ヘルマンはそうじゃない。
あれれ違うのかなという思いがよぎるも、マレクとしては彼がヒトラーであってほしいわけです。
 
終盤に明らかになる事実。
ネタバレになりますが、ヘルマンはヒトラーのボディダブル(=影武者)でした。
ヒトラーと似ているというだけで徹底的に彼の真似をさせられ、なりきることを命じられる。
顔も表情も仕草も、言動のすべてをヒトラーのように。
 
戦争に翻弄されたのは自分だけではなかったとマレクは知ります。
しかし自分が大使館に乗り込んだせいで、やがてヘルマンが戦犯者として終われることに。
 
マレク役のデヴィッド・ヘイマン、ヘルマン役のウド・キア、どちらも凄くよかった。
別れが切ない。

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