夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『シュリ』【デジタルリマスター版】

2024年10月04日 | 映画(さ行)
『シュリ』(英題:Swiri)
監督:カン・ジェギュ
出演:ハン・ソッキュ,キム・ユンジン,チェ・ミンシク,ソン・ガンホ,ユン・ジュサン,パク・ヨンウ他
 
10月24日をもって営業を終了してしまうシネマート心斎橋にて。
韓国映画といえばここと思うぐらいで、いつもよく客が入っている印象だったから、
この閉館は本当に驚きだし、とても寂しいことです。
この日も平日の昼間にもかかわらず8割方客席が埋まっていました。
 
カン・ジェギュ監督の名を不動のものにした『シュリ』(1999)のデジタルリマスター版。
本国韓国では『タイタニック』(1997)の動員記録を塗り替えたとして大変話題に。
日本で韓国作品が当たることはまだなかった時代、異例の大ヒットを飛ばしました。
 
韓国では1993年以降毎年、要人の暗殺事件が起きている。
事件には北朝鮮のイ・バンヒなる女性狙撃手が関わっていると見られ、
韓国の情報部員ジュンウォン(ハン・ソッキュ)とその相棒イ・ジャンギル(ソン・ガンホ)が追う。
 
やがて、イ・バンヒが北朝鮮随一の精鋭部隊に所属することが判明。
同じ部隊のリーダーは皮肉にもかつてジュンウォンが取り逃がしたパク・ムヨン(チェ・ミンシク)だった。
 
ムヨンらの狙いは韓国の科学研究所が開発した液体爆弾CTX。これを強奪してテロを企んでいるらしい。
両国首脳が列席するサッカー南北交流試合を舞台に選んでいることにジュンウォンは気づき……。
 
ジュンウォンとジャンギルの行動が敵に筒抜けになっていて、内通者がいることを疑います。
情報部員とは悲しいもので、相棒のことすら疑わざるをえない。
誰が裏切り者なのかと思っていたら、ジュンウォンの婚約者イ・ミョンヒョン(キム・ユンジン)でしたというもの。
 
ハン・ソッキュがそんなに男前とは言えないので、これ、イ・ビョンホンのほうがよかったかなと今さら思う(笑)。
今も昔もこんな役のチェ・ミンシクはあまり歳を取ったと思えないけれど、
ソン・ガンホはめちゃくちゃ若いですよねぇ。30年経つんだから当たり前か。
 
いま観てもとても面白い。
出演していることに気づけなかった俳優もいそうなので、公開中にもういっぺん観たいです。

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『本日公休』

2024年10月04日 | 映画(は行)
『本日公休』(原題:本日公休)
監督:フー・ティエンユー
出演:ルー・シャオフェン,フー・モンボー,ファン・ジーヨウ,アニー・チェン,
   シー・ミンシュアイ,リン・ボーホン,チェン・ボーリン他
 
9月2度目の3連休に予定を詰め込みすぎなのがわかっていたので、
週明けの火曜日も前もって有休を申請し、朝ちょっとゆっくりすることに。
ところがふと映画の上映スケジュールを見ると、前週末に公開になったばかりの本作が1日2回の上映のみ。しかも朝イチと昼間。
どうしても観たかったので、8時すぎに家を出てテアトル梅田に行くべしだったのに、そんなに早起きできませんでした。
あきらめようと思ったけれど、9時すぎに出発すればシネマート心斎橋の上映に間に合うじゃあないか。
 
というわけで、まだ通勤ラッシュで渋滞気味の新御を走り抜け、なんとか本編開始前に到着。
台湾の俊英と言われるフー・ティエンユー監督による温かい作品です。
 
台中の下町で理髪店を営んで40年になる女性アールイ(ルー・シャオフェン)。
夫を亡くし、3人の子どもたちは独立して家を出ている。
 
都会の美容院に勤務する長女リン(ファン・ジーヨウ)はバツイチ。
車の修理工場を営むチュアン(フー・モンボー)と結婚して息子アンアンも授かったのに離婚。
次女シン(アニー・チェン)はスタイリストとして撮影現場でてんてこ舞い。
長男ナン(シー・ミンシュアイ)は近所に住んでいるものの、楽して儲けることばかり考えては失敗。
今は太陽光パネルで一儲けしようと実家への設置を母親に勧めるが、アールイは素っ気ない。
 
ある日、シンが実家に戻ると母親がいない。
表に「本日公休」の札を掛けて車で出かけたようだが、スマホを置き忘れている。
それを聞いてナンも実家にやってくるが、母親の居場所に心当たりなし。
ふたりして仕事中のリンに電話をかけると、弟妹両方からの連絡にリンは何事かと怒り出し……。
 
というのが冒頭のシーン。アールイの行動があきらかになったのちにまたこのシーンに戻ります。
 
序盤の、開店前から戸をがんがん叩いて駆け込んでくる老人とのやりとりでもう涙目。
「こんな朝早くからどうしたんですか」と尋ねるアールイに、
「亡くなった女房が夢に出てきて、あなたの髪がそんなに白くなっちゃったらあなただとわからないと言われた、
あの世で会ったときに女房に見つけてもらえるように、髪を染めてほしい」ですから。
 
さてさて、場面が変わると、アールイの商売の仕方がなんとも古くて娘たちは呆れてばかり。
電話帳を繰りながら、常連客ひとりひとりに連絡を取り、「そろそろ散髪する頃ですよ」。
勤務先の美容院で顧客の奪い合いに悩むリン曰く、女の客が面倒くさい。
男の客は一旦担当が決まればそのままを通すから、アールイは安泰らしく。
実際、アールイの店の客たちはみんないたって素直だし、客同士みんな仲良し。
散髪が終わるとその場でラーメンをすすっていたりして、どんなのどかやねんと思う(笑)。
 
リンの元夫チュアンがこのうえなくいい奴で、離婚後も孫を見せるために父子そろって散髪にやってきます。
アールイがリンとチュアンの復縁を願うのも当然だし、リンよりむしろチュアンを信頼している。
だから、子どもたちが誰も母親の行方を知らないというのに、チュアンだけは知っています。
 
チュアンが言うには、アールイは常連客だった歯医者の出張散髪に出かけていると。
歯医者宅に電話をしたらその娘が出て、父親は病床にあって散髪に行ける状態ではないと言う。
それを聞いたアールイは、出張散髪に行こうと決めるのです。
 
弟が長らくかよっていた美容院へ散髪に行きたいと言い、ひとりでは車の運転が心配だからと私が付き添い。
最期の散髪になるであろうことを覚悟していた弟のことを思い出すとやっぱり泣けてきます。
私は自分がお世話になっていた美容院には申し訳なくも失礼して、
あれからずっと、弟の髪を切ってくれていた美容師さんのところへかよっています。
 
商売のあり方、人としての心のあり方を考えさせられる作品でした。

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