『ディリリとパリの時間旅行』(原題:Dilili a Paris)
監督:ミッシェル・オスロ
声の出演:プリュネル・シャルル=アンブロン,エンゾ・ラツィト,ナタリー・デセイ他
数年前までは終業後に梅田まで車を飛ばして映画を観るのも平気でしたが、
今は気合いを入れないとホントに無理。
でもこのアニメーションはどうしても観たかったから、頑張れました。
シネ・リーブル梅田にて。
フランス/ベルギー/ドイツ作品。
『キリクと魔女』(1998)、『夜のとばりの物語』(2010)のミッシェル・オスロ監督。
アニメの手法などはまったくわからない私ですが、
オスロ監督の絵は美しく幻想的で大好きです。
背景は実写っぽいなと思ったら、監督自身が撮りためた建造物の写真なのだそうな。
斎藤工が声を担当する吹替版と迷ったけれど、まずは字幕版を。
ベルエポック(19世紀末から第一次世界大戦勃発頃まで)のパリ。
ニューカレドニアからやってきたカナック族の少女ディリリ。
金持ち相手の興行で原始的生活を演じて見世物になっているが、
伯爵夫人と出会ったおかげでフランス語教師にも恵まれ、良い生活を送っている。
そんな彼女に声をかけたのは配達人の青年オレル。
流暢なフランス語を話すディリリにまず驚き、
パリは自分の庭のようなものだから案内しようと言う。
好奇心旺盛なディリリはすぐにオレルと親しくなり、
彼の三輪車に乗せてもらってあちこちを走り回る。
巷で話題になっているのが少女ばかりを狙った誘拐事件。
地下で暗躍する男性支配団という謎の組織の仕業らしい。
自らも犯人に狙われているとわかったディリリは、
拉致監禁されている少女たちを救うべく、事件の解決に乗り出すのだが……。
事件の真相は信じたくない悲惨なもの。
当時はこういう考えを持つ人がたくさんいたのでしょう。
事件が悲惨なだけに、ディリリの奮闘と活躍がより光ります。
そして何より楽しいのは、顔の広いオレルのおかげで
事件解決に協力を惜しまない著名な文化人たち。
最初、本作のあらすじを聞いたとき、
文化人がいっぱい出てきたところで私の知らない人ばかりでは?
だったら寝てしまうかもなぁと心配でした。
でも、私でも知っている人ばかり。
モネとルノワールが並んで絵を描いているかと思えば、
若き画家のたまり場となっていたアトリエにはマティスやピカソ。
ロダンの邸宅にもおじゃまします。
キャバレー“ムーラン・ルージュ”にはロートレック。
バーでピアノを弾きはじめるのはエリック・サティ。
オペラ歌手エマ・カルヴェのお針子を務めるのはポール・ポワレ。
頭を突き合わせて事件解決方法を探るのは、
キュリー夫人、サラ・ベルナール、カミーユ・クローデル。
マルセル・プルーストにもずいぶん世話になります。
飛行船を設計するのはサントス=デュモン。あ、この人は知らなんだ。
エッフェル塔やグラン・パレなどを見ているのも楽しくて、
行ったことのないパリに行った気分に。
パリのいいところばかりではなく、怪しい地域も描いているのがいい。
とにかくみんなこの素敵な世界を見て見て!と思うのです。
梅田まで必死のぱっちで行ってよかった。