世界ボクシング評議会(WBC)フライ級タイトル戦
内藤大助vs亀田大毅
2007年10月11日ー有明コロシアム
亀田選手の反則行為
*下腹部への攻撃。(ロー・ブロー)
*相手を両腕でホールドし動きを止める。(ホールディング・クリンチ)
*頭部を使っての攻撃。(ヘッド・バッティング)
*目潰しを目的としたもの。(サミング)
*ダウンした選手に対する攻撃。さらに両者ダウン後のもつれた形での膠着。
そして、一番問題なのが
*ホールド後に持ち上げ投げ飛ばそうとしたレスリング行為。
このブログをお読みになられている方の中で、映画「ミリオンダラー・ベイビー」をご覧になられた方ならお分かりと思うが、ボクシングにとっての反則は、その後の選手生命のみならず、その後の人生を大きく狂わせる可能性を持っている。
ボクシングそのものが危険なスポーツなのに、もしも何の準備もしていない選手がいきなり投げ飛ばされ、何が起きたのか分からないままに反射的に立ち上がり、立ち上がりざまのガードのない状態で、不意打ちにストレートが顔面にヒットした時の衝撃度を想像して欲しい。
ボクシングのルールは、試合を円滑にかつ公正に進行させる目的のほかに、生命の危険を守るためにもある。
そのルールの意味を認識せずにリングに立つなら、それはスポーツではない。
たしかに、プロ・ボクサーの使命として、多くのお客さんの来場や、社会からの注目度は不可欠である。
そのため、あえて亀田家と言うカテゴリーの中で、悪態をついたり、スポーツとしてボクシングを見る側からは、陳腐にしか見えないパフォーマンスに徹することも良いと思う。(下品を喜ぶ格闘ファンが多いことも、周知の事実ではある。)
日本人ボクサーとして、初のヒールとしての立場からのアプローチを否定もしないし、世間がボクシングそのものに目を向けさせるために時には、そうした試みがあっても良いと思う。(本人達はそれを望んではいないと思うが・・・。)
ただし、リング内では別の話だ。
私はモハメド・アリ選手を高く評価するが、マイク・タイソン選手はボクシング界の汚点だと思っている。
リング外のモハメド・アリ選手の言動は不愉快に見えて、誰もがあこがれた。
本当のアリ選手の全盛期は、フィルムの世界でしか知らないが、ジョージ・ファーマン選手に勝ったあのキンシャサでの試合(1974年10月30日)を、子供ながらライブ映像で見た記憶と感動は生涯忘れない。
(後にドキュメント映画として日本で公開された時には、石川県ではマニアック過ぎて上映されず大阪まで見に行った。~BS2でも放送済。)
亀田興毅選手が、世間で注目された頃に、またアリの物真似選手がでてきたと思った記憶がある。
「有言実行。」自分で自分を追い込んで必ず勝つ。
「大言壮語。」世間の注目を一身に集めプロとしての存在感を示す。
亀田興毅選手は茨の道を選んだなと感じた。
しかし、ボクサーにとっての答えはリングの中にある。
全盛期のアリ選手のボクシング・スタイル(徴兵拒否も含め)が闘争芸術なら、晩年のアリ選手のボクシング・スタイルは禅問答だった。
しかし、亀田家の選手達に言葉にできるスタイルを見つけられない。
亀田家と言うカテゴリーの中にはモハメド・アリを見つけることはできない。
亀田家と言うカテゴリーの中にはブッチャーやシーク、シンのにおいがする。
亀田家というカテゴリーは、ビー・バップ・ハイスクールの世界である。
無茶苦茶な文体になったが、亀田家と言うカテゴリーは、ボクシング界にとって無茶苦茶な位置になろうとしている。
しかし、亀田三兄弟のボクサーとしての品格は薄いが、素質は高い。
また、これほどボクシングの本質(ルールの中での真剣勝負)が問われたことは、過去に例がない。
できることなら、亀田三兄弟には、別々のトレーナーと、別々な放送局がつき、それぞれの挑戦を見て見たい気もする。
また、活躍の場を国内に限定しなくても良いだろう。
ただし、大毅選手はJCBの判断に従うことは当然だし、興毅選手は今の姿勢を続けたいなら、負けることが許されない。
・・・しんどいだろうな。
しかし、それは本人が選んだ道なのだから迷わずその道を進んで欲しい。
内藤大助選手は、亀田大毅選手とは違い終始大人の対応をとった。
ほんとに、内藤選手のもつイメージは労働階級の近所のお兄さんの雰囲気で、気さくで、おしゃべり上手で、柔和なタイプはこれまでのボクサーとは違ったファンを獲得したと感じる。
2007年7月18日。タイの英雄的ボクサー、ポンサックレック選手に三度目の挑戦で王座をもぎ取り念願をかなえた。
ポンサックレック選手の戦跡は67戦64勝(33KO)3敗。
タイトルは、2001年3月から17度の防衛。(内、日本人との防衛線は延べ8回。)
たぶん、次の試合は、このポンサックレック選手との再戦と言われている。
場所はタイ国内。相手選手の年齢は30歳。勝つのは難しいかもしれない。
しかし、ポンサックレック選手を破り、来年の春にでも、東京か大阪のドーム球場で兄の興毅選手との世界戦が実現すれば、それこそ世紀の大一番になる。
ファンとは勝手なもので次々と妄想に駆られながら、宣伝媒体に煽られ、プロである貴方達に要求を突きつける。しかし、それに答えるのも一流の証。
などと書くのは、ワガママの極みか?
【平均視聴率】
内藤大助vs亀田大毅戦の平均視聴率は、関東地区で28・0%。関西地区で32・3%、中京地区で29・8%を記録した。
亀田選手の地元関西地区で高い数字が目立ち、各地区でボクシングの試合としては高視聴率を示している。
この試合の私の感想。
11日の夜は、東京のホテルに入ったのが8時20分頃。
部屋に入って、テレビをつけたら9ラウンドの途中だった。
試合内容は、翌日のスポーツ紙や友人からのメールである程度は把握している。
友人の話では、亀田選手のファイト・スタイルは終始変わらず、固いガードに腰が引けた完全な守りの姿勢の中での一発狙い。
内藤選手は、亀田選手の強打を恐れてか、距離をとって足を使いながらも伸びる軽いパンチで採点を稼ぐスタイル。
始まる前のセレモニーや緊張感とは裏腹に、1Rから余り派手な打ち合いもなく、見ている側からするとイライラする試合展開だったと聞く。
私自身も短い時間だったが、これといった決め手のない奥の浅いボクシングを見せられているといった感想を持っている。