11月を顧みて

2006-11-30 23:58:40 | ・今月のまとめ
気持ち千々乱れた霜月ではあったけれど、
最後の最後、印象深かった11月30日のことを書き残しておきます。
国分寺にある殿ケ谷戸庭園に訪れました。
ここは数ある庭園の中でも特に私の一番のお気に入りです。
写真では鮮やかな色合いや奥行き感がうまく出ませんが、
それはそれはとても美しく、眺め見渡していると命が洗われるのです。

「緑と水のひろば」という冊子が東京都公園協会から出ています。
゛洋館と薔薇の庭が特集の春号43spring.2006゛がほしくて、
「バックナンバーはないですか」と窓口でお尋ねしたところ、
男性が「ちょっと待ってね。」と、事務所の奥から取り出してくれました。
あいにく私の財布には壱万円札しかなく、「すみません。」と差し出すと、
「お釣りがないので、どうぞ持っていってください。
また今度来たときで構わないですから。」と、おっしゃってくださいました。
それでは申し訳なく、どうにか50円玉と10円5枚をかき集めて100円。
時間があれば、どこかでお札を崩すこともできたのですが、
この後の武蔵小金井に移動して、たてもの園での集合時間も迫っていたので、
お言葉に甘えることにしました。頭を下げて、急いで駅に向かいました。
その場のご親切が心に沁みて、とてもうれしい出来事でした。
ますます殿ケ谷戸庭園にこれからも訪れたくなりました。
この次、ぜったい忘れずに残りの100円お支払いします。
どうもありがとうございました。
この号は、米山先生の書かれた薔薇にまつわる
古河庭園と鳩山会館の文章が記載されているのです。
買いそびれていて、どうしても手に入れたかったのでよろこびひとしおです。

そんなことがあって、向かったたてもの園での見学会も、
色づく木々の葉っぱがはらはらと舞い落ちるなか、
しみじみと季節を感じながら、いくつかのこだわり空間を堪能した時間でした。
今年は、たてもの園には、春、夏、秋と表情が違うそれぞれの季節に
三度も訪れることができて、味わい深くとても幸せでした。
そして、そこにはいつも米山先生のお姿があり、
建物に関するきめ細やかな解説などを伺えて、うれしく楽しく学習できました。

そして、この11月最後の日はもうひとつ感動的なことが待ち受けていたのです。
たてもの園の見学会後、恵比寿にある東京都写真美術館の展覧会に立ち寄ったら、
ここでもとてもうれしいイイことがあったのです。
「東京のランドマークを写そう・私たちが未来に残したい東京の建物」という
小中学生対象の写真コンテストが二階のフロアーで開催、展示されていました。
子どもたち自身がカメラを通してとらえた東京の建物が、
本人のコメントと共にパネルで展示紹介されていました。どれも力作揃いです。
コンテストの審査員は福原義春写真美術館館長や写真家さんなどと
おなじみ江戸東京博物館助教授の米山勇先生でした。

ある女子中学生が写した一枚の歴史ある建物写真。
そこには病院で療養中の母を思う優しい心が込められていました。
昭和初期の重厚な建物とその向こうにそびえる超高層ビル、
ほほえましい母娘の姿にも重ねて、
「撮影者のきれいな心が伝わる写真です。」と、
それは米山先生らしいお心の映しだされた的確でステキなコメント評でした。
なので写真と共にその文を読んでいて、私もあたたかい気持ちになりました。
このようなコメントをもらったこと、少女の心に清らかに残ると思います。
実はこの展示は本日が最終日だったのです。見ることができてヨカッタです。
思いがけずハートウォームな贈り物を頂き感激しました。
どうもありがとうございました。
「私って運がいいわぁ。」と、つぶやいたのでした。

米山先生~今日は寒かった上に、お具合がすぐれないところの見学会、
お疲れさまでございました。どうもありがとうございました。内容ヨカッタ◎。
朝カル講座は既に朝カルの雰囲気、良さが育っていますね。そう思います。
お風邪どうかお大事になさってください。早くよくなりますように。
まだ江戸博の語りあう対談もありますし、都市デザインの単発講座も
(当選しますように)残っていますので、引き続き楽しみにしていま~す。


ラランデ邸がやってくる。

2006-11-30 23:55:25 | ・大好き☆建築あれこれ
落ち葉をいっぱい集めたプールへ、ドプ~ン、泳ぎます。
そりゃ、めっちゃ楽しぞ。私もやりたいくらい。
子どもたちが大喜びの笑顔の仕掛け、色々と考えてくださってますね。

この場所には、数年後、おそらく決定★の
明治の洋館、三島邸(旧デ・ラランデ邸)が復元・建造、お目見えする。
堀口さんの小出邸の前です。ゾーンに関係なく独立性を持たせる。

耳にした情報が、三島違いなのに、由紀夫の「鏡子の家」と???
彼女の家は確かに四谷信濃町にあるのだけれど。関連が気になる。

今週土曜日、両国の江戸博ホールで関連のセミナーがあります。
直接たてもの園に電話して問い合わせたらよろしいかと思います。
tel.042-388-3300
当日のダイレクト参加もきっと大丈夫でしょう。
きっとおもしろいお話伺えます。私も行きます、みなさん、行きましょう。

横一列並んで。

2006-11-30 23:50:01 | ・お気に入り空間・街並み
常盤台写真場の合理的な子ども室、ここで並んで勉強します。
なかよし四人兄弟姉妹だったのかな。なんて想像したり。
南向きの大きな窓からはたっぷりと光も入って・・・
気持ちよすぎてつい居眠りしちゃうかも。
でも、そしたらきっと隣のアニキが声かけてくれるね。
「おい、起きろよ。」

Rの饗宴

2006-11-30 23:47:41 | ・大好き☆建築あれこれ
「見学で学ぶ近代建築」 朝日カルチャーセンター
講師は江戸博助教授・建築史家の米山先生です。
江戸東京たてもの園の常盤台写真場に私は初めて足を踏み入れた。
新鮮なモダンさにけっこうカンゲキした。
外観の角のアールにあわせて、部屋の中にもおそろいのアール。
先週のミュージアムトークには参加できなかったけど、
声が届いたかのように、ちゃんと取り上げてくださって本当にウレシイです。
写真場の「近代性(モダンさ)」をめぐるキーワード→16コは極めてモダン。
ちなみに20コで超モダンとなる。

オレンジ色の

2006-11-30 23:34:24 | ・花模様
中央線に乗ってビューン、お出かけしました。
この全面オレンジ色の中央線車両とはもうすぐお別れだそう。
オレンジ色とか柿色は実りの秋色でもあり、
ホッとあたたかい気持ちにしっかり包まれます。

紅葉も燃えるような真っ赤ではなく、
ちょっとオレンジ色というほうが、若々しく、モダンに感じます。

新書

2006-11-28 23:59:27 | ・読書・新聞・メモノート
三上の読書とは「馬上、厠上、枕上」ですが、
現代人にとっては馬上にあたるのが、電車のなかでしょうね。
私はもっぱら車中では新書を読みます。
ドア側なら、ときどき窓の外の景色にも眼をやりながら。 
文庫本より大きく、新書サイズはちょうどよく手にも馴染みます。
新書は1938年創刊の岩波新書に始まるそうですが、
啓蒙書など、今やあちらこちらの出版社から出ています。

PHP →PEACE and HAPPINESS through PROSPERITY
(繁栄を通じて平和と幸福を)
別冊PHPは、昔から子ども相手の職業柄、よく読みました。
小さい一冊ですが、ヒントいっぱいの大きな一冊でした。

おなじみリンボウ先生こと林望さんの著書
『「芸術力」の磨き方』がPHP新書
から出ていたので、
(→PHP新書(1996発刊)はペガサスがトレードマーク→)
ここ数週間、電車に揺られながら読んでいました。
なるほどと思える部分にはマーカーを引きながら、
そのなかで、ちょっとピックアップメモしておくと・・・。
   
・ものの見方として大切なのは、
 オブジェクトに対して感情的なアプローチじゃなくて、
 分析的な方法、ひとつひとつファクターに分けて細かく見ていくこと。
・結果としての知識より経験と筋道、方法論を身につける。
・まずは「考える」姿勢を身につけることが大事であり、
 「考える」という行為は「観察」と「比較」から始まる。
・対象を真摯に観察する。
・自分自身の審美眼なり批評能力なりを育てる気持ちが必要。
・収集した情報をいくら他人に伝えても、そこには自分らしさがまったくない。
・自分がその作品を通じて何を考え、どう評価するのか。
・自分なりの独自な見方を確立しようと思えば、批判的に読むこと。
・自分でものを考えるにあたって手がかりとして何か読みたいなら、
 なるべく多くのものを批判的に読む姿勢を忘れてはいけない。
・好きなものを深く探求すること、徹底的に掘り下げること。
・「核」になるものを持って、そこで自分の鑑賞力を鍛える。

なるほど、私にはどれも耳が痛い。
先人が何を言ってるか、注釈書をトレースしながらも批判的享受を心がける。
これですね!! 肝に銘じておきます。

ベルコモランチ

2006-11-26 23:47:36 | ・山本達彦ミュージック
今日は達彦さんのマンダラバンドライブ★
私はライブお休みだったけど、開演前におひさしぶりの
ファン友達3人と(ひとりは地元東京っ子、ひとりは京都から)、
外苑前のベルコモンズでランチしたんだ。
そうそう、ベルコモには、黒川さん、ガラスのコーンに通じる
モチーフはないよね、なんてビルを見上げながら、ひとり思ってみたり。
おしゃべりもいっぱいはずみました。楽しかったな。


伝統と永遠のモダン

2006-11-26 10:25:03 | ・講演・セミナー・シンポ
生誕110年 重森三玲の庭 地上の小宇宙

シンポジウムが松下電工ビル5階ホールで行われた。
私は重森さんの作り出す庭を観たことがないと思う。
(もしかしたら過去に気づかずにいただけかもしれない。)
汐留ミュージアムでの展覧会もまだ観ていない。
現物を見ずに自分の感じる印象もまだないのに
先にシンポでお話をうかがうのはよくない、
まったくもって順序が逆なのだけれど、とにかく参加した。
とても気になるお方でしたので。

パネラーは鈴木博之氏(東京大学大学院教授)、龍居竹之介氏(日本庭園協会会長)
重森千氏(京都工芸繊維大学非常勤講師)
司会は松隈洋氏(京都工芸繊維大学大学院助教授)<前川さんに続き2days>

お孫さんでもある重森さんは、三玲とは誰かと、
身近に接した眼差しも含めて、生い立ちから晩年までの輪郭をお話くださり、
また、龍居さんは重森親子三代にわたってのお付き合いで、思い入れたっぷり
尊敬する三玲先生の仕事ぶりをあますところなく熱心に聞かせてくださった。
独自のスタイルで貫き通した偉大な作庭家である重森三玲という人物が、
ここでかなり浮き彫りになってきた。
そして、建築史家でもいらっしゃる鈴木先生は、
近代日本の造園・手園芸の系譜を詳しく述べてくださったのが、
これがとてもわかりやすく興味深い内容だった。
重森三玲の庭は独立性の高いものであり、庭園史の中だけで語られるのではなく、
近代における文化表現としての枠組みで捉えたとき、永遠のモダンの意味が
分かるのではないか、新しさ位置付くのではないか、と、語られた。

やはり庭と言えば、造園家の系譜の小川治兵衛が頭に浮かぶのだが、
彼の初めてのクライアントが明治の軍人、山縣有朋だったというおもしろい
エピソードも聞かせてくださった。

その後私は、展覧会で三玲さんの古庭園の実測図や自ら作庭した庭園の
写真や図面、スケッチ、映像、いけばな界の革新を唱えるなど、
石を介してのイサム・ノグチとの交流など、多彩な活躍ぶりを目の当たりにした。
重森三玲さん、かなり創造的で奥深い人物だと思った。 
「日本母陰史」なる和綴じの本、どんな内容なのかそれも気になった。

時間切れ、報告はもうちょっとつづく。

ちょっと反省。

2006-11-25 23:58:01 | ・その他・暮らし・日常
今朝は案の定、寝坊してしまった。
連日のハードスケジュールがやっぱりこたえた。
ブーツを履くとオシャレ感で気分はイイけど、ヒールでかなり歩くと疲れる。
それで昨日は八丁堀、銀座の端から端まで往復闊歩していたので・・。
石川町が遠かった。朝から山手へのあの坂がキツイと諦めモード。
サボタージュしてしまった。授業料も支払っていたのにさ。

連続講座、同潤会アパートの住まい方のお話、内田先生ごめんなさいでした。
前回も途中で抜けてしまったので、先生には本当に失礼で申し訳なく反省です。

今日は午後から、たてもの園で米山先生のミュージアムトークもあって、
そちらも前々からのスケジュールが重なり参加できずに残念でした。
週に一度は華麗な米山トーク★、そのマイ連続記録が途絶えて無念。
だけど、たてもの園にはすぐ来週に伺うのですが。もち米山先生の解説で。
最近はパラレルニッポンから続いて写真がテーマのひとつだったので、
「常盤台写真場の近代性」お話をぜひ聞きたかったな。

アレもコレもと欲張ってはいけない、わかってはいるのだけれど、
あーあー、身体はひとつしかないのよね、分身の術があればよいのに。
明日も明後日も予定バリバリ、どうにもとまらないみっちょるであった。

氷点

2006-11-25 23:52:29 | ・映画・ドラマ・舞台
私が幼いころ、知り合いのお姉さんがいて、
周囲の大人が「あの子のおかあさんは、本当のお母さんじゃない。
継母だから、冷たい、愛情がないんだ。」と、
話していたのを耳にしたことがあった。

お母さんが自分の本当のお母さんじゃないというのは、
どんな感じかなぁ。想像はしたけれど、
ただその子がふつうにかわいそうだと思うことしかできなかった。
自分の本当の子どもじゃなかったら、かわいくないのかなぁ、
イケズするのか、その時は、私はママハハというものが理解できなかった。

水が氷結しようとする温度。
あるいは氷が融解しようとする温度、それが氷点。

卒業式総代答辞、凛とした若い主人公の言葉が清々しい。
「憎しみという感情で、自分を汚したくない。」

前川さんを語る

2006-11-24 23:57:31 | ・講演・セミナー・シンポ
昨年から開催され、現在も全国を巡回中の
「生誕100年・前川國男建築展」の
総括的意味もあわせた今回のシンポジウムでした。
パネラーは植田実さん、松山巌さん、内藤廣さん、
司会は松隈洋さん。会場は銀座のINAXセミナールーム。
前川さんが遺した仕事の意味を、現代へと引き寄せながら、
これからの建築や都市のあり方を考えさせられた時間でした。

前川さん関係のシンポって、毎回なんかイイ雰囲気なのです。
前川さんやその建築について語られるのを耳にすると、
自分自身に勇気や力が湧いたり、人生のヒントのようなものを頂けたり、
とても力強くパワーとなるのです。
闘うモダニスト、やはり頼もしい方なのだと感じます。
だからこそ、現代の危うい時代に前川さんの存在意義が問われるのだと思います。
真面目に真摯に取り組んできた姿勢やお人柄が、そのまま滲み出ています。

今回の目玉ともいうべき1970年前川事務所の35周年パーティーで所員を
前に自ら語っていらっしゃる65歳の前川さんの肉声テープを
聞かせていただきました。とてもしっかりしたお声でした。
初めて聞く生のお声にはカンゲキしました。

植田さんは展覧会の模型に目を奪われたとお話しされました。
特に紀伊国屋書店の模型では、細かい棚のつくりなどから、
写真ではわからない空間のある広場、本屋の空間、
本好きがやってくる空間、それがあるのだと。
植田さんは古い建物を残すことの大切さ自分なりに文章にして
アピールしていきたい、とおっしゃっていました。
現在の阿佐ヶ谷テラスハウスの、建物に人がいないかなしさを感じたと、
しみじみされていました。
その建物がなくなってしまう前に私もぜひ自分の眼に残しておかなくては。
会場には植田さんを建築の編集の世界に引き込んだ平敬一さんがいらっしゃった。
(実は私のお隣にいらした方と知りビックリ。)

最後に前川國男という建築家がいたことを忘れないで。
松隈さんがそう締めくくりました。

会場には現役の若い学生さんたちもいらしたが、
内藤さんはじめパネリストの方々の、前川さんを語る次の世代へ
つなげたいという想いは充分に伝わりました。
本当にそうあってほしいと私も思います。
おしまいには温かい拍手が会場に鳴り響きました。

今回も良いお話がきけました。うれしかったです。ありがとうございました。
もう少整理して、私のなかでも前川さんを胸に落とし込みたいと思います。