箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

家庭教育は私的な営み

2022年03月26日 07時23分00秒 | 教育・子育てあれこれ


岡山県で「岡山県家庭教育応援条例」案が、県議会に提案され物議が起きました。

この条例案は、家庭教育での親の役割などを定めています。

前文では、「家庭や地域の教育力の低下」を問題として、保護者の役割、地域の役割、県の責務が書かれています。

この条例案のパブリックコメントに、条例案への反対意見がほかの自治体や市民から多数寄せられたのでした。

また、市民グループが反対署名を集め、県議会に提出し、撤廃するよう求めました。

最初の案は「子どもを産むべきだ」という価値観の押しつけになるという猛反発を受け、提案者側から修正案が考えられました。

そして、2022年1月に可決されました。

この経過をふりかえり、条例案作成に関わったある県議会議員のコメントに、わたしは注目しています。

「特定の考えを勧めているのではない。家庭により事情が違うこともふまえている。一部の人を排除しているのでもない。子どもたちを社会でバックアップしていこうという条例が、なぜここまで反対されるのかが不思議だ」(「毎日新聞2022年3月16日号」)。

なぜ反対する人たちの考えが理解できず、不思議と感じるのでしょうか。
また、このように声をあげることの大切さを発案者側が認識されていないのではないかと、わたしは思います。

まず、家庭教育とは本来、私的なものです。それとは対照的に学校教育とは公的なものです。

つまり私的な領域である家庭での教育のあり方へ自治体が入り込み、法律で規定することには問題があると思います。

さらに、子どもの健やかな成長を保障するのは、家庭、学校、地域、地方自治体、国が共同で責任を負うものであり、とりわけ国と地方自治体の役割は大きいのです。

それを、「今の家庭、親はなっていない!」と、家庭教育での親の役割をこの条例が第一義のように規定し、親に責任を負わそうとする姿勢を感じるから、反発が起きるのです。反発はきわめて当然だと思います。

これが進行していけば、地方自治体は公権力で今後、家庭での子育てやしつけのあり方に介入してくる危惧を感じます。

さらに、3月22日のブログにも書きましたが、「賛成」か「反対」の態度を示さなければ、市民はサイレント・マジョリティになってしまいます。

この点で、反対の態度を示した自治体や市民の動きは、きわめて健全であると思います。

民主主義は手間もかかるし、時間もかかります。

「だれかがやってくれるだろう」と他人任せにすることで、「毎日自分の畑の野菜を見ているのでわからなかったが、ふと気がついたときには、野菜はとんでもなく大きくなっていた」(ドイツの農夫の言葉)ということになりかねません。


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