箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

自分で考え、自分できめる

2020年08月30日 08時12分00秒 | 教育・子育てあれこれ

中学校では、班ノートや「生活ノート」を行っている学年やクラスがあります。

 

中学生にとって、自分の言葉で様々なことがらについて、自分の感想や意見を書くこと(綴る)ことは、とても大切です。

 

頭の中で考えていることは、それを文字にして表現することで、その考えがはっきりとしてきます。

 

「そうか、わたしはこのことを考えていたのだ」とあらためて気がつくこともあります。

 

また、意識していなかったことでも、書くことではっきりと意識できるようになることもあります。

 

書くことを続けるうちに、思考が深まって、厚みが増してくるのです。

 

ノートは最初はきまりきったことしか書いていませんが、続けるうちに毎日のできごとから、自分がこう思ったという感想や自分の考えを書くように変わってきます。

 

それを読んだクラスメートがまた、別の考えを書いたり、加えたりすることで、書いてもらった生徒はさらに自分の思考を深めていくことができます。

 

わたしは、中学生と接する醍醐味は、自分に関するものごとを、自分にひきつけて考え、どうするべきかという結論や決定を導き出す過程にあると考えています。

 

私が中学3年生を担任していた時、ある男子生徒がいました。その子は勉強はそれほど得意ではなかったのですが、2月の私立高校の入試で「ぜったいにA高校を受けたい」と言っていました。

 

その子のその時点での学力では専願にしたとしても合格ラインには届かない状況でした。


不合格になるのが十分予測できたので、別の私立高校を受験するようにすすめました。

 

しかし、彼の意志は固く、ぜったいに受けたいという考えは変わりそうにもありませんでした。

 

わたしは、そこまで強く思っているのなら受けてみるかと考え「がんばりなさい」と伝えました。

でも、もしだめだった場合、公立高校をどうするかどうするかを考えなさい」と添えました。

 

はたして、やはり彼は不合格でした。

 

合否発表の後、「残念だったね。次の公立はどうする。いままで一生けん命にがんばってきた。ここで進路を決めるんだ。自分が行くところだから、自分で決めるんだ。どこにする」と問いました。

 

彼は「○○高校にする」でした。わたしも合格するだけの学力はあるとみての問いかけだったのです。


でも「あとがない」という状況で、あと約1か月、どれだけモチベーションを高く保ち、本人が頑張れるかという正念場でした。

 

「それでは、おうちの人に話して、相談して、受験校を記入しておいで。そして、本気を出してがんばるんだ」と伝え、帰宅させました。

 

それから、彼は以前にもまして一生懸命に学習を重ね、もちまえの強固な態度でがんばり、その高校に合格しました。

 

いまふりかえって、もし私立入試で希望する高校を受けていなかったら、そのあとの彼のがんばりはなかっただろうと思います。

 

不合格という事実を突きつけられたから、気持ちを切り替えて、次のことを考えることができたのです。

 

中学生にとって、高校受験は多くの場合、初めて決める自分の進路です。もしかすれば失敗することもあるでしょう。

 

でも、自分を見つめ、深く自分のことを考え、自分で決めたことをやり通すことが、先の人生での大きな力になり、責任をもって生きていくことに繋がるのだと思います。

 



コメントを投稿