goo blog サービス終了のお知らせ 

言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

高速道路無料化論

2010-08-02 | 日記
山養世 『道路問題を解く』 ( p.30 )

 小泉政権で行われた道路公団民営化によって、ムダな高速道路は作らなくなるはずでした。また、高速料金の値下がりも始まり、高速道路が使いやすくなったはずでした。しかし、実態はどうなっているのでしょうか。
 二〇〇七年一一月に国土交通省によって発表された「道路の中期計画」はとても大切です。なぜなら、これが、今後一〇年間で五九兆円もの道路財源の根拠となる計画だからです。それだけ巨額のお金が必要だから、ガソリン税は下げられません、と政府はいっているのです。
 この「道路の中期計画」のなかに、いまの高速道路がいかに不便でムダになっているかが報告されています。「既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化」の背景・現状として、次のように述べています。
 第一に、「都心部では、通過交通によって深刻な渋滞が発生しており、通過交通を環状道路へ迂回させる必要があるが、環状道路の料率が割高」と指摘しています。都心の渋滞が深刻なのは、通過するだけの車が都心に入ってくるためです。このため、通過するだけの車両が都心に入らないように、環状高速道路を整備したはずです。ところが、通行料金が高いために、せっかく作った環状高速道路は使われず、都心を通過する車両が減らないというのです。
 次に、「並行する一般道は混雑しているにもかかわらず、高速道路には比較的余裕がある高速道路の区間が、全国の約六五%」と指摘しています。せっかく作った約八〇〇〇キロに及ぶ高速道路のうち、その六五%にあたる五二〇〇キロは、料金が高いために活用されていないのです。並行している一般国道は混雑しているのに、巨額のお金を使った高速道路は料金が高くて使われていないのです。なんともったいないことでしょうか。
 さらに、「深夜割引の導入後も、大型車が一般道を走行したり、料金所周辺での時間待ちをするなどして、沿道環境や安全面の課題が発生」と指摘しています。少しくらいの深夜割引を導入しても、高速道路の通行料金がまだとても高いために、トラックなどの大型車は一般道を通り続けています。このため、一般道での渋滞や事故、排気ガスなどの深刻な問題が解消されていないのです。
 最後に「日本の平均インターチェンジ間隔 (約一〇キロ) は、欧米の約二倍」と指摘しています。日本では、インターチェンジの間隔が、欧米の二倍であるために、高速道路の出入りが不便であり、料金所での渋滞が多く、時間とガソリンのムダになっているのです。そのわけは、日本の高速道路は有料ですから、料金所を設けなければいけません。このため出入り口が大規模になり、一つ作るのに最低で一〇億円以上の巨額の資金が必要です。これに対して、多くの欧米諸国では、高速道路は無料ですから、料金所はありません。このため、インターチェンジは一般道路との簡単な出入り口ですから、短い間隔でいっぱい作れるのです。

(中略)

 こうしてみると、国土交通省の作った「道路の中期計画」自体が指摘するように、道路公団民営化を行っても、既存の高速道路が効率的に活用されず、ムダになっている実態が明らかです。そして、「道路の中期計画」どおりに新たな高速道路をこれから三五〇〇キロも作れば、膨大な借金が残ることは明らかです。
 それならば、あとで詳しく説明するように、余っていることが明らかなガソリン税などの道路の財源を使って、高速道路の借金を返せばいいのです。そうすれば高速道路は無料にできます。そうなれば、いまは料金が高くて活用されていない全国の六五%の高速道路が、自由に使えるようになります。そして、都心への通過車両は減ります。さらに、大型のトラックが一般道を走って、悲惨な事故を起こしたり、排気ガスを撒き散らしたりすることも減ります。そうなれば、トラック運転手の労働環境も改善されます。
 通行料金が無料になれば、料金所も、四つ葉のクローバーのような巨大なインターチェンジも要らなくなります。簡単な出入り口をいっぱい作って、一般道路との接続をよくすれば、既存の高速道路も一般道路も、いまよりはるかに便利になります。より早く、より簡単に、より少ないガソリンで、目的地まで行けるようになるでしょう。いまある道路システムの輸送力が向上するわけですから、新しく道路を作る必要性は減るでしょう。そうなれば、道路予算も将来は減らせることになります。
 まさしく、借金返済による高速道路無料化こそ、国土交通省が掲げる「既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化」への解決策になります。そして、高速道路の借金もなくなるのです。


 道路公団民営化によって、ムダな高速道路は作られず、料金も値下がりするはずだった。しかし、(a) 高速道路は割高で使われず、一般道が混雑している状況が続いており、(b) 日本ではインターチェンジの間隔が欧米の 2 倍もあるために、不便なばかりか、料金所での渋滞も多い。したがって、既存の高速道路がムダになっている。
 それならば、高速道路を無料化すればよい。高速道路は有効に活用され、「より早く、より簡単に、より少ないガソリンで、目的地まで行けるようにな」り、「新しく道路を作る必要性は減る」ので、「道路予算も将来は減らせることにな」る、と書かれています。



 高速道路無料化論を説いた本です。( 長い間、更新していませんでしたが ) 次は、この本を扱います。



 私は長い間、

   高速道路を無料にすれば、鉄道を使わず、車を使う人が増えるはずなのに、
   なぜ、無料化論者は環境によいと主張しているのか、

疑問に思っていました。この疑問は、上記 ( 引用部 ) によって解消された、といってよいと思います。

 私なりに要約すれば、

   日本の高速道路は料金が高いので、利用者が少ない。
   したがって、高速道路と一般道という、2 種類の道路体系が存在している。
   
   高速道路を無料にすれば、両者が一体となり、ムダがなくなる (有効に活用される) 。
   その結果、新たに道路を建設しなくとも、渋滞が減り、省エネになる。

という主張がなされているのであり、要点は、

   (1) 渋滞が減る → 省エネ → 環境によい
   (2) 渋滞が減る → 道路を作る必要性が減る → 国家財政を改善する、

の 2 点です。



 (1) の、無料化が環境によい、という主張もさることながら、(2) の、

   無料にすれば ( 収入を減らせば ) 、財政事情を改善する、

という主張も、凄いと思います。まさに、「あっ」と驚く、逆転の発想です。



 しかし、「あっ」と驚く逆転の発想であるために、「ふむふむ」とは思いつつ、「本当にそんなにうまくいくのかな?」という疑問も、感じてしまいます。

 ここで重要なのは、「高速道路を無料にすれば、鉄道を使わず、車を使う人が増える」と考えるか否か、だと思います。

   田舎では、鉄道という選択肢は事実上、ありえないうえに、
   都会については、都心通過車両 (トラック等) を減らすことが重要である

と考えれば、「高速料金にかかわらず、車を使う人の数 (高速と一般道の合計) は変わらない」ということになり、無料化論を支持することになりそうです。



 本当に、「高速料金にかかわらず、車を使う人の数 (高速と一般道の合計) は変わらない」といえるのか。お盆の帰省ラッシュなどは、どうなのか ( どちらが選択されるのか ) 。さらに考えたいと思います。

弁護士需要を取り込むには

2010-08-01 | 日記
la_causette」の「需要に対応した養成

給費制にせよ貸与制にせよ、司法修習ってそれなりにコストが掛かります。箱物としての研修所の維持費や教官・職員の維持費、実務修習を受け入れる実務庁の物的・人的負担もそうですし、修習生の側の機会費用もそうです。かと言って、現在の法科大学院教育スキルを前提とするかぎり、司法修習抜きで実務に来られても困ってしまう感があります。

このため、司法研修所を卒業し、新規に法曹資格を取得した人の大半がそれを活かす職につけないというのは、はっきりいって無駄です。もちろん、法曹資格がある以上、いきなり独立して法律事務所を開業し、低価格を武器に、既存の弁護士からがんがん顧客を奪って行けばよいという考え方も理論的にはあるでしょう。司法試験の合格者数に制限を設けるべきではないという見解、あるいは年間の合格者数を1500人以上にせよという見解は、そういう前提にたっているのだと思います。ただ、それが理論倒れであることは、この数年の、社会実験で明らかになったといえるのではないかと思います。

もちろん、では誰が適切な合格者数なんて決められるのかという疑問はあると思います。ただ、新規法曹資格取得者の資格を活かした進路なんて、幸か不幸か、さほど多様ではありません。このため、新規法曹資格取得者の主たる進路となっているセクターの代表者に「2年後、あなた方のセクターでは、何人くらい新規法曹資格取得者を採用する予定があるのか」を照会して、その合算に、1.1か1.2くらいを掛け合わせた数字を司法試験合格者数とすればいいのではないかという気がしています。


 「いきなり独立して法律事務所を開業し、低価格を武器に、既存の弁護士からがんがん顧客を奪って行けばよいという考え方」に対して、「理論倒れであることは、この数年の、社会実験で明らかになったといえるのではないかと思います」と書かれています。



 既存の弁護士の顧客を「奪いあう」という発想そのものが、すこしちがうのではないかと思います。

 たしかに、既存の弁護士の顧客を「奪いあう」というケースも、ありうるとは思います。

 しかし、「あらたな顧客層」を獲得する、という発想があってもよいのではないでしょうか。



 ここで、私のいう「あらたな顧客層」とは、一般の市民を指しています。いわゆる「庶民」をイメージしています。

 広く一般大衆に目を向ければ、弁護士需要は膨大だと思います。



 世の中には、「おかしな」話なんて、たくさんあります。それが弁護士さんの受任する「事件」にならないのは、

   弁護士に依頼する場合の費用であったり、
   相手に対する思いやりであったり (「弁護士による「詭弁・とぼけ」かもしれない実例」など)

と、さまざまな事情があるわけですが、「価格によっては (安ければ) 弁護士さんに依頼したい」という人は、決して少なくないと思います。



 市民の感覚としては、「弁護士さんの料金は、わかりにくい」わけです。わかりやすく言えば、鮨屋の「時価」と同じような感じです。弁護士さんに相談した場合、どのくらい請求されるのか、という不安があります。

 なにも「一皿百円」の回転寿司にしろ、とまでは言いませんが、一般の市民にしてみれば、ある程度、弁護士料金の目安がほしいところです。たとえば、

   離婚     ~~円程度、
   不当解雇   ~~円程度、
   交通事故   ~~円程度、

といった感じの価格表示です。弁護士さんであれば、経験上、おおよその金額はわかるはずだと思います。「なりたて」の弁護士さんであっても、修習の際に、おおよその価格は、感じとっているのではないかと思います ( もちろん、「事件の内容」によって価格が異なる、というのはわかりますが、おおよその金額は示せるのではないか、という趣旨です ) 。



 ほかの弁護士さんと「たとえ価格が同じであっても」、事前に価格表示のある弁護士さんのところに、市民は相談に行くと思います。