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小泉政権で行われた道路公団民営化によって、ムダな高速道路は作らなくなるはずでした。また、高速料金の値下がりも始まり、高速道路が使いやすくなったはずでした。しかし、実態はどうなっているのでしょうか。
二〇〇七年一一月に国土交通省によって発表された「道路の中期計画」はとても大切です。なぜなら、これが、今後一〇年間で五九兆円もの道路財源の根拠となる計画だからです。それだけ巨額のお金が必要だから、ガソリン税は下げられません、と政府はいっているのです。
この「道路の中期計画」のなかに、いまの高速道路がいかに不便でムダになっているかが報告されています。「既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化」の背景・現状として、次のように述べています。
第一に、「都心部では、通過交通によって深刻な渋滞が発生しており、通過交通を環状道路へ迂回させる必要があるが、環状道路の料率が割高」と指摘しています。都心の渋滞が深刻なのは、通過するだけの車が都心に入ってくるためです。このため、通過するだけの車両が都心に入らないように、環状高速道路を整備したはずです。ところが、通行料金が高いために、せっかく作った環状高速道路は使われず、都心を通過する車両が減らないというのです。
次に、「並行する一般道は混雑しているにもかかわらず、高速道路には比較的余裕がある高速道路の区間が、全国の約六五%」と指摘しています。せっかく作った約八〇〇〇キロに及ぶ高速道路のうち、その六五%にあたる五二〇〇キロは、料金が高いために活用されていないのです。並行している一般国道は混雑しているのに、巨額のお金を使った高速道路は料金が高くて使われていないのです。なんともったいないことでしょうか。
さらに、「深夜割引の導入後も、大型車が一般道を走行したり、料金所周辺での時間待ちをするなどして、沿道環境や安全面の課題が発生」と指摘しています。少しくらいの深夜割引を導入しても、高速道路の通行料金がまだとても高いために、トラックなどの大型車は一般道を通り続けています。このため、一般道での渋滞や事故、排気ガスなどの深刻な問題が解消されていないのです。
最後に「日本の平均インターチェンジ間隔 (約一〇キロ) は、欧米の約二倍」と指摘しています。日本では、インターチェンジの間隔が、欧米の二倍であるために、高速道路の出入りが不便であり、料金所での渋滞が多く、時間とガソリンのムダになっているのです。そのわけは、日本の高速道路は有料ですから、料金所を設けなければいけません。このため出入り口が大規模になり、一つ作るのに最低で一〇億円以上の巨額の資金が必要です。これに対して、多くの欧米諸国では、高速道路は無料ですから、料金所はありません。このため、インターチェンジは一般道路との簡単な出入り口ですから、短い間隔でいっぱい作れるのです。
(中略)
こうしてみると、国土交通省の作った「道路の中期計画」自体が指摘するように、道路公団民営化を行っても、既存の高速道路が効率的に活用されず、ムダになっている実態が明らかです。そして、「道路の中期計画」どおりに新たな高速道路をこれから三五〇〇キロも作れば、膨大な借金が残ることは明らかです。
それならば、あとで詳しく説明するように、余っていることが明らかなガソリン税などの道路の財源を使って、高速道路の借金を返せばいいのです。そうすれば高速道路は無料にできます。そうなれば、いまは料金が高くて活用されていない全国の六五%の高速道路が、自由に使えるようになります。そして、都心への通過車両は減ります。さらに、大型のトラックが一般道を走って、悲惨な事故を起こしたり、排気ガスを撒き散らしたりすることも減ります。そうなれば、トラック運転手の労働環境も改善されます。
通行料金が無料になれば、料金所も、四つ葉のクローバーのような巨大なインターチェンジも要らなくなります。簡単な出入り口をいっぱい作って、一般道路との接続をよくすれば、既存の高速道路も一般道路も、いまよりはるかに便利になります。より早く、より簡単に、より少ないガソリンで、目的地まで行けるようになるでしょう。いまある道路システムの輸送力が向上するわけですから、新しく道路を作る必要性は減るでしょう。そうなれば、道路予算も将来は減らせることになります。
まさしく、借金返済による高速道路無料化こそ、国土交通省が掲げる「既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化」への解決策になります。そして、高速道路の借金もなくなるのです。