言語空間+備忘録

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独占禁止法の 「強化」

2009-09-03 | 日記
内橋克人とグループ2001 『規制緩和という悪夢』 ( p.104 )

 私たちは独占禁止法の本来の精神とは、放っておけば、大手が規模のメリットで市場で寡占、独占を達成していくという『市場の失敗』を大手の手足を縛ることで防ぐことだと考えている。
 だが、経団連などの規制緩和論者の言う独占禁止法の強化とはその逆である。
 独占禁止法には、中小企業が、協同組合を作って互いに調整ができるような適用除外がいくつかある。零細業者が全体の九割以上をしめる内航海運業の船腹調整が、カルテル行為に当たらないのは、独占禁止法の適用除外を受けているからである。経団連の言う独占禁止法強化とはこの適用除外を外せということである。


 独占禁止法の精神は、大手の手足を縛ることで 「市場の失敗」 を防ぐことである。ところが、経団連の言う独占禁止法の 「強化」 とは、中小企業・零細業者保護のための適用除外を外せ、というものだと書かれています。



 ( 本の ) 著者はもちろん、経団連の主張を紹介、あるいは支持するためにこの文章を書いているのではありません。( この本全体の流れを考えると ) 著者が言わんとしているのは、独占禁止法は大手の手足を縛ることで、「市場の失敗」 を防ごうとしているのに、経団連の言う独占禁止法の 「強化」 とは、大手に自由を与えろ、というものであって独占禁止法の精神に反している、ということです。著者は経団連の主張を批判しているのです。



 そこで、この問題について考えます。

 著者は独占禁止法の 「適用除外」 と言っています。本来、船腹調整は、独占禁止法に反する行為であると考えなければなりません。船腹調整が

   独占禁止法に反しているからこそ、「適用」 除外が定められている

はずです。なんら独占禁止法に反しないのであれば、適用を除外する必要がありません。

 要は、著者と経団連の主張が 「逆」 になっているのは、独占禁止法の原則規定を基準に考えるか、例外規定を基準に考えるか、という、視点の相違によるものだと考えられます。したがって、どちらが正しい、間違っている、というものではないと思いますが、どちらかといえば、原則を基準にして考えるべきだと思います。つまり、

   原則を強める場合に、「強化」 と表現すべき

だと思います。したがって、私は経団連の主張が適切であり、著者の主張は 「やや」 不適切である、と考えます ( 中小・零細業者保護が不要だと言っているのではありません ) 。



 著者は、大手企業と中小・零細業者が競争すれば、大手が必ず勝つ、と考えているのではないかと思います。しかし、( 例外もあるとは思いますが ) 大企業も、創業当初は中小企業です。歴史が示しているのは、

   中小・零細業者が大手に勝つこともある、

です。そんなに大企業を怖がる必要はないと思います。

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