以下は、売り手に対する課税も、買い手に対する課税も、結局のところ売り手と買い手、双方に課税されるに等しいことを示した「税の帰着」の内容が前提になっています。そちらを先にお読みください。
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.146 )
税は(どちらに課税した場合であっても)結局のところ、売り手と買い手、双方が負担することになることを前提としたうえで、(税を)どちらがより多く負担することになるかが論じられています。
引用文中の図5-9(a)を示します。
★図5-9 税の負担はどのように割り振られるか
(a) 非弾力的需要と弾力的供給の場合
(=需要曲線の傾きが急な場合)
価格
* x 供給
PB *・・・・・・・・・・x xx
* :x xx
* : x xx
P0 *・・・・・・・・・・: xx
PS *・・・・・・・・・・xx x
* xx x
* xx x
* xx x
* xx x
* 需要
****************************
0 数量
P0 = 税がないときの価格
PB = 買い手の支払価格
PS = 売り手の受取価格
この図において、( PB - PS ) が税です。税金のうち、買い手が ( PB - P0 ) を負担し、売り手が ( P0 - PS ) を負担することになります。
ここでの結論は、買い手の負担額 ( PB - P0 ) は売り手の負担額 ( P0 - PS ) よりも大きい、ということです。
同 ( p.146 )
引用文中の図5-9(b)を示します。
★図5-9 税の負担はどのように割り振られるか
(b) 弾力的需要と非弾力的供給の場合
(=供給曲線の傾きが急な場合)
価格
* 供給
* xx x
* xx x
PB *・・・・・・xx x
* :xx x
P0 *・・・・・・ :・・xx
* : x xx
* : x xx
* :x xx
PS *・・・・・・ x xx
* x 需要
****************************
0 数量
P0 = 税がないときの価格
PB = 買い手の支払価格
PS = 売り手の受取価格
この図において、( PB - PS ) が税です。税金のうち、買い手が ( PB - P0 ) を負担し、売り手が ( P0 - PS ) を負担することになります。
ここでの結論は、買い手の負担額 ( PB - P0 ) は売り手の負担額 ( P0 - PS ) よりも小さい、ということです。
同 ( p.146 )
税をより多く負担するのは、代替的選択肢のない側(=弾力性の小さい側)である、と書かれています。
この結論は正しいと思います。選択肢がなければ、高くても買わざるを得ませんし、安くても売らざるを得ません。
同 ( p.148 )
労働について、供給側(=労働者)には選択肢があまりなく、需要側(=企業)には選択肢が多い、という主張は(常識的に考えて)正しいと思います。
とすると、今回の経済学的思考をもとに考察すれば、以前の私の主張、「労働力を買った者にも消費税を」課税しろ、には問題があることになります。論理的には妥当な主張であると思いますが、主張の目的に反する結果をもたらす、という意味で「問題がある」といえます。
論理的な「整合性」を図ることを優先すべきか、目的に沿った「結果」を得ることを優先すべきかによって考えかたは変わりますが、ここはやはり、「結果」を優先すべきだと思います。「目的に反する」結果をもたらすとわかったうえでなお、このような主張を続ける気持ちにはなれません。
したがって、私は、上記「労働力を買った者にも消費税を」課税しろ、という主張を撤回します。
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.146 )
ある財に課税されると、その財の売り手と買い手は税を分担して負担する。それでは、税は正確にはどのように負担されるのだろうか。均等に負担することはめったにないだろう。負担がどのように割り振られるかをみるため、図5-9の二つの市場における課税の影響を考察しよう。どちらの場合も、元の需要曲線、元の供給曲線、そして買い手の支払額と売り手の受取額の間に差額をもたらす税が図示されている(新しい需要曲線と供給曲線はこの図のどちらのパネルにも描かれていない。どちらの曲線がシフトするかは、税が売り手と買い手のどちらに課されるかに依存する。すでにみたように、このことは税の帰着には無関係である)。二つのパネルの違いは、需要と供給の相対的な弾力性の大きさである(弾力性については、本章の補論を参照)。
図5-9のパネル(a)は、供給が非常に弾力的で、需要がそれに比べると非弾力的な市場における税を示している。売り手は財の価格に非常に敏感であり(したがって供給曲線の傾きは比較的平ら)であり、買い手はあまり敏感ではない(したがって需要曲線の傾きは比較的急である)。このような弾力性をもつ市場に税が課されると、売り手が受け取る価格はあまり下落せず、したがって売り手はわずかしか負担しない。対照的に、買い手が支払う価格はかなり上昇する。このことは税の大部分を買い手が負担することを示している。
税は(どちらに課税した場合であっても)結局のところ、売り手と買い手、双方が負担することになることを前提としたうえで、(税を)どちらがより多く負担することになるかが論じられています。
引用文中の図5-9(a)を示します。
★図5-9 税の負担はどのように割り振られるか
(a) 非弾力的需要と弾力的供給の場合
(=需要曲線の傾きが急な場合)
価格
* x 供給
PB *・・・・・・・・・・x xx
* :x xx
* : x xx
P0 *・・・・・・・・・・: xx
PS *・・・・・・・・・・xx x
* xx x
* xx x
* xx x
* xx x
* 需要
****************************
0 数量
P0 = 税がないときの価格
PB = 買い手の支払価格
PS = 売り手の受取価格
この図において、( PB - PS ) が税です。税金のうち、買い手が ( PB - P0 ) を負担し、売り手が ( P0 - PS ) を負担することになります。
ここでの結論は、買い手の負担額 ( PB - P0 ) は売り手の負担額 ( P0 - PS ) よりも大きい、ということです。
同 ( p.146 )
図5-9のパネル(b)は、供給が比較的非弾力的で需要が非常に弾力的な市場における税を示している。この場合、売り手は価格の変化にあまり敏感ではなく(したがって供給曲線の傾きは急である)、買い手は非常に敏感(したがって需要曲線の傾きは平ら)である。この図は、税が課されたとき、買い手が支払う価格はあまり上昇せず、売り手が受け取る価格はかなり下落することを示している。したがって、税の大部分は売り手が負担することになる。
引用文中の図5-9(b)を示します。
★図5-9 税の負担はどのように割り振られるか
(b) 弾力的需要と非弾力的供給の場合
(=供給曲線の傾きが急な場合)
価格
* 供給
* xx x
* xx x
PB *・・・・・・xx x
* :xx x
P0 *・・・・・・ :・・xx
* : x xx
* : x xx
* :x xx
PS *・・・・・・ x xx
* x 需要
****************************
0 数量
P0 = 税がないときの価格
PB = 買い手の支払価格
PS = 売り手の受取価格
この図において、( PB - PS ) が税です。税金のうち、買い手が ( PB - P0 ) を負担し、売り手が ( P0 - PS ) を負担することになります。
ここでの結論は、買い手の負担額 ( PB - P0 ) は売り手の負担額 ( P0 - PS ) よりも小さい、ということです。
同 ( p.146 )
図5-9の二つのパネルは、税の負担がどのように割り振られるかについて一般的な教訓を示している。すなわち、税の負担は、市場のなかで弾力性が小さい側に重く割り振られる。なぜそうなるのだろうか。本質的に、弾力性は、状況が悪化したときに、買い手や売り手が市場を離れたいと思う度合いを測る尺度である。需要の弾力性が小さいということは、買い手が特定の財を消費するにあたって適切な代替的選択肢をもたないことを意味する。供給の弾力性が小さいということは、売り手が特定の財を生産するにあたって適切な代替的選択肢をもたないことを意味する。その財が課税されると、市場のなかで適切な代替的選択肢を少ししかもっていない側は、市場を簡単に離れることができず、したがって税をより多く負担しなければならないのである。
税をより多く負担するのは、代替的選択肢のない側(=弾力性の小さい側)である、と書かれています。
この結論は正しいと思います。選択肢がなければ、高くても買わざるを得ませんし、安くても売らざるを得ません。
同 ( p.148 )
この論理は、前のケース・スタディで論じた給与税に適用することができる。ほとんどの経済学者は、労働供給は労働需要よりもはるかに弾力性が小さいと信じている。このことは、企業よりも労働者のほうが給与税を負担する割合が非常に高いことを意味している。言い換えれば、税の負担の割振りは、立法者の意図に反して五分五分とは大きく異なるということである。
労働について、供給側(=労働者)には選択肢があまりなく、需要側(=企業)には選択肢が多い、という主張は(常識的に考えて)正しいと思います。
とすると、今回の経済学的思考をもとに考察すれば、以前の私の主張、「労働力を買った者にも消費税を」課税しろ、には問題があることになります。論理的には妥当な主張であると思いますが、主張の目的に反する結果をもたらす、という意味で「問題がある」といえます。
論理的な「整合性」を図ることを優先すべきか、目的に沿った「結果」を得ることを優先すべきかによって考えかたは変わりますが、ここはやはり、「結果」を優先すべきだと思います。「目的に反する」結果をもたらすとわかったうえでなお、このような主張を続ける気持ちにはなれません。
したがって、私は、上記「労働力を買った者にも消費税を」課税しろ、という主張を撤回します。
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