言語空間+備忘録

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総需要曲線のシフトの影響

2011-08-23 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.391 )

 何らかの理由により、悲観主義の波が突然経済を襲ったとしよう。その原因はホワイトハウスのスキャンダルかもしれないし、株式市場の大暴落や海外での戦争勃発かもしれない。こうした出来事により、多くの人々が将来に対する自信を失い、計画を変更する。家計は支出を切り詰めて大きな購入計画を先に延ばし、企業は新しい設備の導入を延期する。
 悲観主義の波が経済に与える影響はどのようなものだろうか。このような出来事は、財・サービスの総需要を減少させる。すなわち、どの物価水準においても、家計や企業は財・サービスの購入量を減らそうとする。図12-8が示すように、総需要曲線はAD1からAD2へと左方にシフトする。
 この図を使って総需要の減少の影響を考察できる。短期においては、経済は元の短期の総供給曲線AS1上をA点からB点へと移動する。経済がA点からB点へと移動するのに伴って、産出量はY1からY2へと減少し、物価水準はP1からP2へと下落する。産出量水準の低下は、経済が景気後退期にあることを示唆する。この図には示されていないが、企業は生産と販売の減少に対応して雇用を減少させる。このように、悲観主義が総需要曲線のシフトを引き起こすことには、ある程度自己実現的な面がある。すなわち、将来に対する悲観主義によって、所得の減少と失業の増加がもたらされるのである。
 このような景気後退に直面したときに、政策立案者は何をすべきだろうか。一つの可能性は、総需要を増加させる措置を講じることである。先に述べたように、政府支出や貨幣供給量が増加すると、どの物価水準においても財・サービスの需要量が増加し、総需要曲線は右方にシフトする。政策立案者が十分な速さと正確さをもって行動することができれば、総需要曲線の最初のシフトを相殺して、総需要曲線をAD1に戻し、経済をA点に戻すことができる(マクロ編第16章では、金融政策と財政政策が総需要に影響を及ぼす方法を、これらの政策手段を利用することの実践上の問題点とあわせてより詳細に議論している)。
 政策立案者が何も措置を講じなくても、景気後退は時間が経つと自然消滅する。総需要が減少するために物価水準が下落するが、最終的には、期待はこの新しい現実に追いつき、期待物価水準も下落する。期待物価水準が下落するにつれて、賃金と物価と認識が調整され、短期の総供給曲線は図12-8のようにAS1からAS2へと右方にシフトする。この期待の調整によって経済は時間をかけて、総需要曲線(AD2)と長期の総供給曲線との交点Cに近づいていく。
 新しい長期均衡であるC点では、産出量は自然水準に戻る。悲観論の波によって総需要は減少するが、物価水準が十分に(P3まで)下落することによって、総需要曲線のシフトが相殺されるからである。このように、長期においては、総需要のシフトは物価水準のみに反映され、産出量水準にはまったく反映されない。言い換えれば、総需要のシフトの長期的影響は名目的変化であり(物価水準の低下)、実質的変化ではない(産出量は同じ)。
 要約すると、総需要のシフトについてのこの話は、二つの重要な意味合いをもつ。
  • 短期においては、総需要のシフトによって経済の財・サービスの産出量の変動が生じる。
  • 長期においては、総需要のシフトは全般的な物価水準には影響を及ぼすが、産出量には影響を及ぼさない。


 株価暴落などによって人々が将来に悲観的になった場合、どのような影響が生じるかが書かれています。



 引用文中の図を示します。



★図12-8 総需要の縮小

 物価水準  長期の  短期の
   *    総供給  総供給(AS1)
   *      x   xx  
   *  xx   x  xx   
   *   xx  x xx   xxAS2
   *    xx xxx   xx  
 P1*・・xx・・・・・・xxA  xx   
   *  xx xx xxx xx   
 P2*・・・・Bxx  x xx    
   *  xx:xx xxx xx   
 P3*・・xx・・:・・xxC  xx  
   *   :xx xxx   xx 総需要
   *   xx  x xx   xx(AD1)
   *  xx:  x  xx   
   * xx :  x   xxAD2 
   *   :  x      
   ****************************
  0    Y2 Y1   産出量



 図がややこしくなっているので読みづらいかもしれませんが、著者が述べていることは「正しい」と考えてよいと思います。

 要は景気後退に直面したときに、政府が「財政出動や金融緩和をすれば」物価水準は元に戻り、「何もしなければ」物価水準は下落する、ということです。



■関連記事
 「総需要曲線は右下がり
 「総供給曲線は長期で垂直、短期で右上がり

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (peko)
2011-08-24 11:03:16
こんにちは!
某司法ブログからきました。

memo26さんはマンキューの入門書がおきにいりなのですね。
ちょっとなつかしく思いました。




Unknown (memo26)
2011-09-02 15:50:44
 コメントありがとうございます。

 マンキューの教科書は「実例」が多いところがいいと思います。理論が現実と結びついていることが見事に示されていると思います。

 某司法ブログの内容には、疑問点が多々あります。ブログ主さんご自身が、「あえて(=わざと)偏った意見を書いている」と言っているくらいですから、疑問点が多いのは当然かもしれませんが…。

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