これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

不動産の負の遺産

2021-01-09 09:52:37 | 不動産の価格
【はじめに】
 バブル崩壊(1991年~93年)までは『土地神話』が有りました。 土地神話とは、「不動産の価格は上昇し続ける」と言う、迷信です。 結構な高学歴の紳士/淑女達でも、この神話を信じていました。

 現在は、価値が全く無い不動産が増えており、お金を付けても貰ってもらえない不動産さえ出て来ています。今回は、この問題について考えてみました。

【買い手の無い不動産】
 2017年に、私は元気な内だけ一人暮らしがしたくて別の住まいを見付けようとしました。大抵の方はご存知無いと思いますが、1970年代に建てた集合住宅が格安の価格で買えるのです。

 私が住居を探したのは兵庫県・加古川市(人口26万人)の郊外です。 明石市から姫路市の沿岸部は今でも工業地帯で沢山の工場が有りす。 昔は沢山の人が働いていましたが、省力化が進んだ等々の理由で労働者が減りました。 更に集合住宅に入っていた方が一戸建てに引っ越したりして、集合住宅に沢山空き室が出来る様になったのです。

 私が気に入った物件は、5階建で、150室ほどの団地の1階の一室でした。 (妻が家から遠すぎると反対したので、買いませんでしたが。)

 東京の様な大都市に住んでいる方には多分信じて頂けない話しだと思います。 問題です :次の条件の一室が幾らすると思われますか?

① 交通 :私鉄(山陽電車)の各駅停車しか止まらない駅から徒歩10分以内
② 大形スーパーまで650m(徒歩10分程)
③ 鉄筋コンクリート造、築40年程、5階建ての1F、専有面積=67.43m2
④ 南東向き
⑤ エレベーター :無し
⑥ 間取り :4DK=6畳3室―4.5畳―DK6畳―風呂―トイレ―洗面所
⑦ 収納スペース :1間の押し入れ✕2、半間の押れ✕2、半間強の物入✕1
⑧ バルコニー :2面
⑨ 畑 :約5坪 (長年野菜などを栽培していた様で、良質の土に成っていました。)
⑩ 管理費4,000円/月(日勤の管理人)、修繕積立金11,630円/月、町内会費など900円/月
⑪ 駐車場を借りる場合は :3,000円/月
⑫ 固定資産税 :30,000円/年(?)
⑬ 第一種住宅地域で、土地(約2,600坪)は共有(1/150の所有権付)
⑭ リフォーム :3年前に二階から水漏れが有って、全室の天井、壁、床を全て張り替えていたので、内部は新築の様でした。

正解 :不動産屋が提示した価格は『300万円』でした。 持ち主と交渉すると、『280万円+真新しいエアコン1台』になりました。

(余談) 持ち主は54歳で、大手重機械メーカーに勤務されていました。2年前に奥さんが亡くなられ、早期退職して郷里に帰って百姓をすると言っていました。 郷里には既に家が完成していて、休日に家具を少しずつ運んだそうです。 私が行った時は最低限の物しか置いていませんでしたので、空き室同然でした。 1台だけ残っていたエアコンを私にくれると言ったのです。

 目立つ所に二十歳そこそこの、和服美人の真新しい写真を飾っていました。 「綺麗なお嬢さんですね!」と言うと、「家内です」と答えました。 2年前に亡くなられ、子供は授から無かったそうです。 (雨漏りの後に、ネガから新たに焼き付けた写真だたので、焼けが無かったのです。それで、私はお嬢さんと勘違いしました。)

【3F以上の価格は?】
 上記の団地には空室が沢山有りました。 案内してくれた不動産屋の話しでは、「エレベーターが無い為に3階以上は買い手が無く、110万円で募集しているが、全く売れない」、「入る前にリフォーム工事が必要ですが、買ってくれるなら幾らでも良いと言う持ち主が多いい」と言っていました。

 3階以上の部屋の持ち主が亡くなった時、他に資産が無ければ相続放棄出来ます。 不動産屋の話しでは、「そんなケースは殆ど無く、相続人が修繕積立金など”毎月2万円ほど”払い続けている」と言っていました。

【部屋のリフォーム代】
 私は3年ほど前から、大阪市内の賃貸マンションの管理をしています。 その経験から、上記団地の部屋をリフォームする場合の費用を考えて見ました。

  二つのケースで考える必要が有ります。①自分が快適に住み続ける為のリフォーム。②部屋を売却するか貸す為のリフォーム。(私が気に入った部屋は、団地の管理組合が積み立てた金『修繕積立金』でリフォームしたと推察します。)

 のケースでは、住居者の年齢にもよると思われますが、最低限必要なリフォームをすると予想されます。 部屋に家具や電気製品を置いた状態でリフォームする場合は、それらを移動させながら工事する事になります。空き室のリフォーム以上に人手が掛かり、日数も掛かります。 工事の騒音とホコリを覚悟する必要が有ります。 小規模な工務店では、家具などを移動する人手を確保するのが難しく、マンションのリフォームを手掛けている中規模以上の会社に依頼する必要があります。 その場合の工事費は、20~30%高くなります。

 の売却と賃貸目的のリフォームについて考えて見ます。 筑後40年以上ですから、長く人が住んでいない部屋はカビが多量に発生している恐れが有ります。 余り酷い場合は、壁紙を張り替えても2~3年でカビが増殖してしまいます。 私の管理しているマンションでは、昨年・壁板と天井を剥がして張り替えました。 その時、廃材撤去費だけでも20万円以上掛かりました。

 30年以上前ののユニットバスの排水トラップ部は鋳鉄製のケースが多く、長く使用していないと錆が成長して髪の毛などが付着し易くなるので、スムーズな排水が出来なくなってしまいます。(そんな時、高圧洗浄しても錆は取れないので駄目です。) ユニットバスの場合は、排水トラップ部だけを交換する事は出来ません。 ユニットバスの更新の為には、浴室の壁、床を剥がす必要があり、70~100万円は掛かります。

 この集合住宅の4室(22.5畳分)全てが和室でした。 畳は全て貼替では無く、更新が必要と思われます。 最近、賃貸マンションでは洋室が好まれますので、私が持ち主だったら、2室の和室の間の壁を取り払い、12畳の洋間にリフォームします。

 3階以上の部屋を全面的にリフォームしても、買い手が付く可能性は低いです。私は、エレベーターの無い集合住宅の4階と5階には絶対に住みたくないです。

(余談) 去年、私が管理している賃貸マンションの1室を全面的にリフォームしました。 この部屋の専有面積は、この集合住宅の60%しか有りません。 何時もお願いしている業者に、暇な時間に工事して貰い、値切りに!値切った価格は270万円でした。通常では300万円以上したと思います。

 転居した一家は、このマンションに30年以上住んでいて、10年程前に奥さんが寝たっきりになり、窓を開けなかったのでカビが一面に発生してしまいました。室内の板を全部剥がす必要が有り、ユニットバス、システムキッチン、便器、洗面台などの更新も必要でした。

【この団地の土地価格】
 上記の団地の土地(約2,600坪)は共有で、各室の所有者は『17坪(≒57m2)』の土地を所有している事になります。 私が管理している大阪の賃貸マンションの周辺の地価は70~80万円/坪ほどです。 加古川市の郊外では20~30万円/坪ほどでしょうか?

 30万円/坪だと仮定すると、510万円の土地を所有している事になります。 所有者の大半の同意が得られて、集合住宅を解体して更地にしたら、今なら510万円得られる様に思われるかもしれません。 150室ほど有りますから、解体の同意を得る事は至難の業です。 非入居の持ち主は、多分・入居者の移転費用を負担する必要が有ると思われます。

 鉄筋コンクリート造のビルの解体費用は、木造と比較すると高いです。 廃棄物の処理代が市町村によって大幅に違うので一概には言えませんが、団地を一度に解体したとしても、1戸当たりの解体費は200~300万円は掛かると思われます。

 鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年です。 47年経つと資産価値がゼロになると言う意味で、手抜き工事無しに建てられていたら、住居としての使用は70年や80年は優に可能です。最後の住人が出るのは、今から30年~40年後になると思われます。 30年後だとすると、非入居の持ち主は、24万円/年✕30年=720万円負担しなければならないのです。

 少子化が進み、人口が減少しているので、地方都市の郊外の宅地価格が上昇するとは考えられません。

【負の価値の不動産】
 上記の様な状況の団地が、全国に沢山あり、今後・更に増加すると私は予想します。 1983年頃に、私は札幌から夕張市に何回も車で出張しました。 途中で廃屋になった、鉄筋コンクリート造の大規模な団地を何カ所か見ました。石炭産業が栄えた頃の残存物だったのです。 その時は、加古川市の様な所が、同じ様な状況になるとは全く予想出来ませんでした。

 私がこの団地の住人で、預貯金が4,000万円あり、子供が二人いたとします。 現在の法律では『110万円/年』以下の贈与は非課税です。子供名義の銀行口座を2口作り、その口座に毎年『110万円/年✕2=220万円』預けます。 18年間で私の預貯金はほぼゼロになります。

 出来の悪い子供だとしても、銀行のキャッシュカードを自分で保管していたら、子供に横取りされる心配は有りません。 私が死んだら、子供達に相続放棄させれば、負の価値の不動産を子供達に引き継がせる事は有りません。 こうすれば、 『婆(ババ)を引く』のは国と地方公共団体になります。

 負の価値の不動産が増加してくる問題を、国・地方自治体、議員達、役人達は検討している様には見えません。 仕事を欲しい弁護士が沢山いますから、負の価値の不動産を所有している人に、種々・アドバイスすると時代になると予想されます。 早急に対策を考え無いと、国と地方公共団体は負の価値の不動産を沢山抱え込む事になります。

(余談) 相続税を節約する合法的な手段に、(毎年110万円以下の贈与をする方法の他に)生活費の補助と学費の補助が有ります。 生活費と学費の補助には金額の制限は有りません。 年収1,000万円の人が、親から毎月50万円(年間600万円)補助を受けても、全て使い切ったら非課税扱いになる様です。法的には、貯金したら、その分が課税対象になります。 然し、現在は、誰がどれだけ貯金したか?を調べるのは難しいですから、実質的には非課税になっていると思われます。

 預貯金口座とマンナンバーを連結させれば、生活費と学費の補助による相続税の節約は難しくなると思われます。 私は、預貯金口座とマンナンバーの連結に大賛成です!




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