MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

変転するトリオ

2013-05-08 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

05/08 私の音楽仲間 (486) ~ 私の室内楽仲間たち (459)



              変転するトリオ




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                  変転するトリオ
                  意地悪爺さん




 Mozart の弦楽四重奏曲 変ホ長調 K428

 第Ⅲ楽章 “Menuetto” には、美しい “Trio” があります。



 演奏例の音源]では、これに先立って、変ホ長調の
Menuetto の、最後の4小節が聞かれます。







 [譜例]は、ViolinⅠ のパート譜ですが、様々な楽器が
テーマを受け継いでいますね。

 Violaチェロが一度ずつ。 Vn.Ⅱ は三回も。

 その間に、様々な調が登場します。



 Trio は、まずハ短調で始まる。 ViolinⅡ変ロ長調
受け、前半の二段が終ります。



 後半は、再び短調で始まります。 今度はト短調

 しかし、これを受け継いだ Viola は、「もう短調はいいよ。
明るい “ヘ長調” にしようね!」



 「みんな、やっぱり長調がいいの?」…と、続く Vn.Ⅰ。

 「そのようだね」…とチェロが応えます。



 「でもね、また変ホ長調の Menuetto に帰らなきゃ
いけないんだ。 せめて変ロ長調に戻って締めない?
♭を、もう一つ増やそうよ!」



 こうして、転調の対話は終ります。




 この Trio の調号は、♭が2つ。

 「あれっ? おかしいな? 音楽はハ短調なのに…。」

 最初の疑問も、終わってみれば、解消、納得…。



 ハ短調 (♭♭♭) ~ ヘ長調 (♭) の間で揺れる音楽にとって、
“♭2つ” は、ちょうど間を取っていることになります。



 しかし注意しないと、書いてない♭を付けて弾いてしまい
そうです。 La の音に。

 実際にこの音源でも、うっかり “La♭”を鳴らしてしまった
仲間がいました。



 二段目の中ほどには、自分で書きこんだ “?” がご覧
いただけます。

 一小節前で、ちゃんと同じ音を弾いていても、こうしない
と安心できません。 一瞬、躊躇してしまうのです。




     [音源ページ ]  [音源ページ