05/08 私の音楽仲間 (486) ~ 私の室内楽仲間たち (459)
変転するトリオ
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
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Mozart の弦楽四重奏曲 変ホ長調 K428。
第Ⅲ楽章 “Menuetto” には、美しい “Trio” があります。
[演奏例の音源]では、これに先立って、変ホ長調の
Menuetto の、最後の4小節が聞かれます。
[譜例]は、ViolinⅠ のパート譜ですが、様々な楽器が
テーマを受け継いでいますね。
Viola、チェロが一度ずつ。 Vn.Ⅱ は三回も。
その間に、様々な調が登場します。
Trio は、まずハ短調で始まる。 ViolinⅡ が変ロ長調で
受け、前半の二段が終ります。
後半は、再び短調で始まります。 今度はト短調。
しかし、これを受け継いだ Viola は、「もう短調はいいよ。
明るい “ヘ長調” にしようね!」
「みんな、やっぱり長調がいいの?」…と、続く Vn.Ⅰ。
「そのようだね」…とチェロが応えます。
「でもね、また変ホ長調の Menuetto に帰らなきゃ
いけないんだ。 せめて変ロ長調に戻って締めない?
♭を、もう一つ増やそうよ!」
こうして、転調の対話は終ります。
この Trio の調号は、♭が2つ。
「あれっ? おかしいな? 音楽はハ短調なのに…。」
最初の疑問も、終わってみれば、解消、納得…。
ハ短調 (♭♭♭) ~ ヘ長調 (♭) の間で揺れる音楽にとって、
“♭2つ” は、ちょうど間を取っていることになります。
しかし注意しないと、書いてない♭を付けて弾いてしまい
そうです。 La の音に。
実際にこの音源でも、うっかり “La♭”を鳴らしてしまった
仲間がいました。
二段目の中ほどには、自分で書きこんだ “?” がご覧
いただけます。
一小節前で、ちゃんと同じ音を弾いていても、こうしない
と安心できません。 一瞬、躊躇してしまうのです。
[音源ページ ①] [音源ページ ②]