おやままさおの部屋

阿蘇の大自然の中でゆっくりのんびりセカンドライフ

森村誠一「魂の切影」

2013年12月17日 07時37分39秒 | 日記


雪が降ってきた。

見上げると目の前の夜峰山もその後方の烏帽子も中腹まで真っ白だし、背後の南外輪山も雪を被っている。

いよいよ来た

今日は妻が実家に親の介護で出かける日なので、一日不在。

何をするか?一仕事が目前にある。

年賀状は今年宛名だけはパソコンで一挙に!裏書は全部小筆墨字で書こうと決意。

昨日はくずしの字体を調べ、練習を重ねた。筆慣れしなければいい字は書けない。折角送る「気持ち」だ、気持ちの伝わるような美しく誠意あるものにしなければー

森村誠一の「魂の切影」あと数ページ残すばかり。

小説家が300年の歴史を超えて出合った恋人。宮田美乃里はフラメンコダンサーであり歌人である。しかし無念にも乳がんに冒され左乳房を切り取っている。そして全身に転移し余命の切れる時が迫っていた。

しかし、小説家は最後にフラメンコの舞台を用意した。モルヒネで意識が朦朧としていて、半醒半睡の寝たきりの状態にあった彼女が奇跡を起こす。

動かなくなっていた手足が哀切で激しくかき鳴らされるギターと和太鼓のリズムに呼応して動き始め見事に熱情溢れるステージを踊り切る。

これは小説。ところがネットで少し調べてみたら、なんと宮田美乃里という女性が実際に存在していて、カメラマンの荒木某のレンズに切り取られた乳房そのままに写真となって残っているではないかー

これは何だ?小説には実際の名前で登場させ、徹底的に宮田に寄り添い思いを聞き届けた上で事実を丹念に書き上げさらにフィクションで膨らませて作品にしている。

本の中には荒木氏の撮影の事も出てくる。

小説家との出会いによって彼女はガン末期にありながら全身全霊を傾けたフラメンコのステージに登り、恋焦がれた岐阜高山旅行へも出かけている。

こういう壮絶な生と死がある。悲しいけれどそれは単なる悲哀ではなくて、読むもの見るもの観るものに感動と勇気を与える。

深く心を揺さぶられた作品だった