今朝は、珍しく
遅起きのおじさんが、むっくり起きてきた。
サッカーが観たかったんだよね?
おはようございます。
終わってたけどね、ふっふっふっふ。
「あら~、終わってまった?あら~」って
嘆きながら、また寝に行きましたが、
彼の使う言葉は、名古屋弁だ。
私は、三河に暮らしている、
三河弁と名古屋弁のバイリンガールだ。
そんな私は、サッカーの試合と同じくらい、
おじさんの着ているTシャツが気になっている。
「生地が死んでいる。」(※1)
三河弁は、よく「じゃん・だら・りん」だけだと
思われているが、そうでもない。
名古屋の人が、エビフライをエビフリャーと
表現すると思われているのと同じだ。
言っておきますが、名古屋の人だって、
エビフライはエビフライと呼んでいるつもりなのだ。
そして、エビフライと聞こえる耳を持っているんだ。
三河の人々も、じゃんだらりんなんて、
そんなに使ってないじゃんね。
そうだら?(そうでしょう?)
隣のデスクの熟女さんなんて、
「あのね、おかっぱちゃん?
三河弁って、実は、ほぼ標準語じゃんね。
ほだら?ほーだら~(※2)?」
(※2)ほーだら
これは、主に中年以上の三河人が用いる「そうでしょう」の最上級
そんな三河人は、じゃんだらりんを安売りはしない。
例えば、この時期、雨はよく降る訳だが、
「雨が、じゃんじゃん降っています」なんて言わない。
我々は、雨は、バーバーと表現する。
「雨が、バーバー降っとるじゃん」となるのだ。
もっと熱く伝えたい時は、
雨は、バーバーを越えて、バーバカとなるのだ。
そして「みりん、きりん、どきん」も、
調味料でもないければ、動物でもなく、
やなせたかしさんでもないのだ。
見りん、着りん、退きんなのだ!
これらを知らずに、
三河の借り物競争に参加したら、大変なことになる。
そして、
もう一つ、気を付けなければならない事がある。
もし、あなたの彼氏が、三河生まれのたけしさんだったら、
彼の名を、「たーけー」と叫んではならない。
温厚な三河人は、バカと呼ばれてもアホと呼ばれても、
決して、怒ったりはしない。
むしろ、気を許してくれているのだと嬉しく思う。
しかし、「たーけー(※3)」と言われると、
思いのほか、凹んでしまう。
たけしとルミが、お化け屋敷の中で、
怖さのあまりルミが「たーけー」と叫んでしまったら、
たけしは、どう思うだろう?
助けを乞うために名前を叫んでいると思うだろうか?
いや、ルミは怖さのあまり、
「入ろう」と誘った俺に、キレて暴言を吐いてるんだ。
そう思うだろう。
そうなれば、おばけにではなく、ルミの本性を目の当たりにして、
たけしは、ぞぞけが立つだろう。(※4)
(※3)たーけー
たわけ者という意味
(※4)ぞぞけが立つ
恐ろしくて、鳥肌が立つ様
そんな三河人は、「死」という概念を、
身近に感じている。
スネを強く打ち付け青あざができれば、
「血が死んだー」とのたうち回り、
洗濯したてのTシャツを着た時、
そんな爽やかな瞬間に、
「これ、生地が死んでる」と呟く。
(※1)〇〇が死ぬ
使い物にならない状態を表す
何度も着て、何度も洗い、
そうやって、生地は徐々に死んでいくこともあれば、
一瞬にして、死んでしまうこともある。
破れた時ならもちろんだが、
見た目、どうって事ないと思えても、
洗ったのに、どことなく、オンボロに見えた時、
洗剤の残り香を越えてくる取れない臭いが染みついている時、
三河人は、
「お前は、もうすでに、死んでいる」と、
諦めて別れを告げるのだった。
おじさんのパジャマ代わりのTシャツも、
もうすでに、死んでるなって思った朝だった。
おい、おたま!
死んでるみたい寝のおたま!
気持ちよさそうじゃん寝。