今、私は、フワフワした、
小さな猫を世話している。
その子の長い被毛を撫ぜながら、
似たような、うめを思い出そうとしても、
もう、思い出すことができない・・・
おはようございます。
昨日は、うめの2回目の命日だった。
この手は、もう、君の被毛を覚えていない。
抱いた重さも、忘れてしまった。
私は、決して、いい飼い主ではなかった。
うめと出会った頃は、ひどく荒んだ生活をしていた。
猫を迎えたからって、大した世話もせず、
いつも自分の事ばかり考えていた。
あれが欲しい、これが足りない、と不満ばかりで、
本当は、何を掴みたいのかなんて分かりもしなかった。
欲しがるばかりの私は、
闇雲に手を伸ばしては掴み損ね、
そんな事を何度も繰り返して、
気付けば、残ったのは、3匹の猫だけだった。
欲しいモノは、、何ひとつ手に入らない、と嘆いた。
ボロアパートに越してすぐ、
今度は、空から、猫が降ってきて、
何もない部屋に、猫が1匹、増えてしまった。
見たこともないほど、小さな猫に、戸惑っている私をよそに、
うめは、当たり前のように、子猫を育て始める。
ご飯もろくに食べないで、子猫に寄り添う、うめにつられて、
私も、寝る間を惜しんで、慣れない手つきで、ミルクを飲ませた。
万年床に一人と1匹、並んで座り込み、
私が夢中でルクを飲ませて、倒れ込んだ後は、
うめが、子猫の体を丁寧に舐めてやった。
そんな、ある日、子猫は病気に罹った。
「あまり期待はしないように」と告げられ入院させて、
泣きながら手ぶらで帰ってきたら、
玄関には、うめが、いつものように静かに待っていた。
そして、やっぱり、
万年床に、一人と1匹、並んで座り込んだ。
すると、いつもは遠巻きで見ていた、2匹が、
布団の上に乗ってきて、スリスリと甘えはじめるものだから、
ついさっき、やっと泣き止んだのに、
私の眼から、またボロボロと涙があふれてきた。
失いたくない
私は、この時、ようやく、
見えない何かを、掴んだ気がして、心に、勇気が湧いてきた。
それを与えてくれたのは、うめと愉快な仲間達だった。
この手は、もう、君の被毛を覚えていない。
あの時、掴んだモノが、何だったのか、
いまだ、言葉に表す事も出来ずにいる。
けれど、決して忘れてはならない、
その何かを握りしめているから、
私は、今を生き続けていけるのだ。
うめさん、ありがとう。