嘘日記 ６月１０日

　テスト３日目だった。
　小生は昨日、あんまり勉強がはかどらなかった。
　なぜなら、最近身の周りで起きたある事件について色々考えていたからである。
　犯人をどうやって割り出すか。
　これが犯罪者だったり、頭のきれる者であったら、無理である。
　しかし、どうやら今回の犯人は、いささか臆病者であるらしい。
　すでに犯人の目星はついており、あとは証拠をつかむだけなのだが、その仮の犯人が、色々姑息なマネをしている。
　自分が犯人です、と言っているのも同然である。
　しかし彼の気持ちも分かる。
　自分がもし容疑者になっていたら、なんとかして潔白を証明しようとするか、操作をかく乱しようとするはずである。
　それは小生も同じであろう。
　実はこの仮の犯人、小生としては逃げおおせてほしい。
　犯人だと分かってしまったときの彼の被害を考えれば、とても可哀想だからだ。
　しかしその一方で、早く楽にしてやりたいという気持ちもあるにはある。
　今の彼は、毎日を怯えて暮らしているのではないだろうか。
　いつ……いつバレるんだ。
　いつか来るかもしれないそのときを想像して、恐くて仕方ないんじゃないか。
　彼は小生の友人というわけではないけれども、それなりに親しい関係ではある。
　彼にとって、どちらが良い道なのか。小生は考えあぐねるしかない。
　もし自分が彼の立場だったなら……。
　やっぱり、どちらがマシかも分からない。
　バレたら、自分の願いが絶望的になってしまう。
　バレなくても、「あぁなんで俺はあんなことやっちまったんだ」と後悔し、毎日怯えて暮らさなければならない。
　小生は彼を可哀想に思う。
　まだ彼が犯人だと決まったわけではないけれど。

　ちなみにテストは上出来だった。
　勉強していないのに意外と出来た。
　そんな自分を誉めてやりたいところだが、なんか自慢くさくてムカつくのでやめておく。