子供

　ぼくはまだ未成年である。
　しかしそれもあと４８日ほどで終わりだ。
　二十歳……つまり、大人になってしまうのである。
　ぼくは大人になんかなりたくはない。大人になると途端に社会的責任を背負わされるからである。
　それだけではない。二十歳になると酒もタバコも解禁になり、酒が飲めないと人付き合いが円滑にならないしタバコの煙を吸う機会も多くなるわけである。
　酒が美味いなんて感じたことはないしむしろ不味いと思う。タバコの煙なんて最悪に嫌いだ。
　そういう不健康な環境に晒される機会が増えるのだと考えると気が重い。
　なにより会社という組織に所属して他人と波風を立てないように慎重に生活しなければならないのである。
　対人恐怖症のぼくにそんなことできるわけないじゃないか。
　学校では浮いた存在で一人で好き勝手できた。しかし社会はそんなに甘くはないのである。
　自動車学校で性格診断テストをやったのだが、いつものように、神経質で回帰性が高く協調性がないと診断された。
　ささいなことに敏感になり怯え過去の失敗を忘れられずいつまでも引きずって他人と息を合わせることができない精神不安定人間だということである。
　なんだそれ。
　当たりすぎだよ。
　あんなテスト、真剣にやるんじゃなかった。テキトーに誤魔化しておけば良かった。
　真面目にやってもいつだって結果は同じだ。ぼくは弱い。
　強くなりたい……。
　せめて、妹を守れるだけの強さが欲しい……。