みまかる

　祖父が、みまかりました。
「御罷る」と書くのかどうかもわからない言葉ですが、使います。
　昨晩に、軽トラックに撥ねられたそうです。
　新聞に、国道でぶつかり搬送先の病院で息を引き取ったと書いてありました。
　うちの実家関連のことが新聞に載ったのは初めてではないですが、祖父は派手とは逆の生き方をする人だったのでまさかの最期でした。
　しかしあんな開けた、しかも見通しの悪くない道路で、なぜ。
　別に何かの陰謀とか、そんな考えはありませんが、あんな善人然とした人が、どうしてこうなったのか、不思議でしかたありません。
　善人が生き、悪人が死ねばよさそうなものを、どうして。
　強ければ生き、弱ければ死ぬ。
　運が？
　運命というモノがあるとすれば、運命を定めた者ほどよくわからない者はいないですね。
　ボクが代わりに死ねばよかったのですけれど、ま、残された者は託された者、ということで、祖父のまだ続いていたかもしれない善行の分くらいは、ボクもそれくらいの善行は積まなければなりませんね。
　積んでも得をするかどうかは別として。
　損得勘定は尊徳感情に反する。
　己の損得を気にしない人にだけ、尊い、徳が得られる。みたいな。
　貴(たっと)ぶ。
　まぁ、たしかに祖父は貴ばれる。
　それだけの善意に溢れた人だったから。
　みならわなくちゃ。