お門違いの文句

　文句を言わせて下さい。
　お門違いなのはわかってます。
　文句を言える立場でないこともわかってます。
　励ましの言葉だってわかってます。
　多少なりとも心配して言ってくれてるのもわかってます。
　わかってます。
　わかってますけど、言わせて下さい。

　もう何も言うな。

　わかってないのにわかったふうに言うな。
　人の不安を勝手に推測して勝手に同情するな。
　頑張り方を教えてくれないのに頑張れと言うな。
　ぜんっぜん頑張ってないオレに偉いとかテキトーなこと言うな。
　金のないオレにもっと遊べとか言うな。
　我慢しすぎたらいけないとか言われても困る。
　別にオレは好きで我慢してるんじゃない。そうせざるを得ないから我慢しているだけだ。
　あぁもうやめてくれ。
　頑張れとか言われて、頑張る気はあってもどう頑張ればいいのかわからないままに、はい頑張りますと、オレは答える。
　建前だ。嘘の返事をオレはする。
　そうして嘘をつくたびに罪悪感が込み上げる。
　そう答える以外になにができる？
　どう頑張ればいいんですかと聞くか？
　聞いてどうなる？
　普通の返答が帰ってくるだけだろう？
　普通の人間がそうしたらうまくいくマニュアルに沿ってアドバイスするだけだろう？
　だってあんた達はオレのことなんか知らないのだから。
　もっと掘り下げて話をするか？
　それはいけないだろう。
　そんなことすればオレは異常者として変な扱いを受けるんだから。
　それに、仕事仲間なんて所詮は無駄話をするだけの関係にすぎない。
　愚痴の言い合いをしたりするだけ。
　それならとうにしている。
　オレは聞かれればなんでも答えるから、オレの事情は相手はわかっている。
　わかっているが、オレの考え方など知りはしないままに、その状況から勝手にオレの内心を推測する。
　まとはずれだよ。
　世間一般ではそれで合っているのだろうし、たぶん、オレが他人だったら同じことを言うだろう。
　オレは普通じゃない。
　しかし、どこが違うのかはワカラナイ。
　ワカラナイから困っている。
　自分が異常なのはハッキリしているのに、どこがどう異常なのかはまったくワカラナイという有様。
　ときどき、自分のわけわからん内心を吐露すると、相手は「は？」と言う。
　しかたない。
　オレ自身にもワカラナイんだから。
　しかし、しかしだ。
　聞かれたから答えたのに、は？　と言われても困る。
　なんなんだ。
　無性に腹が立つじゃないか。
　頑張れは怖い。
　オレもよく言うから他人のことは言えないが、頑張れって、いったいこれ以上なにを頑張れというんだ？
　オレだって頑張りたいよ。
　でも頑張れないなにかがオレの中に根強くあったり、他の感情が邪魔したりして、パニックになったりして結局何もできずにいるんだ。
　自分でもなんかよくワカラナイうちにそうなっているんだ。
　だから説明のしようがない。
　つまりオレ自身がオレ自身のことをなに一つ理解していないことに原因があるのだ。
　表層の感情にばかり目がいって、根底の根源的な感情がまったく見えていないようなそんな状態。
　だと思う。
　あぁ……わけわからんなほんと。
　えぇわたしだってできれば病院行きたいですよ、なんかよくワカランこの頭の中を診察してもらってちょっとは楽になりたいですよ。
　でもだけど、病院に行く金などないし、病院に行ってもまったく治らずに苦しみ続けている友人もいるし、じゃあ薬飲んだって気休めくらいにしかならないし、病院行くのめんどいしあぁもういいや。
　って、いつもなげやりなんです。
　頑張りたいけど、頑張れない。
　いつも鳴りやまない警告が今日も鳴る、鳴り続ける。
　どーでもいーこと言いました、すみません。