月の海

月から地球を見て
      真相にせまる

イン・ザ・ファインダー 16

2020年04月30日 22時47分12秒 | イン・ザ・ファインダー
 この店はテーブルのお客さんはアルバイトの女の子が担当していて
カウンターのお客はマスターが担当しているらしい。
マスターが私と由紀ちゃんを見て相沢に言った。
 「女性を二人も連れて、再婚相手が決まったのか。」
 私と由紀ちゃんは怪訝な顔をしてお互いに向き合った。
すると相沢が困った顔をして言った。
 「どちらも違うよマスター。俺はまだ再婚しないよ。」
 「何だそうか。」
 「あのぅ。相沢君は結婚したって聞いたけど。」
 私が攻める様に言うと相沢は遠くを見る様にして言った。
 「女房とは別れたんだ。」
 「そうだったの。ごめんなさい。」
 そう私が言ったけど相沢は黙ったままだった。私もそれ以上は何も言えなかった。
少し雰囲気が沈みがちになった時にマスターが由紀ちゃんを見て。
 「本屋のアルバイトはどうだ。」
 と言うと由紀ちゃんは。
 「明日香さんと一緒なので結構楽しい。」
 「そうか。」
 マスターがそう言ったので私は由紀ちゃんに聞いた。
 「由紀ちゃんはこの店知ってたの。」
 「えぇ本屋さんでアルバイトをする前は、ここで夜だけアルバイトをしてたの。」
 「そうだったの。」
 「ただ大学の関係で毎日じゃなかったから相沢さんや今日香さんには
会った事はなかったの。」
 「だって相沢君はお盆とお正月くらいしか来ないから会えるわけないよ。」
 私がそう言うとマスターが言った。
 「今日香ちゃんも仕事が忙しかったようで月に一回位しかこなかった。
ところで二人ともまだ独身。」
 と聞いたので私達は黙ってうなずいた。それを見てマスターが言った。
 「大翔はバツイチだけど結構いい男だし子供もいない。二人はどうですか。」
 「また、その話かよ。」
 相沢はそう言ったが、相沢だったら気心も知れてるし確かに悪くない。
私はそう思ったけど由紀ちゃんは。
 「私はまだ学生ですし、これから就職もしないと。」
 と辞退した。じゃあ私しかいないと思ったけど相沢が言った。
 「マスター俺はまだそんな事考えていないよ。話を変えようよ。」
 「そうか残念だな。」
 マスターがそう言うと由紀ちゃんが言った。
 「マスターは写真を撮るのが趣味なの。
そんな関係で私は今でもこの店にたまに来ているの。」
 「そうなんだ。」
 そう言われて店内を見回すと確かに所々に風景写真が飾ってあった。
多分それはマスターが撮ったものだろう。
 「おじさんも良く来るのよ。」
 「へぇ。あのエロじじいが。」
 私がそう言うと由紀ちゃんは笑って。
 「私があの本屋さんでアルバイトをするようになったのは、
ここでおじさんと会ったからなの。」
 「なんだそうなの。みんな写真つながりでここに飲みに来てるのね。」
 私がそう言うと相沢が言い出した。
 「俺は写真なんかやんないよ。
ここへ来る理由はこの商店街には飲み屋をやっているのが
ここと焼鳥屋しか無いからだよ。水島はいいけど由紀ちゃんを
焼鳥屋には連れて行けないだろ。」
 「何よそれ。私と由紀ちゃんのどこが違うのよ。」
 「由紀ちゃんは学生だし焼鳥屋は似合わないよ。」
 「私は焼き鳥が似合うの。」
 私がそう言うと由紀ちゃんが言った。
 「そんな事ないわよ。このあいだ男友達とあそこの焼鳥屋で飲んだもの。」
 「そうかぁ、確かにあそこの焼き鳥はうまいよ。」
 相沢がそう言うとマスターが言った。
 「できればみんなうちに来てくれよ。」
 「そうだな。それにしても偶然というか不思議な縁だよな、
みんな何だかんだで、つながっているんだから。」
 「と言うよりこの街がせまいだけだよ。これでも東京なんだがな。」
 マスターがそう答えると相沢が言った。
 「そうだな。それがこの街のいいところかも知れない。」
 この店に来ると私は本当に今日香の事は何にも知らなかったんだと思った。
今日香が生きているうちにもっと知っていれば良かった。
 その後くだらない話をしていたら相沢が私と由紀ちゃんに聞いた。 
 「お盆休みはあるのか。」
 「おじさんがお盆は帰省する人が多いから、
お客さんが減るので休むって言ってた。」
 そう私が答えると。
 「もし予定が入ってなかったら家の別荘へ来ないか。」
 「私、大学の友達と旅行に行く事になってるの。」
 由紀ちゃんが直ぐに言った。私が黙っていると相沢が。
 「水島はどうなんだ。」
 「特に予定はないけど・・・。」
 「じゃあ行こうよ。」
 「でも私一人じゃ・・・。」
 「違うよ両親と妹夫婦も一緒だよ。」
 「あぁ、それなら・・・。」
 などと言っているうちに、お盆休みは相沢家の別荘へ行く事になってしまった。


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