月の海

月から地球を見て
      真相にせまる

イン・ザ・ファインダー 20

2020年05月06日 00時52分43秒 | イン・ザ・ファインダー
 今日は大翔の運転する車に乗って別荘を出た。
大翔が水着を着てくる様に言ったので下着の替わりに水着を着ていた。
今日も私の膝の上には今日香のカメラが乗っていた。
 「美香さん達も一緒じゃないの。」
 私は大翔に聞いた。
 「俺たちに気をつかったみたいだ。」
 「そんなぁ。」
 「一緒に来た方が良かったか。」
 「もちろんよ。で、どこへ行くの。」
 「マリーナ、葉山マリーナ。」
 「そぉ。」
 私はそれが何かを知らないので、そう応えた。
 「水島も料理をしているところを見ると、やっぱり女だよな。」
 「私は昔から女よ。」
 「そう言うところが男っぽいんだよ。」
 「その男っぽい女とキスしたくせに。」
 「あれは成り行きだよ。夕陽がきれいだったし水島だってそう思うだろ。」
 「そうなら二度とキスしないで。」
 なんでこうなるの、あれは成り行きだったの。
もう、こうなったら既成事実を造るしかない。
そんな事を思っているうちにマリーナに着いた。
 マリーナの建物に入ると大翔はレストランに行き大きな発泡スチロールの
クーラーボックスを受け取って言った。
 「これ今日の昼飯。」
 そしてマリーナの建物を抜け桟橋へ向かった。
いくつもある桟橋の一つに留めてあるクルーザーの前で止まった。
大翔は先にクルーザーに飛び移ると私に向かって手を伸ばした。
私はその手を掴みクルーザーに乗った。
すると大翔はクルーザーを飛び降りクルーザーをつないでいた
ロープを外し再びクルーザーに飛び乗った。結構、格好いい。
 「大翔って日本人の男にしては結構紳士なのね。」
 「あぁ、それは今の会社がアメリカの会社と共同研究をしていて。
アメリカで長期間研究している時期があったんだ。
それでアメリカでの生活が長くなって結局、向こうでのそういうレディファーストの
習慣が身に付いちゃったんだ。」
 それから大翔はクルーザーの運転席に座りエンジンをかけてクルーザーは動き出した。
私にはこんなの初めての体験だった。こんな事、今迄は一生ないと思っていた。
クルーザーが桟橋を離れると大翔が運転しながら言った。
 「下の船室に冷蔵庫と保温庫がある。
クーラーボックスの中身をそこに入れてくれないか。」
 大翔からさっきのクーラーボックスを渡されてクルーザーの中に入ると
確かに色の違う二つの扉があった。暖色の扉が保温庫で寒色の扉が冷蔵庫みたい。
大翔から渡されたクーラーボックスを開けると美味しそうな料理や飲み物が入っていた。
それをエンジンがかかって温かくなり始めた温蔵庫と冷え始めた冷蔵庫に分けて入れた。
それから上に上がり運転している大翔の隣に立って言った。
 「気持ちいい風ね。」
 クルーザーはスピードを増していた。
 「あぁ、ところで船は大丈夫。」
 「多分。」
 私はクルーザーに乗るのは初めてだったけど船酔いは
あまりした事がないのでそう答えた。
 「美味しそうな料理ね。」
 「俺の好きな物ばかりお願いしたけど。」
 「私も好き。」
 「そうか、良かった。」
 そう言って大翔は運転しながら隣にいた私の肩を抱いた。
 
 クルーザーの速度は速く、しばらく進むと周りは全て海で陸地が見えないくらいになった。
やがてクルーザーの速度は少しずつ遅くなりやがて停まった。
周りには少し離れたところに何隻かの船が止まっていた。
 「ここは魚礁があってダイビングスポットになっているんだ。」
 大翔はそう言って碇を降ろした。それから服を脱いで水着になった。
私も着ていたタンクトップとショートパンツを脱いだ。
この歳でビキニはどうかと思ったけど、その私を見て大翔は言った。
 「凄くセクシー最高。」
 それから大翔はステップを降ろした。
 「この辺はそれほど深くないからシュノーケリングをする人が多いんだ。」
 そう言って事前に買ってあったシュノーケリングのセットを出した。
子供の頃シュノーケルで遊んだことはあるけど大きくなってからは
海に来て使うことはなかった。
 大翔と一緒にフィンとゴーグルを付けてステップに立った。
大翔がボタンを押すとステップは下に降り始めた。
海面が腰の上くらいまで来たとき大翔はステップを停めた。
私達はシュノーケルをくわえた。大翔が私の手を取りステップを離れた。
私も大翔に引かれ海に身体を投げ出した。
 ゴーグルを通して見た海底は浅いせいか明るく照らされた岩場が続いていた。
岩場や海草の間にはブルーやオレンジなど熱帯魚の様なカラフルな魚が多く泳いでいる。
最初は大翔に手を引かれていたけど私も足を動かして大翔の横に並んだ。
しばらく泳いでいると別のシュノーケリングをしているグループがいて
時々底の方まで潜っているのが見えた。
大翔は私の手を引いて再びクルーザーの方へ戻った。
私達はステップに立つと大翔はシュノーケルを外し言った。
 「潜ってみる。」
 大翔は私にスキンダイビングの仕方を教えてくれた。
それから大翔はステップを離れスキンダイビングの潜り方の手本を見せてくれた。
私は海面に顔を付けてそれを見ていた。
大翔がステップに戻ってくると今度は私がステップを離れた。
ステップから少し離れたところで大翔から言われた様に
身体が海面と垂直になる様に海底に向かった。
でも身長くらいの深さまで潜った時に耳がものすごく痛くて潜るのをやめて海面に出た。
さらに海面に出たときシュノーケルに入った水を飲んでしまい、
あわててシュノーケルを外して大翔のいるステップまで戻った。
 「耳がものすごく痛い。」
 私がそう言うと大翔が答えた。
 「その時は鼻を摘んで耳抜きをするんだ。
それと海面に出たときは息を吹き出してシュノーケルに入った水を抜かないとだめなんだ。」
 「そうなの簡単だと思ったけど結構難しいのね。」
 「少し練習すればできるよ。」
 大翔はそう言ったけど私はその後は海面を泳ぐだけで一度も潜らなかった。
でも大翔は時々潜った。私は海面からゴーグルを通してそれを見ていた。
そんな事をしてだいぶ経った時、私と大翔はステップを上昇させてクルーザーの上に戻った。
 大翔は冷蔵庫を開け缶ビールを二つ出し一つを私によこした。
 「乾杯。」
 そう言って私達はビールを飲んだ。そしてクルーザーの上で昼食をした。
 「なんか熱帯魚見たいのがいっぱいいるけど温暖化のせい。」
 「多分違うと思う。俺も魚の名前は知らないけど、
カラフルな魚はこの辺にも昔からいたらしい。」
 「へぇ。」


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