電影フリークス ~映画のブログ~

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「少林寺英雄伝」と遙かなる少林寺

2011-06-17 00:50:21 | 七十年代作品【1979】

     シャオ リン イン ション バン
原題   『少 林 英 雄 榜』     Abbot of Shaolin

公開日 1979/7/11(水)   邵氏兄弟有限公司 作品
               116,880HK$ 1979年度第99位

スタッフ&キャスト

監督 何夢華(ホー・メンファ)

出演 姜大衛(デビッド・チャン)
   羅烈   (ロー・リエ)
   李麗麗(リリー・リー)
   徐少強(ツイ・シウキョン)


解説

少林寺を舞台に少林寺の英雄と呼ばれた主人公・至善禅師が混乱の時代を生き抜き、強敵・パイメイ(=白眉道人)との戦いを描くドラマ。監督は「北京原人の逆襲」のホー・メンファ。至善禅師を演じるのは『惡客』『新獨臂刀』「ドラゴンVS7人の吸血鬼」のデビッド・チャン。「キル・ビル2」にも登場したタランティーノ監督お気に入りのキャラクター"パイ・メイ"を演じるのは「キングボクサー大逆転」「少林寺三十六房」のロー・リエ。パイ・メイはこの作品のほか『洪煕官』『洪文定三破白蓮教』でも登場。これら3本の作品すべてにおいてパイ・メイを演じきったロー・リエは、見事なまでの人気キャラクターを確立した。このパイ・メイと至善禅師に馮道徳、五枚尼姑、苗顯を合わせた五人は”少林五老”と呼ばれている。

ストーリー
清朝打倒と明の復興をめざす少林寺の僧侶たち。しかし、武器を持つことを禁じられていた。至善(姜大衛)は、地下にいる管長から峨眉山の文殊道観へ行くように命じられる。重要な任務を任された至善は早速、明の将軍・無塵道人(楊志卿)を訪ねる。そして数ヶ月の間、銃の設計図、製鋼法を集めると同時に武術の鍛錬も行うこととなった。しかし、弟子の馮道徳(顧冠忠)や白眉道人(羅烈)は少林寺の僧は朝廷の逆賊であり、滞在すべきではないと言い放ち、縁を切って出て行ってしまう。
一方、至善は鍛錬に励む。中でも”一指禅功”は1本指で鐘を突くという凄まじい威力を持つ技であった。半年後、無塵道人の元で修行をし数々の秘技を身に付けた至善は少林寺へ戻る。
その頃、清朝皇帝から少林寺を全滅せよとの命令が下され、チベットのラマ僧・広元(江島)らは少林寺を襲撃。これが正に焼き討ちであった。至善は管長を連れて井戸から逃げ出すが、瀕死の管長は南方の広東に行って仲間を見つけるように言い、そのまま息を引き取る・・・。至善は燃え上がる少林寺を後にして少林寺再建を誓うのだった。
逃げた白眉道人は朝廷から道教の最高師範に任命されると、弟子を連れて文殊道観へ行き、無塵道人を殺してしまう。広東の町で騒いでいる李巴山(強漢)を懲らしめた至善は弟子たちを探していた。無塵道人の弟子・五枚(李麗麗)も至善を追って、静塵道観に身を潜めていた。やがて、後に少林十虎と呼ばれた李錦倫(徐少強)、洪熙官(唐炎燦)、鬼脚七(郭恩治)、童千斤(呉杭生)らが至善の弟子となって決戦の準備は整った。至善たちは力を合わせ金鐘罩の白眉道人に立ち向かうのだった…。


「潜入!少林寺・知られざる教練洞窟」ご覧になりましたか?
つい先日放送されたばかりですが、日本人俳優・北村一輝(「龍が如く劇場版」)が実際に少林寺の高僧から少林拳を習うというドキュメンタリーでした。
http://www.bs-j.co.jp/shorinji/
 
こちらの少林寺は河南省に実在する北の少林寺(嵩山少林寺)のことですが、この少林寺に日本の取材班が潜入出来たのはホントに凄いなぁと思います。嵩山少林寺も少しずつオープン化されつつあるのかも知れませんね。この番組の良さは少林寺の修行僧はなぜ闘うのか?という疑問を持つ北村一輝がその答えを探すところにあります。

さて、こちらも少林寺。その名を「少林寺英雄伝」(原題『少林英雄榜』)という少林寺映画の登場です。
今回は、映画と少林寺や中国の寺院について書いてみたいと思います。

まず、邵氏であの恐怖片『油鬼子』を撮ったホー・メンファ監督はどういう訳か少林寺物を撮ることになり、しかも御存知パイメイを使って映画を一本作っちゃいましたね。この映画はパイメイが売りなのかも知れないですけど白髪のパイメイが、こっちも頭が真っ白の無塵道士の弟子なんて設定はちょっと無理があるんじゃない?(笑)まぁドラマなんでいいですけど。
この映画に出てくる北少林寺の焼討ちとか南少林寺の建設の経緯とか混乱に継ぐ混乱の時代で、史実にしても結局のところ今一つはっきりしませんね。
なので、パイメイの年齢設定など細かいことは監督にでもお任せするとして、よく分かっていない、そういった動乱の時代を映画化したのは当時としてもやはり難しいところだったと思います。
それにしても本当にあるのかどうかもよく分からない福建少林寺の跡地はどこにあるのでしょうか?先の番組のように日本の取材陣が福建少林寺を探るドキュメンタリーなんて制作してくれると面白いかなと思うんですけどね。

映画そのものについては私の書いた解説、物語などを参照して戴くとして、映画「少林寺英雄伝」の展開はびっくりする程、駆け足で進行します。(時間も短め。ちょっと物足りないかも??)
少林寺の映画やドラマは本当に沢山ありますが、この「少林寺英雄伝」は洪家拳のルーツ、至善禅師に焦点を当てた珍しい映画になっていると思います。(江島扮するラマ僧なんてのも途中に登場したりしますがそんな奇抜な演出にはちょっと吹いてしまいますけど。)ちなみに有名な蔡李仏拳の”李”の部分の李家拳は、蛾嵋山の白眉道人より拳法を学んだ李巴山が創始したと伝えられています。李巴山は本編にもしっかり登場していますし、他にも”少林五老”や”少林十虎”などの人物たちを交えて、ニ・クアンによる脚本でうまく配置されています。
映画の作りはいかにも邵氏らしい作りであり、例えば崖のある山道のセットを作ってしまうあたりも邵氏らしかったですね。お寺はセットになりますが、今回は地下に隠し部屋を作ったりして、工夫が見られました。

役者については主演のデビッド・チャンは妙な落ちつき感さえ見えましたが、彼なりの落ち着いたアクションで対処して、設定はスーパーマンですが、立派な少林僧をこなしているなぁと感じました。(まぁベテランですもんね。)デビッド・チャンだって少林寺のお坊さんを演じられるんですなぁ。リュー・チャーフィと比べるといつもニコニコのお師匠様で可愛いらしさもありました。厳しい目を持って見れば一つ一つのアクションはゆっくりとしていて迫力に欠けるかも知れない。ティロンのように達人クラスの腕前なのか、それともジミーさんタイプなのか。
ラストはパイ・メイとの一騎打ちになり、一指禅功で突きまくる様子には何かを覚えました。どうしてそこまでするのか。なぜヒーロー(英雄)なのかと。

考えてみればヒーローは、中国では少林寺を逆賊だと言って官についた白眉道人ではなく、至善禅師や少林寺の僧がヒーローなのです。

しかし、少林寺とはもうオサラバ。デビッド・チャンはどうやらこの作品を最後に邵氏を後にしたようですね。本編を見る限りこれが最後だなんて微塵も感じませんでしたが、そこに役者の根性を感じます。この後、共演した徐少強(ツイ・シャオキン)と揃って"The Challenger"や"The Root"に出演します。この邵氏を去ったときの心境はどんなものだったのでしょうか?専属俳優がフリーになって生き生きと・・という風になったのかどうかはよく覚えていませんがまた新たな道を歩むことになります。ちなみに監督ホー・メンファも邵氏をそろそろ去ろうかという時期で「マッドカンフー地獄拳」やらなんやらと邵氏以外で映画を作っていくことにもなります。(この辺りを研究するのも面白いかも・・・。)

ところで、嵩山少林寺は今では観光客が大勢押し寄せる人気スポットになっているみたいですが、やはり一度は行ってみたい場所ですね。冒頭のドキュメンタリー番組を見てまた余計にそんな気持ちにさせられました。でも、日本にも素晴らしいお寺があります。明の混乱の時代、中国から日本へ渡来した隠元禅師が開いたお寺が京都宇治にある萬福寺です。少林寺とは直接関係無いものの、私はこのお寺へ参拝した時のことをふと思い出しました。人の気配も少なく静かなお寺でしたが、どこか雰囲気が違う…。そうなんです。ここは中国のお寺そっくりに作られている中国風の寺院なのです。中を歩いていると中国にあるお寺に行ったような錯覚に見舞われます。拳法の修行僧こそいませんが寺の随所に不思議な部分があったりするのです。もう何年も前の話ですが、とても良い所でしたね。もやもやとしたものが無くなり、頭の中がスッキリするような、これもこのお寺が持っている魅力なのかとその時感じました。また、十八羅漢がいるということでとても興奮したのを覚えています。日本にはこういったお寺は少ないと思いますが、宇治方面に行ったらまた訪問してみようと思います。そして、遥か彼方の少林寺は遠く離れていますが、中国にある寺院も同じ様な気持ちにさせてくれるきっと素晴らしいところだと思います。

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