今回で取りあえず終わりとさせていただきますが、拳シリーズの最終回は「カンニングモンキー天中拳」についてです。きっとまた記事を書くでしょうけど(苦笑)、その際は単発でレポートしますのでよろしくおねがいします。
さて、一気に参りましょう!今回はチャプター毎に分けてみました。それぞれテーマを決めていろいろ書いてみました。つまらなかっらゴメンちゃい。
第一講 ~タイトル考~
「天中拳」完成後の78年、香港ではしばらくお蔵入りして80年に公開されるまで、いつの間にかタイトルが『點只功夫[口甘]簡單』に変更になってしまったんですが、この『點只功夫~』ってヘンですよね。なんか取って付けたみたいなカンジで。ジョセフィーン・シャオの『林亞珍』をパロってるつもりでしょうけどいかにもローウェイらしいと思いました。
韓国では『烏龍大侠』と言われていた「天中拳」は製作当初のワーキングタイトルが『烏龍大侠』となっていたようですので韓国ではそのままそのタイトルが使われたことになります。(“まぬけなヒーロー”の意。)
劇中で主人公のジャッキーがヒーロー柳になりすまし、テッペンハゲの爺さんから「おまえはウーロン大侠だ」と言われてしまいます。これがタイトルにもなったそもそもの由来ですね。
「天中拳」が影響を受けたと思われるオリジナルの『烏龍大侠』(1951)は李海泉(ブルースリーのおとうさま!)主演の広東語喜劇でありました。
この格好がそう!(たぶん)
李海泉は喜劇俳優として香港で有名でしたから、やはりコメディー映画として手本となる映画であったことは考えられそうです。
一方、『一招半式闖江湖』は台湾で付けられたもので、これが一番知られているタイトルですね。(江湖を渡り歩く半人前男の物語…みたいな意味になると思います)確かに腕は半人前ですが、キャッチコピーにもあるように食欲三人前、色気一人前だそうです(笑)。
話はそれますが、邦題で「天中拳」って言うと実はもう一本「フラミンゴ殺法・天中拳」という映画もあるんですけどね(笑)。これも好きな一本です!
私が好きになった理由はコレ。その昔、秋田書店から出た「ドラゴン大全科」という書籍。カンフー映画好きは、ここからはじまった!
「フラミンゴ殺法 天中拳」
ユンピョウの「モンキーフィスト猿拳」が好きなのもこの本にしっかり掲載されていたから…というのも理由の一つ。
それと、コレを忘れてはならない。「Mr.ノーボディ」。
「Mr.ノーボディ」
いま私が思い出の一冊を選ぶとしたら、この本を真っ先に選びますね。(あー、もっと書きたい内容が…。)
ここらで天中拳に戻らせていただきます(笑)。
第二講 ~映画の分類~
「天中拳」を70年代の映画として分類するならば、これはヒョウ局&喜劇カンフーアクション型に分類されるでしょう。
ヒョウ局型とは?
これは、ヒョウ局(注)という機関が登場し、そのヒョウ局が警備保障して荷物を輸送するヒョウ客と盗賊との攻防などを描いたものを指します。
「天中拳」では重要アイテムを警備する隊長の一行と、その部隊を支援するためにあとから加わったのが主人公・コウで、そのコウが面白おかしなカンフーを見せて笑わせます。
オープニングではジャッキーが七変化。「木人拳」っぽいセルフパロディや座頭市、ダメダメ剣士などをユーモラスに見せています。(個人的にはここが一番面白いと思います)
そして「天中拳」ではカンフーの師匠がいる設定になっていますが、ここは弟子入りする場面に注目していただきたい。
ポパイみたいなヒーローを夢見るジャッキーがひょんなことからムチのヒーローに間違われてもすっかりその気になってしまうという具合に主人公はヒーロー願望を持っていて、弟子入りを頼み込むと老いた師匠からキツイ一言をもらい「弟子になりたいんだ」ともらす。この辺りの主人公の持つ人間らしい部分の表現は映画の本編でよく現れていると思います。
第三講 ~シナリオと追加撮影~
追加撮影についてはいろんな説があるようですが、 77年の秋頃にローウェイ監督らスタッフがもめていたようです。「天中拳」がどこまで撮影されたのかハッキリしませんが、ローウェイとの関係が悪化し、ジャッキーの「蛇拳」レンタル出演をついに許した監督。天中拳完成後の試写を見て激怒したというローウェイの話はもちろん「蛇拳」撮影後しばらくしてのことでしょうね(直後ではない)。これは映画としての未熟さをベテラン監督として見抜いていたのかも知れません。
「蛇拳」でジャッキーと共演するまで石天はいなかったと推測してますが、 シナリオの方も確実に変化していってますね。脚本家の湯明智が打ち出したオリジナルのストーリーは大筋は変わらないと思いますが、ヘッコキ風太郎は当初設定されていなかったと思うのです。
参考までに、なぜそのような話になるかといえば、ヘッコキ風太郎は日本で付けた役名であり、オリジナルの中国語・役名は無く、あれだけの大役なのになぜか設定されていなかったのです。これは後から追加されたからなんでしょう。
そうなると、ラストや天中拳を石天から教わるシーンなど、当初はすべて無かったことになるのです。(石天は「蛇拳」では厳しい師範代でしたがこれ以降、カンフー作品のコミカルなキャラクターを歴任します)
また、コウが大金を手にしていい気分になり、町で天中拳のポーズ(ツッパリ拳)を取りますが、ここが不思議なのですが、石天に天中拳を教わる前なんですよね。
赤い毛の男も中途半端なままだったようで殺されるシーンがあとから追加されたように見えます。この男は鉄腕ルーと一緒に出てくるので弟子または部下という設定かと思っていたら(国内のどの資料を見てもそうなってました)しっかり本当の名前も存在していました。
その場面をもう少し詳しく解説してみます。
コウ「太沖の二の舞になりたいか」
日本語字幕ではタイチュウ。つまりヒーロー柳と相討ちになった賞金首の男が、鉄腕ルーの弟子という解釈になっています。
ルー「お前が弟子を殺したのか」
これはおそらく誤りで、赤毛の男(林照雄。役名:ウェイ(衛天鷹))がこのシーンより前に田俊に倒されるシーンが挿入されていることからも分かる通り、ルーが仇を討とうとするウェイという人物とは赤毛の男(しかも弟子ではなくて弟)のことなんですね。
このあたりの展開(鉄腕ルーとその弟のポジション)がシナリオとして未完成、または分かりづらくなっていたので翻訳した人も登場人物の多さもあってか混乱していたと考えられます。
赤毛の男は本来、途中で倒されるのではなくて、もう少しストーリーに絡むような役で(主人公をしつこく付け狙っていた割にはあっさりと倒されます)、ラストにも登場する予定だったのかも知れませんね。
二十面相にしても付けヒゲをむしられるのであればその前に何か別の変装があると分かり易かったのではないかと思います。以上が、未完成か完成を急いだような印象をどうしても受けてしまう理由です。
第四講 ~劇場公開~
「天中拳」が劇場公開されたのは今から三十年ほど前になります。
雑誌広告。8月6日公開になっています
モンキーシリーズ第4弾として公開され、 夏休みの子供たちをターゲットにした作戦が成功したのでした。(こういう映画会社の戦略って勉強になりますなぁ)
劇場版タイトル
JACのメンバー総出演の「伊賀野カバ丸」とのカップリングでかなりの相乗効果があったと思います。(ジャッキーよりも黒崎輝の方がモンキーっぽいですね(笑。ジャッキーが食欲三倍ならカバ丸くんは10倍はありましたね!面白かったなぁ。)
当時は天中拳のシナリオ完全採録とかの書籍も出版され充実していました。
ちょっと忘れてましたけど、オープニングは別編集のショートバージョンでしたね(テレビも同様)。ここで主題歌「カンニングモンキー」が流れますが、編集はこの曲に合わせたかのようになっていましたね。(今思えば、せっかく面白い映像が入ったオープニングをカットすることになってちょっともったいない気もします)
第五講 ~噂~
最後は噂について。以前から天中拳には幻のシーンがあると噂されていましたが、動く映像というのはまだ発見されていなかったりします。
どんな噂かといいますと、あるシーンの後に竹やぶでジャッキーが登場し、天中拳を練習するというもので、 イメージとしてはこんなヤツです↓
83年5月の時点では邦題はまだ決定せず。
また、他にも賞金を手にしたあとの祝賀会などが幻のシーンであるとされています。
以上は単なる噂だけの話である可能性も高いのであまり期待しないほうが無難でしょう。(終)
【作品DVD】
日本語吹き替えです。是非とも石丸ジャッキーをご堪能ください!!
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永久保存版の劇場公開テレシネ・バージョン。一家に1枚どうぞ。
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